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事例を通して見る世界のマーケティング/ブランディングのトレンド

ブランドが嘘つきと思われないために。事例に見る「代替的事実」時代のブランディング

「歴史と実績」を活用する事例 ドラマミン - The Last Burf Bag

画像を説明するテキストなくても可
ドラマミンが公開した映画「The Last Burf Bag」より/公式サイト

 最後にドラマミン(酔い止め薬)が米国で行ったキャンペーンを紹介させてください。

 長年「乗り物酔い」をなくすことを目指してきたドラマミンは、75周年を迎えた2024年、自分たちの社会への貢献を伝えるために「The Last Burf Bag(最後のエチケット袋)」という14分間の映画を公開しました。

 実際、米国市場でのドラマミンの売上が増えるにつれてエチケット袋の生産数は減っており、2024年現在では大幅に減少しています。ドラマミンはこれこそが自社の貢献を示せる強い事実だと考えたのです。

 同時に「エチケット袋」にはコレクターのコミュニティーが存在しており、その文化を保護したい、というプロジェクトでもありました。映画では、医師、飛行機の客室乗務員、ジャーナリスト、エチケット袋のコレクター、ドラマミンの社員が、1949年からの歴史も含め「乗り物酔い」について様々な視点から語ります。エチケット袋のコレクターたちからは「ドラマミンが憎い」「おかげでエチケット袋が手に入らなくなった!」という恨み節も

 映画が公開された当日には、ニューヨークのギャラリーで、エチケット袋のコレクションを公開。オンラインストアでも、「ポップコーン袋に使っては?」などの新しい使い方を示しながら、エチケット袋を販売しました。そして映画の最後では、ドラマミンがエチケット袋のコレクターから文化財保護の観点で過去のコレクションを引き取ったことがわかります。ドラマミンが保護することで「今後もより多くの人にエチケットを鑑賞してもらえるようにね」と。

 長年競合する関係にあった、酔い止め薬とエチケット袋。アプローチは異なりますが、同じ「乗り物酔い」に取り組んできた両者が、75年の期間を経て最後に交わるストーリーは、多くの話題を呼びました。長期にわたる歴史に裏付けられた強いファクトは、信頼を得るために何よりも有効ですね。

まとめ:信頼獲得の推進は重要に。ただし手段は一つではない

 今回の記事では、ブランドが生活者からの懐疑的な目に晒される中、関係構築を深めているブランドの事例を紹介しました。

 生活者の多くが科学的論理に賛同していることは、ブランドにとって信頼を得るための良い糸口かもしれません(ブレンテックの事例)。また客観性という意味では、第三者からの評価も信頼構築の方策と思われます。それは中立性の高い団体からの評価であったり(Beluの事例)、デジタル上で簡単にわかるスコアリングであったり(Yuka事例)、専門家の見識あるいは意見(ハインツの事例)など、複数のアプローチが考えられます。そして歴史や実績に裏付けられた事実(ドラマミンの事例)も、自社の主張の確かさを生活者に感じてもらう手法に役立てられます。

 「信頼」が社会を形成する重要な要素である以上、生活者に主張を信用してもらえるかは、ブランドにとって避けて通れない課題かと考えています。「代替的事実」の時代に、各ブランドがどのようにコミュニケーションを行っていくかは大変興味深く、今後も注目していきたく思います。今回の記事が読者の皆様の参考になりましたら幸いです。

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この記事の著者

北市 卓史(キタイチ マサシ)

HAVAS JAPAN 株式会社   Executive Director

営業職をベースに、国内と海外にて広告代理店の会社/新規事業立ち上げに従事。2022年より世界149カ国にオフィスを展開する広告代理店であるHAVAS社の日本法人の現職に就任。多様性のある職場や働き方、他国オフィスとのオペレーシ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/12/20 08:00 https://markezine.jp/article/detail/47830

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