無形資産で会社という“人体”が理解できる
秋田:横河電機のPBR(※)は、今日の時点でも約2.2倍と非常に高水準ですよね。多くの日本企業がPBR1倍を割る中、これだけの結果を出せている背景には、無形資産であるところのブランドが寄与しているのでしょうか?
※Price Book Valueの略。株価純資産倍率のこと。株価が1株あたり純資産の何倍まで買われているかを測る尺度
阿部:そうですね。当社では2016年から2023年の間に、インターブランドのブランド価値評価手法(ISO10668に準拠)を用いて自社のブランドの金銭的価値を三回可視化しました。その結果、8年間で約2.3倍も価値が向上していたのです。昔は可視化ができなかったため、社長から「ブランディングはリターンがない」「それだけ投資して何に貢献しているんだ」と言われることも多くありました。
無形資産は、法人という“人体”を理解するためのものです。会社の財務を気にする経営者は多いですが、無形資産にまで目を向けている人はなかなかいません。本来は事業戦略の上位概念に置くべきブランドの重要性を、日本の経営者も早く意識すれば良いと思っています。
ガリ勉イメージの転換にマーケターのスキルが活きる
秋田:ブランディングの考え方は、学校にも応用できるのでしょうか?
生井:下妻一高でも、紫色のスクールカラーに合わせたTシャツをつくりました。これもブランドだと思っています。購入・着用は任意ですが、このTシャツを着て校内を行きかう生徒や教員を見ていると、学校に対する愛情の深まりを感じます。
また先日、文化祭でSDGs視点のファッションショーを開催しました。僕の知人に借りたパリコレの衣装を生徒に着せたところ非常に盛り上がって、今までにない笑顔が見れたんです。新聞にも取り上げられて「下妻一高は真面目でガリ勉のイメージが強かったけど、こんなこともやるんだ」という声も聞こえました。
学校って、個人事業主の集まりのような職場なんですよね。教員は教科単位で動いていますし。ただ、皆をまとめると意外に大きな力を発揮します。例えるなら、ショッピングモールの催事を企画するのが僕で、モールに出店しているお店が教員です。Tシャツやファッションショーはあくまで一例ですが、茨城県で二番目に古い学校のリブランディングを図るにあたり、マーケターとして培ってきたスキルが活きていると感じます。