博報堂生活綜研・上海は2025年1月16日、中国伝媒大学広告学院との共同研究「生活者"動"察2024」の成果を発表した。同研究では、中国における消費ダウングレード傾向の中で、新たな消費行動「自築消費」が生まれていることを指摘した。
2024年のキーワードは「消費ダウングレード」
2024年の中国では「消費降級(消費ダウングレード)」が社会キーワードとなり、先行きが不透明な経済環境の中で、企業間の値引き競争も激化、生活者はあらゆるカテゴリーでコスパ重視の消費行動を取っている。
しかし同研究所の調査では、生活者400名のQRコード決済データの分析から、支出増減は人数がほぼ同数。さらに保険、飲食旅行、文化・レジャー、電子機器、住宅、医療カテゴリーでは支出が増加していることが判明した。
消費者の意識調査では、消費ダウングレードのムードをメディアやKOLが煽りすぎていると感じる生活者は過半数(52.1%)に達し、低価格商品を選び続けることで生活の質が落ち、自信も失うのではないかといった不安を感じる人も42.8%だった。
「自築消費」と4つの新たな消費欲求の特徴
このような状況下で、中国消費者の新たな消費行動が見られており、4つの消費欲求の特徴が浮かび上がった。
1つ目は「自分の実力や自分らしさを再確認するための消費」。時には自分の経済力に見合った高価な商品を購入したり、自分のセンスを確認できる支出を行ったりする傾向が見られる。
2つ目は「複合的な理由付けによる消費」。先行き不透明感から大きな支出を躊躇しつつも、合理的な理由を用意して自分の欲しいものを購入する行動が確認された。
3つ目は「他者支援を通じた自己実現のための消費」。コロナ禍を経て人とのつながりを重視し、ギフトや他者支援のための消費を通じて自己肯定感を高める動きも見られる。
4つ目は「自分にがっかりしない状態をキープするための消費」。買い物失敗を避けるため、信頼できるKOLや定評のある店舗での購入に限定したり、AIや性格診断の結果をもとに商品を選択したりする傾向がある。
同研究所はこれらを総称して「自築(中国語:自筑 Zizhu)消費」と名付け、消費を通じた自分らしさの確認と再構築、自己肯定感の向上を目指す新しい消費行動として注目している。これらの新たな消費動向は、今後のマーケティング戦略を考える上で重要な視点になると指摘している。
「生活者”動“察」は博報堂生活綜研・上海と中国伝媒大学広告学院との共同研究。毎年1回の研究発表会では、中国の生活者の行動と欲求の変化を分析し、独自のキーワードを提言している。今回の「自築消費」は、12回目の研究成果となる。
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