会話のきっかけを作って友人の反応を待つ
登録者が仲の良い友人とゲーム・動画・音楽などのコンテンツを一緒に楽しむことができるたまり場アプリ「パラレル」をご存知だろうか。2019年8月のリリース以降、Z・α世代を中心に支持を集めている。

同アプリには音声通話機能が搭載されているため、登録者は友人と音声通話をしながらアプリ内外のコンテンツを楽しむことができる。アプリの登録者数は600万人、MAUは100万人を超え(2025年3月時点)、登録者の半数以上を23歳以下の若年世代が占めている。
同アプリのマーケティング責任者を経て、現在は広告事業の責任者を務める道下氏は、登録者の行動から若年層のインサイトを「計画的セレンディピティ」という言葉で表現する。

セレンディピティは偶然を意味する言葉だ。「計画的な偶然」とは一見矛盾しているようだが、道下氏は具体例を挙げて言葉の定義を説明する。
「たとえば、アニメのスクリーンショットを添えて『今日の最新話、神回すぎ』とSNSに投稿し、友人から『私も見た』というコメントがもらえるのを待つ。あるいは、写真とともに『スタバの新作おいしい』と投稿し、友人から『じゃあ今度一緒に飲みに行こうよ』と反応がくるのを待つ。このように、SNS上で会話のきっかけをさりげなく作ろうとする行動のことを、我々は計画的セレンディピティと定義しています」(道下氏)
直接的なコミュニケーションに高いハードル
なぜ若年層は、このように回りくどい行動をとるのか。道下氏はその根拠を3点挙げる。
第一に「友人と常につながっていたい」という強いニーズだ。パラレルで登録者向けに実施したアンケートの結果によると、趣味として「友人とのおしゃべり」を挙げる人は「ゲーム」に次いで2番目に多かった。

第二に、友人の状況をリアルタイムで把握可能な環境だ。今のZ・α世代は、幼い頃からSNSやメッセージアプリなどのツールが身近にあった。そのため、友人に「今何してる?」と聞かずとも、相手の状況をある程度把握できるのだ。
第三の根拠はコミュニケーション不安だ。友人とは常につながっていたいが、良くも悪くも相手の状況がリアルタイムに把握できる。そのため、直接的に「今何してるの?」と聞くコミュニケーションに高いハードルを感じるという。