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「また行きたくなる」をつくるには?日本ケンタッキー・フライド・チキン流のアプリ活用

顧客の利便性と従業員の効率を向上する機能

 KFCは「購入を促すアプリ」をどのように開発していったのか。平田氏はまず、アプリに盛り込む要素を考えた際、改めて「顧客と従業員にとってKFCアプリはどのような役割であるべきか?」に立ち戻って考えたという。

「私たちはまず『お客様にとって利便性がきちんと担保されていること』を考えました。これは当然やらなければならないことであり、具体的には『知りたいキャンペーン情報を確認できる』「お得なクーポンを利用できる』『待たずに受け取れるオンラインオーダー』などの機能実現が挙げられます。一方、店舗従業員にとっても『効率的なオペレーションができる』という便利アイテムとしての役割が必要だと考えました。なぜなら店舗オペレーションが改善されなければ、結果的に待ち時間が増えるなど、お客様の利便性が損なわれてしまうからです」(平田氏)

 この「顧客の利便性」と「従業員の効率性」の両輪が回らなければ、良い店舗体験は生まれない。ファストフードは入店してから出るまでの所要時間がわずか数分だ。そのわずかな時間の中で「おいしさ」にプラスした体験価値をどう生むかが勝負となる。

 そのため、顧客のアプリの動きが店舗側と同期できる仕組みを整えた。注文が入るとその情報がキッチンに同期され、材料が足りなくなれば自動で発注をかけたり、あらゆる年代の従業員が情報を確認できるようにわかりやすく情報を提示したり。工夫することで、現場側に「アプリは便利だ」という認識が生まれる。その結果、従業員自身がアプリの応援団となり、顧客に「ぜひ使ってください」と勧めるようになるわけだ。

何よりも重要な購入履歴

 一方、顧客の利便性向上も忘れてはいない。KFCアプリでは、新商品のキャンペーン情報のほか、店舗の品切れメニューを通知するなどして利便性を向上。人気機能のクーポンでは、後述する様々な仕掛けを展開し、顧客のメリットにつなげている。

 そのほか、待たずに商品を受け取れるネットオーダーやPontaポイントなど各種ポイントとの連携、キャッシュレスでの購入を実現する「デジタルKFCカード」や、オリジナルの「チキンマイレージプログラム」といった機能がある。

 アプリの利用にあたっては、もちろん登録が必要だ。まず必要なのはメールアドレスで、この入力にともなって会員IDが付与される。注文内容によっては確認を要するものがあるため、電話番号も登録しなければならない。住所はデリバリー注文時に必須となる。任意の登録項目として「誕生日」「記念日」があるが、登録しておくとバースデークーポンやアニバーサリークーポンが配信されるそうだ。

 こうした個人情報ももちろん重要なデータだが「何より大事なのは購入履歴です」と平田氏は語る。

「いつ、何を、いくらで購入したのかという履歴がわからないと、私たちも適切なコミュニケーションが取りにくくなります。常連さんには『いつものメニューですね』『新しい商品が出ましたよ』とコミュニケーションを取れますが、オンラインでそのような接客を実現するには、お客様一人ひとりの購入履歴を踏まえて理解を深めなければなりません。同時に、心地良いコミュニケーションを促すような仕掛けも作る必要があります」(平田氏)

 その“仕掛け”が、様々なオファーだ。たとえばメールアドレスの入力時に「メルマガを許諾」「プッシュ通知をオン」を選択すると、購入履歴に基づいて適切なオファーメッセージが配信されたり、ニーズに合ったクーポンが届けられたりする。これにより「今日はケンタッキーにしようかな」というモチベーションを促すという。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/03/03 07:30 https://markezine.jp/article/detail/47473

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