3社が実践する、真の顧客インサイトを見極める調査のコツ
田中:インターブランドでは、顧客を理解する上でインタビューも工夫しています。「なぜ?」と尋ねると、頭で考えた後付けの理由をつい考えてしまうため、もっと直観的に答えていただくことで、奥にあるインサイトを見極めていきます。
南雲:丸亀製麺でも、食事の直後や体験中の方の声を探りに行っていますね。今は「○時間以内の来店者」といった条件で絞ってのインタビュー実施も可能ですから、このようなアプローチの工夫は色々な企業でも広く使えるのではないでしょうか。
また、観察することもアプローチの一つだと思います。行動や目線、体の向きなどからわかる情報もありますよね。
川治:私たちもコロナ禍で対面調査ができなくなった際、オンラインで実際に調査対象の方の洗面所を見せていただきました。顧客が普段どのように洗面空間で過ごしているのかを考察でき、気づきが得られましたね。
加えて、人は一回言ってしまったことに対して矛盾が起きないように動こうとするため、調査のやり方次第では本心でないことを述べてしまう方もいます。それを真に受けないよう、メーカーとしても常に細心の注意を払わなくてはいけません。
田中:ブランドが顧客の言語化できない思いをサポートすることも大切な観点ですよね。「愛用しているブランドにラブレターを書いてください」と投げ掛けることで、何がその人に響いているのか読み取れることもありますし、写真を選びながら思いを共有いただくなど色々な形でアプローチを工夫しています。

マーケティングの世界でも「脱皮できない蛇は滅びる」
有園:セッションの最後に、皆さんから一言ずついただけますか。
南雲:ブランドによって状況が異なることは前提として、私はやはり本能に近い衝動を動かすことが、一番顧客の行動変容につながると思っています。今日皆さんからうかがった内容も参考にしつつ、マーケティングに取り組んでいきたいですね。
川治:マーケティングや商品企画の醍醐味は、需要の創造だと考えています。需要創造のためには既存の価値観をいかに変えるかがカギです。既存の定義を変える新たな切り口をいかに見つけられるかが、ブランドにとって重要になると思います。
田中:本日のセッションで、各社それぞれのお取り組みの裏側を聞けて発見もありました。自社の視点に閉じず、知見を広げていく重要性を実感しました。
有園:セッションの締めくくりとして、「脱皮できない蛇は滅びる」という哲学者ニーチェの言葉を紹介できればと思います。
本日お話に出たパーセプションを創造・変容する、人の本能やHuman Truthsを理解するなどマーケティングにおいて大切なことがある中で、手法は日々変化していきます。時代や状況に合わせて、私たちも「常に脱皮=変化や適応をしていかないといけない」こともまた、不変の事実なのではないでしょうか。新しいものをただ追うのではなく、原理や根本を理解しながら脱皮していくことが、これからもブランドにとって大切になるでしょう。
写真提供:ad:tech tokyo事務局
