カオスはチャンス、経営統合を機に進めたマーケティング改革
2022年1月、NTTコミュニケーションズは、NTTドコモの法人事業およびNTTコムウェアとの経営統合を実施した。以降、ドコモグループの法人事業は「ドコモビジネス」ブランドのもと、展開されている。
NTTコミュニケーションズのビジネスソリューション本部でドコモビジネスのマーケティングを統括しているのが、MarkeZine Day Spring 2025に登壇した戸松正剛氏だ。この日戸松氏は、『BtoBマーケティング「現場(営業)のデータ活用」の難所と勘所 NTTコミュニケーションズのデータドリブンなマーケティング戦略』と題し、講演を行った。

冒頭、戸松氏は3社を統合してビジネスを展開していくことの難しさについて言及した。同じNTTグループと言えど、3社ともカルチャーが違い、元は経営幹部も経営戦略も違う。何より、蓄積している顧客データの形式からバラバラで、言うならば「カオス」な状況だったという。
しかし、戸松氏はこれを「マーケティング変革のチャンスでもある」と感じていたそうだ。
「平常期に何か変革を起こそうとしても、たいていの人は無関心です。うまくいっているんだから変革なんて必要ない、と思う人が多いでしょう。つまり、平常期に変革を実行するのは非常に難しい。反対に、会社として大きな揺れ動きがあった時、たとえば経営者が交代するタイミングや、我々のように統合合併があったタイミングは、その揺れ動きをうまく乗りこなして変革を起こせるチャンスです。私は“カオスはチャンス”だと思っています」(戸松氏)
「CXとEXの向上」をデータで可視化する
NTTコミュニケーションズのマーケティングは、「CX向上」「EX向上」の大きく2軸で考えられている。これらの難しいところは、どうしても「良くしていこう!」という掛け声レベルで終わってしまうこと。BtoBビジネスの場合は特に、営業担当社員の働きがいやモチベーションがCX(顧客企業への提供価値・満足度)に影響してくるため、EX向上もCX向上も両輪で考えなければならないが、ビジネスへの貢献度合いが可視化されないと、努力目標的な扱いになってしまう。

「EX向上も、間接的に売上増加に影響を与えます。しかし、EX向上の取り組みは経営マネジメントから見ると、単なる“コストアップ”と判断されかねません。だからこそ、CXとEXを向上させるには、それらをサイエンティフィックに捉え、生み出された結果をデータで見ることが重要です」(戸松氏)
NTTコミュニケーションズでは、CX・EX向上を目指し、下の図にある5つのマーケティング戦略を進めてきた。この日の講演では「4.CXを最大化するためのデータドリブンでのセールスイネーブルメント」が紹介されたが、これ1つだけをやっても状況は改善しない。あくまで5つある戦略のうちの1テーマ、という位置づけで以降の解説が続く。
