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イベントレポート

変化し続けるマーケティング、「不変」なものは何か──マイクロソフト有園氏がパナソニックなど3社に問う

 2024年10月16日から18日にかけて開催された「ad:tech tokyo 2024」では、Microsoft Advertisingの有園雄一氏、パナソニックの川治久邦氏、トリドールホールディングス/丸亀製麺の南雲克明氏、インターブランドジャパンの田中友恵氏が登壇。「不確実性と複雑性の時代、それでも左右されない『不変』とは?」と題したセッションで、各社がマーケティングにおいて“変わらず大事にしていること”と“常に変わっていくもの”をテーマにディスカッションを行った。本記事では、講演の様子をレポートする。

不確実な時代における、マーケティングの“不変”を考える

有園:本日は、不確実性と複雑性の時代において不変のものは何か、を議題にセッションを進めていきたいと思います。

 世界ではIoT化が進み、様々な技術が今後もさらに進化していくでしょう。かつてのマスメディア時代やインターネット拡大期を経て、モバイル・クラウドの時代から生成AIやIoTの時代に移りました。

 このような技術の変化にともなってプラットフォームのすそ野も広がり、リテールメディアなど広告主がメディアになるような変化が広告ビジネスにも起きています。その中で広告は、ノイズにならないように生活者の行動を把握しながら展開することがカギになるでしょう。

Microsoft Advertising Regional Vice President Japan 有園雄一氏マイクロソフト広告事業の日本での責任者を務める。オーバーチュア株式会社(現ヤフー株式会社)、グーグル株式会社(SalesStrategy and Planning/戦略企画担当)、アタラ合同会社COOなどを経て2022年8月から現職。
Microsoft Advertising Regional Vice President Japan 有園雄一氏
マイクロソフト広告事業の日本での責任者を務める。オーバーチュア株式会社(現ヤフー株式会社)、グーグル株式会社(SalesStrategy and Planning/戦略企画担当)、アタラ合同会社COOなどを経て2022年8月から現職。

有園:このセッションでは、このように移り変わる時代の中のマーケティングにおいて、「不変」なことを見つめ直していきます。まず、パナソニック 川治さんからお考えをうかがえますか。

川治:当社が2023年9月に発売した5枚刃のメンズシェーバー「ラムダッシュ パームイン」の事例をお話ししたいと思います。同商品は発売から10ヵ月ほどで20万台と、当初想定した約10倍も売れました。そこで、ヒット商品には不変的な法則があるのではないかという考えに至りました。

 同商品のターゲットとしては、シェーバーにこだわりを持たない若年世代や「高いシェーバーを使っているがサイズ感が大きい」と感じていたエグゼクティブ層に向け、「かっこよくてイノベーティブ、かつ高機能で使いやすい新しい形のシェーバー」をコンセプトとして提案しました。

「ラムダッシュ パームイン」(出典:https://panasonic.jp/shaver/lamdash-palm/feature.html#features01)
「ラムダッシュ パームイン」
(出典:https://panasonic.jp/shaver/lamdash-palm/feature.html#features01

シュリンクする市場で、いかにパーセプションチェンジを起こしたか

川治:背景として、人口が減っていく中で日本のメンズシェーバー市場全体がシュリンクしています。また、40代を超えると顧客はほとんどブランドスイッチをしない傾向があります。このような状況の中、私たちを含む各メーカーは「深ぞり」と「肌に優しい」という共通のベネフィットを訴求し続けており、新たな需要の創造をできていなかったのです。

 開発のきっかけは、デザイン部門からの「シェーバーの持ち手は要らないのではないか」という提案です。結果としてリニアモーターをコンパクトにしてヘッドの中に入れるアイデアにつながり、私たちはこのベネフィットとターゲットを改めて深掘りし、いかにパーセプションチェンジを行うかを検討していきました。

パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 ビューティ・パーソナルケア事業部 パーソナルビジネスユニット パーソナルブランドマネジメント部 川治久邦氏パナソニック株式会社のビューティ・パーソナルケア事業部にて、パーソナルケア家電のブランドマネジメント責任者として、商品企画から国内海外のマーケティング企画まで関わっている。

パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 ビューティ・パーソナルケア事業部 パーソナルビジネスユニット
パーソナルブランドマネジメント部 川治久邦氏

パナソニック株式会社のビューティ・パーソナルケア事業部にて、パーソナルケア家電のブランドマネジメント責任者として、商品企画から国内海外のマーケティング企画まで関わっている。

川治:同商品のベネフィットを一言で表すと「かっこよさ」です。単純に聞こえますが、「かっこいい商品を使っている自分もかっこいい」「かっこいいライフスタイルを実現できる」と顧客に実感いただくことを重視して展開しました。

 機能性の追求だけではなく、商品を持っていること自体が価値になるよう訴求を行い、買い替えではなく「買い増し」の選択肢を提案。「手持ちのシェーバーが壊れていなくても、新たなものを買ってもいい」というパーセプションの創造に成功しました。

 顧客インサイトに基づき、第一印象で強い知覚刺激を与え、消費者のパーセプションチェンジを起こせるかでヒットの成否が決まる点は、マーケティングにおいて不変性があると考えています。

南雲:インサイトを探索するため、パナソニックさんではどのような調査方法を採っていますか?

川治:ストレートに「どんな商品が欲しいですか」と尋ねても、大抵の場合、顧客から答えは出ません。こちらで作ったアイデアのネタを、感度が高く言語化できる層にまず当てて反応を探り、そこから需要予測を行っていますね。「かっこいい」という感覚も人によって違いますから、「このシェーバーをかっこいいと思う人は誰か」から仮説を立てて、デプスインタビューを何度も実施し検証しました。

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丸亀製麺が重視する“驚き”の提供とは?

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この記事の著者

吉永 翠(編集部)(ヨシナガ ミドリ)

大学院卒業後、新卒で翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。学生時代はスポーツマーケティングの研究をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/01/14 09:00 https://markezine.jp/article/detail/47574

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