従業員が腹落ちしないものを外に出すべきではない
阿部:これからリブランディングに取り組もうと考えている方におすすめしたいのが、インナーブランディングです。従業員が腹落ちしないものは、外に出してはならないと思います。当社でもここに相当な力を入れており、現在のエンプロイーエンゲージメントは85%と高い数値を示しています。
秋田:エンプロイーファースト、非常に重要だと感じます。当社でも企業理念の再定義を一年かけて行った際、まず経営陣が作成した企業理念の素案を社員に共有しました。すると3,200件ものコメントが寄せられたんです。それを基に素案を練り直してまた共有して。企業理念のうち、パーパスを実現するための価値観・行動軸であるバリューは、社員の案「変化の穂先であれ。」を採用しました。
当社にはグローバルで6万人以上の社員がいますし、国内においては銀行・証券・信託・リサーチ&テクノロジーなど、専門とする領域も多岐に亘ります。一人ひとりの社員がお客様や社会に提供するものの積み重ねでブランドができているからには、組織における北極星としてのパーパスが重要です。パーパスを皆で一緒に作り、自分ごととして捉えることができて初めて、ブランドに資する行動へとつながるのではないでしょうか。
マーケターにアントレプレナーシップを!
秋田:お二人のお話をうかがいながら、新しいフィールドに飛び込んで変化を起こす姿は“胸熱”だなと感じました。最後にお二人から一言ずつ、マーケターの皆さんにメッセージをいただければと思います。
阿部:米国の政治家ディーン・アルファンジェ氏が提唱した「起業家宣言」をご存知ですか? 「I do not choose to be a common man(私は平凡な人物になりたくない)」という一節から始まるステートメントです。その一節に続いて、アントレプレナー精神がいかなるものかを示しています。この内容が秀逸なんです。アントレプレナーは、必ずしも起業することを意味しているわけではありません。今日のセッションに少しでも共感してくださった方は、ぜひその宣言を調べてみてください。
生井:「勇気を振り絞ってチャレンジすれば、未来は拓ける」というメッセージを伝えたいです。日本には慎重な人が多く、越境の一歩をなかなか踏み出しにくいかもしれませんが、周囲を見ると行動に移している人が成功している実感はあります。
今ある組織の資産を活用して、新しいものを上手に創造する人のことを、最近は「イントレプレナーシップ」と呼ぶそうですね。実際に起業をするだけでなく、起業家のマインドを持って業務にあたれば、必ず道は拓けると思います。
写真提供:ad:tech tokyo事務局