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MarkeZine Day 2024 Focus

「また行きたくなる」をつくるには?日本ケンタッキー・フライド・チキン流のアプリ活用

年間数百通りの仮説検証で勝ちパターンを掴む

 KFCが顧客データを取得するタイミングは「オンラインでオーダーした時」もしくは「店頭で購入した時」の二つ。ここでファーストパーティデータを蓄積し、顧客にとってもお得で快適なKFC体験をオファーしていく。

 その際ポイントとなるのは、店頭でのアプリ利用をいかに促すかという点だ。店頭のセルフレジにはアプリの会員証から顧客情報を読み込む機能が備わっているが「わざわざスマホを取り出してアプリを起動し、かざす行為をやっていただくには、お客様にメリットを示す必要があります」と平田氏は語る。

 セルフレジにアプリをかざせば、アプリに蓄積された自分のポイントやクーポンが利用できる。購入するとさらにクーポンが配信される上、マイルも貯まる。貯まったマイルに応じてさらにお得なクーポンがもらえたり、ポイントが付与されたりするほか、キャッシュバックキャンペーンを展開するなど「1回の購入が次の購入を生む」という仕組みを実現。こうして顧客の購入履歴をトラッキングし、有益なオファーにつなげているのだ。

「タイムリーに通知が来なかったり、自分の好みではないクーポンが来たり、興味のない情報ばかり送られてくる。そのようなコミュニケーションでは、お客様にとって不利益なばかりか、不愉快な思いをさせてしまうことになります。やはり欲しいと思う情報がきちんと来るようにすることが大切で、そのためにはお客様の情報と購入率、回数などのデータが必要なのです」(平田氏)

 収集したデータを基に仮説検証と実践を繰り返し、勝ちパターンを蓄積していく。このようにして戦略の精度を上げることで、エンゲージメントをより深め、次の購買を促せるという。配信タイミングや文言のちょっとした違いで反応率は驚くほど変わるため「年間数百パターンもの仮説検証を繰り返している」と平田氏は明かす。

「なぜ購入に至らないのか」をアンケートで聞く

 ここまでは「一度でも購入したことのある顧客」に対するアプローチだ。では「アプリをダウンロードしたものの、まだ一度も購入したことのない顧客」に対してはどのようにアプローチするのか。「1回を2回にするより、0回を1回にするほうがはるかに難しい」と平田氏。その1回のために、アプリを使う理由を明確にして最初の一歩を促すという。

 人がアプリを使う理由はそれぞれだ。数ある商品のなかから自分が納得できるものを選ぶために、店頭で決めるのではなくアプリでじっくり調べたい人もいれば、並ぶのを避けるためにネットオーダーをする人や、デリバリーを頼む人もいる。アプリで取得できるクーポンを使いたい人もいるだろう。このようなアプリのメリットをしっかりと訴求しながら、同時にアプリを使う動機付けにも力を入れている。

 その一つが、ゲーム会社とのコラボ企画だ。ネットオーダーでしか手に入らないグッズを提供したり、普段ケンタッキーを利用していないゲームファンにアプローチしたりと、アプリやケンタッキー体験を促す動機付けを行っている。

「きっかけはゲームグッズ欲しさでも構いません。KFCのフライドチキンは絶品ですから、一度体験すれば次の購入につながります」(平田氏)

 アプリをダウンロードし、会員登録までしたものの未購入のユーザーに対しても、アプローチを怠らない。はっきりと「なぜ購入しないのか」というアンケートを展開し、そこから得られたゼロパーティデータを踏まえてセグメントを分け、最初の1回につなげるべく様々なオファーを展開し、コミュニケーションを切らさない工夫をしているという。

 「今後はAIの活用を検討している」と平田氏。多様化する顧客ニーズや社会環境に合わせ、人手で最適なセグメントやレコメンドを実施するのは限界がある。そのため、AIを活用してデジタル接客のさらなる精度向上につなげる構えだ。

 そのために同社が進めてきたのがデータの整備だ。これまでKFCでは「カーネルクラブ」「オンラインオーダーID」「アプリID」と複数の会員IDが存在していたが、アプリを起点にIDを統合した。これにより、データの可視化・集約が進み、顧客理解とマーケティング施策の実行・検証プロセスが確立されることとなった。

「アプリの活用には地道さが求められます。心が折れることもあるでしょう。そうならないように『これで一体何を目指しているのか』『どんな価値を提供したいのか』ということを常に考え、アクションを積み重ねていくことが大切です」(平田氏)

 KFCアプリはこれからも「顧客」と「従業員」のために進化を続ける。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/03/03 07:30 https://markezine.jp/article/detail/47473

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