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今知っておきたいマーケティング基礎知識

「チルい」の意味は?マーケティングトレンド「チル消費」について解説

 テレビやSNSなどで目にすることの多い「チルい」。2016年ごろから若者を中心に広まり始めたといわれ、今では幅広い年代に使われるようになった言葉です。チルいものやことにお金をかける「チル消費」もトレンドとなっており、今や「チルい」はビジネスでも重要なキーワードとなっています。そこで今回は、「チルい」の意味や語源、「エモい」との違い、さらにチル消費の具体例まで解説します。「チルい」とはどういう意味なのか理解し、現代の消費トレンドを学びましょう。

「チル」「チルい」とは?

 「チルい」は、株式会社三省堂による「今年の新語2021」で大賞を受賞したなど、若者が火付け役となりムーブメントを巻き起こした言葉です。X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSでハッシュタグに使われることも多く、今では世間に定着しているといってもよいでしょう。

 元々、「チルい」とは「チル」が形容詞化した言葉です。それでは、具体的な意味や語源、混同されやすい「エモい」との違いを見ていきましょう。

「チルい」の意味・類語

 「チルい」とは、気持ちがゆったりとしている様子やリラックスしている様子を表している言葉です。

 似通った意味をもつ類語としては、以下のような言葉があります。

  • リラックスできる
  • ゆったりした
  • 落ち着ける
  • まったりできる

 たとえば、ゆったりと落ち着けるカフェのことを「チルいカフェ」と表現したり、音楽を聴いていて気持ちが落ち着くと「この曲はチルい」と言ったりします。

「チルい」の語源は英語の「chill out(チルアウト)」

 「チルい」の元となった「チル」の語源は、英語の「chill out(チル アウト)」です。

 そもそも「chill」とは、名詞では「冷たさ」「肌寒さ」、動詞では「~を冷やす」という意味があります。「chill out」は不快感をともなう冷たさを外に出すという意味合いから、「落ち着ける」といった内容の俗語として使われるようになったとされています。

 また、「チルい」は「チル」を形容詞化した言葉であるという点でも注目されました。

 外来語が日本で使われるときは「外来語+な」という形容動詞化した言葉が一般的です。たとえば「ワイルドな」「ロマンチックな」といった使い方が挙げられます。一方、「チルい」のような「外来語+い」という形容詞化した言葉は珍しく、他には「ナウい」「グロい」など少数しかありません。

「チルい」と「エモい」の違い

 「チルい」と同じくらい頻繁に見聞きするのが「エモい」です。混同されやすい言葉ですが、意味が異なるため覚えておきましょう。

 「エモい」とは、英語の「emotional(エモーショナル)」を語源とする言葉で、気持ちの高ぶりや、感情が揺さぶられる感覚を表現しています。音楽を聴いて感動したときに「この曲、エモい」ということもあれば、しみじみとした気持ちになる景色を見たときに「エモい景色」と表現することもあります。そして「感動」「哀愁」「喜び」「切なさ」など幅広い感情の起伏に使われているのが特徴です。

 基本的に「チルい」は落ち着けることを指しているため、感情の高ぶりを表現している「エモい」とは意味が異なります。しかし、人によっては「チルい」も「エモい」も同じような意味合いで使っている場合もあるようです。

Z世代を中心に「チルい」が流行っている理由

 「チルい」は、主にZ世代の若者を中心に流行が広がっています。

 Z世代は「デジタルネイティブ」と呼ばれる世代で、生まれた時からデジタルが身近にあったため、インターネットやSNSを利用することに抵抗がありません。SNSが生活に浸透しているため、学校の友人や職場の仲間とインターネット上でコミュニケーションを取ることも多く、オンラインとオフラインの垣根が低い傾向にあります。

 そのため、常に誰かとつながっていることに疲弊し、人間関係から解放されて一人もしくは気の合う人とゆっくりと過ごせる空間を求めるようになったことが、「チルい」が流行った理由ではないかとされています。

 さらに、2020年から始まった新型コロナウイルスの流行により、外出自粛やリモートワークが推奨されて「おうち時間」が増えたことも、「チルい」という言葉の広がりに拍車をかけました。自宅で過ごす中で、くつろげる空間でリラックスする時間の重要性に改めて気づき、チルを求める傾向が強まったようです。

 ストレス社会といわれる現代の日本では、現代人がチルを必要とするのは当然なのかもしれません。

「チルい」の関連語

 ゆったりとすることを指す「チル」の意味合いを活かし、「チルい」以外にも様々な言葉が浸透しています。「チルい」に関連する言葉として、以下の言葉も覚えておくとよいでしょう。

チル友

 「チル友」とは「チルい友だち」の略称で、一緒にいると落ち着ける友だちのことです。単に「ノリが合う」「趣味が同じ」だけでなく、気を遣わずにゆったりと過ごせる友だちを指しています。チル友は意識的に作ることが難しいからこそ、貴重な存在といえるでしょう。

 ただし、日本のバンドであるMr. Childrenファンの友だちを指す場合もあります。Mr. Childrenは「ミスチル」と略されることから、ミスチル好きの仲間を「チル友」と呼んでいるため、SNSのハッシュタグで「#チル友」とある時は、どちらの意味なのか見極める必要があるでしょう。

チルミュージック

 「チルミュージック」は「チル アウト ミュージック」の略称で、スローテンポの音楽です。聴いているとゆったりとした気分になれる曲や、まったりとしたい時に聴きたい曲などがチルミュージックとなります。カフェで流れているような曲や、作業用BGMとして活用されている曲というとイメージしやすいかもしれません。

チルスポット

 「チルスポット」とは、のんびりと過ごせる場所を指します。人によってチルスポットと感じられる場所は異なりますが、以下のようなところはチルスポットといわれることが多いでしょう。

  • 公園
  • カフェ
  • 海辺、山
  • 美術館
  • ネットカフェ

 静かな空間や自然を感じられる場所などがチルスポットとして挙げられることが多いようです。チルスポットに行くと落ち着いた気分になって日ごろの疲れが癒やされるため、お気に入りのチルスポットを見つけておくことは現代人にとって必要といえるでしょう。

マーケティングトレンドの「チル消費」

 消費行動には「モノ消費」や「コト消費」などがありますが、トレンドになっているのが「チル消費」です。

 リラックスできるものを購入したり、落ち着ける場所に出かけたりするなど、癒やされる時間にお金を使う行動を指します。

チル消費の需要

 チル消費は、どのくらい世間に浸透しているのでしょうか。

 フェムケア事業を展開する株式会社オノフが20~60代の女性を対象にして2023年に行った調査では、リラックスや癒やしの時間・空間を求めて消費行動をしたいという人は全体の60.2%にもおよび、チル消費志向が高い傾向がうかがえます。具体的には、「リラックスできること」だけでなく、「旅行/観光」「外食」「動画視聴/音楽鑑賞」など幅広い分野にわたって、リラックスや癒やしの時間・空間を求めていることがわかりました。

 「チルい」という言葉自体は若者を中心に使われていますが、チル消費は若者だけでなく全年代で求められているようです。

チル消費の例

 チル消費に該当するのは、一例として以下のモノ・コトがあります。

  • チル旅
  • チル部屋
  • キャンプ、グランピング
  • サウナ
  • ステイケーション
  • 焚き火

 それぞれ見ていきましょう。

チル旅

 チル旅とは、のんびりして癒やされることを目的とした旅行です。

 旅行といえば、観光地巡りやグルメ、アクティビティなどのイメージが強いですが、スケジュールが詰まり過ぎて疲れてしまうこともしばしばあります。

 一方のチル旅は、自然に触れたりリラクゼーションを受けたりしながら、スケジュールに縛られずに気ままに過ごします。のんびりすることを目的としているため、日ごろの疲れを癒やしてリフレッシュできるでしょう。

チル部屋

 チル部屋は、落ち着けるインテリアや照明などでそろえた部屋です。コロナ禍でおうち時間が増えたことで、自分の部屋をチル部屋にしたいと思う人が増えたといわれています。

 アロマや観葉植物などリラックスできるグッズ、寝心地のよい寝具、暖色系の照明など、チル部屋を作るための商品を出しているメーカーも増えています。

キャンプ、グランピング

 キャンプやグランピングといったアウトドアも、自然の中でのんびりとした時間を過ごせるためチル消費の一つです。海辺や山などの大自然の中で、ハンモックで寝たり星空を見たりして癒やしを得られます。

 キャンプには「自分でテントを張るのが大変そう」「寒さや暑さがつらい」というイメージがある人も少なくないため、快適な空間でアウトドアができるグランピングの需要も高まっています。

サウナ

 サウナもチル消費の一つとして挙げられます。近年、空前のサウナブームとなっていますが、自分の体と向き合えることや、汗をかいてリフレッシュできることから、サウナをチルい時間と感じる人も多いようです。

 元々「chill out」は、「冷たさを外に出す」と直訳できるため、体を温められるサウナは本来の意味としても適切かもしれませんね。

ステイケーション

 ステイケーションとは「stay」と「vacation」をかけ合わせた造語で、近場のホテルやコテージなどで落ち着いた滞在を楽しむことです。観光地やグルメ巡りなどをせず、近場で探した宿泊先でのんびりと過ごすため、移動の負担が少なく済みます。

焚き火

 焚き火もチル消費として人気が高まっています。炎のゆらぎを見つめながら、家族や仲間たちと話したり考え事をしたりする時間は、唯一無二の時間です。キャンプやグランピングの一環として焚き火を楽しむ人も少なくありません。

まとめ

 落ち着けることやリラックスできることを表す「チルい」。若者を中心に使われている言葉ですが、日々忙しくストレスにさらされている現代人にとっては、年代を問わずチルい時間・空間が求められています。

 現代のマーケティングトレンドである「チル消費」は、今後ますます需要が高まっていくと予想できます。自宅だけでなく、旅行や外食などでもチルを求めているため、チル消費の動向を見ていく必要があるでしょう。

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この記事の著者

マーケ研究所(マーケケンキュウジョ)

 マーケティングに関する情報を調べ、まとめて届けています。

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2024/12/25 00:00 https://markezine.jp/article/detail/47543

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