消費者の発信がそのまま広告に つい調べたくなる広告
2024年の下半期は、SNS上での投稿内容をそのまま盛り込んだ広告が複数見られました。まず紹介するのは、栗山米菓による「瀬戸しお」の広告です。
同広告には、Xでの投稿画面をそのままデザインとして採用。「瀬戸しおは、マジで悪魔の食い物」「起きたらまず瀬戸しお吸います」と、実際の投稿ならではの強烈なメッセージが並んでいました。

Xに投稿されたつぶやきを活用しているため、実際に投稿を探してみるといった楽しみ方ができる点も話題化の要因でしょう。
作り手が直接売り込むのではなく、消費者の感想をそのまま広告として活用することで、より親近感のあるコミュニケーションを実現していました。
QUALITY 1stが2024年10月にバス停に掲出した「ダーマレーザー スーパーVC100マスク」の広告もXの投稿をそのまま用いた事例として話題になっていました。
同広告では、バス停広告の縦長の枠をスマートフォンの画面に見立てて掲出。見た人が親近感を抱きやすい演出にしていた点が非常に印象的でした。

この二つの事例では、商品の訴求を直接的に行うのではなく、消費者の発信をそのまま広告表現として活用していたのが特徴的でした。SNS時代ならではの、デジタルとリアルを横断したコミュニケーション手法として、今後も同様の手法が採用されるシーンが増えることが推測されます。
見る方向でデザインが変わる広告
広告を見る方向によってビジュアルが変化する「ベローズプリント」という特殊印刷を活用した事例も2024年下半期は目立っていました。
その事例の一つとして、日本ケロッグが2024年10月に新宿駅で展開した「プリングルズ」の広告が挙げられます。同広告では「容器がコンパクトになっても中身の量が変わらない」ことを訴求。ベローズプリントを活用し、片方から見ると容器のビジュアルに見える広告が、別確度から見るとX線を使った写真で容器の中身が見える仕掛けになっており、「内容量が変わらないこと」を視覚的に表現していました。

他にも2024年11月に新宿駅で展開された「銀魂オンシアター2D 金魂篇」の広告でもベローズプリントが活用されていました。同広告では、作品名の“銀”魂にちなんで「万事屋“金”ちゃん」の部分にツッコミを入れるビジュアルに。作品が持つ雰囲気や温度感をうまく表現している広告となっていました。

二つの事例に限らず、近年、ベローズプリントを活用した広告の事例が増えているように感じます。ベローズプリントでは立体的かつ動的な表現が行えるようになる点は大きなメリットですが、一方でビジュアルの変化を見落としてしまうなど、視認性における課題が存在することも認識する必要があるでしょう。
広告への接触時間はせいぜい数秒程度しかない中で、効果的にベローズプリントを活用するためには、「コンテンツ自体の変化の必然性」と「意識を向けさせる仕掛け」の両輪での展開が必要だと考えています。
