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日本のBtoBマーケティングに足りない機能とは 「売上」と同時に考えたい「価値」の話

営業チームのため“だけ”のマーケティングになっていないか?

 私は、日本企業が営業部門の中に元々備えているセールスマーケティングの機能を活かしながら、その他のマーケティング機能を追加していくことが重要であると考えます。日本型モデルにおけるセールスマーケティングは“営業チームのための”マーケティングになってしまいがちで、顧客のためのマーケティングという視点が欠如しやすいです。

 ピーター・ドラッカー博士は「買う状態にある顧客を生み出すこと」を、コトラーは「組織の目標を調和する形で、人々のニーズを明確にし、それを満たすこと」がマーケティングであると定義しています。ドラッカーもコトラーも「マーケティングは売上を向上するための活動だ」とは言っていません。つまり、売上とは価値創造の結果を示す指標であり、マーケティングとはプロダクトやブランドの価値を創造するための活動であると言えます。日本企業に不足しているのは、まさにこのような価値創造に関するマーケティング活動ではないでしょうか。

 日本のBtoBマーケティングに足りない活動を具体的にイメージするため、二つの事例を紹介します。第一の事例は、フランスの広告会社 JCDecauxが展開した広告施策「Meet Marina Prieto」です。屋外広告の売上が低迷した際、同社は齢100の老婆 マリーナ・プリエトさんを地下鉄の広告に起用しました。

プロダクトブランディングや採用マーケティングの好例

 具体的には、プリエトさんがInstagramにアップしている自身の投稿を屋外広告の空き枠に掲載したのです。その結果、多くの人の間で「マリーナ・プリエトは誰?」と話題になり、28人しかいなかったプリエトさんのフォロワーは急増しました。

JCDecauxが展開した広告施策「Meet Marina Prieto」の紹介動画

 無名の老婆が露出した媒体は、当然JCDecauxが仕掛けた屋外広告のみです。そのため、同社の屋外広告の価値や効果が自ずと示され、売上は2倍になり、185ものブランドと新規契約を取り付けました。プロダクトブランディングの好例と言えるでしょう。

 第二の事例は、静岡の町工場 コプレックが展開した「『工場を、誇ろう』プロジェクト」です。このプロジェクトで同社は、大胆なリブランディングによって工場の労働環境を改善しました。その結果、わずか2年で求職者数が3.5倍に伸長したのです。採用マーケティングも、日本のBtoBマーケティングに足りない活動ですから、ぜひ参考にしていただければと思います。

 本日私が発信した「日本のBtoBマーケティングは欧米に対して遅れているわけではなく、異なるという前提の上で考えることが必要だ」というメッセージは、欧米との差を前提に事業を行う一部の方々にとって、あまり認めたくない事実かもしれません。しかし、経営学の領域で明らかにされている成果や、私自身の外資企業も含めた営業およびSalesとマーケティングの経験から、改めて強調させていただきます。正しくは「遅れている」ではなく「足りない部分を認識し、補完する」ことなのだと。そのようにマインドセットを変えることは、現在の日本のBtoBマーケティングにおいて必要だと私は考えます。本講演が狭義のセールスマーケティングから脱却し、プロダクトの価値向上や認知拡大に目を向けるきっかけとなれば幸いです。

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この記事の著者

塚本 建未(ツカモト タケミ)

ライター・編集者・イラストレーター。早稲田大学第二文学部を卒業後、社会人を経て再び早稲田大学スポーツ科学部へ進学。2度目の学部卒業後は2つの学部と高校デザイン科で学んだ分野を活かすためフィットネス指導者向け専門誌「月刊Fitness Journal」編集部に所属してキャリアを積み、2011年9月から同雑誌の後継誌「月刊JAPAN FITNESS」編集部の中心的な人物として特集・連載など数多くの誌面を担当した。現在はWebメディアに主な...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/04/16 08:00 https://markezine.jp/article/detail/48559

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