SNS上の口コミは「生活者のリアルな声」
これまでの連載では、SNSアカウント運用のPDCAサイクルに、生成AIを組み込む方法を紹介してきました。これまでの内容がアカウント運用の効率化につながっていたら嬉しいです。
【前回記事】
ここまでは自社のSNSコンテンツの話題が多かったですが、運用ではそれ以外に目を向けるのも大切です。連載第5回となる本稿では、UGC(ユーザー生成コンテンツ)や競合アカウントを、生成AIを活用して分析していきます。
UGCは、消費者の生の声や本音を映し出す貴重な情報源です。「〇〇に行ってみた」「〇〇が美味しかった」と、SNSに投稿した経験がある方も少なくないでしょう。
このような投稿は、企業発信の情報よりも信頼性が高く、他の消費者の購買意思決定に大きな影響を与えます。ホットリンクの調査では、インターネット上の口コミを参考に、商品を購入した経験が「ある」と答えた人が80%を超えました(出典:「インターネット上のクチコミを参考に8割超が商品を購入。購入商品のTOP3は、食品・化粧品・日用雑貨」)。
これら口コミデータの活用方法は多岐にわたり、フェーズごとに適した施策が異なります。
たとえば、既に口コミが発生している場合、そのデータを市場調査や商品・サービスの企画立案、広告の効果測定、トレンド観察などに活用できます。一方、口コミの数が少ない場合は、分析の前に口コミの発生数を増やす施策を検討する必要もあります。
また口コミは、自社のサービスや商品への反応だけではなく、競合他社の状況や業界全体のトレンドを知ることにも役立てられます。SNS上の口コミを体系的に収集・分析すると、PDCAサイクルを効果的に回し、より市場ニーズに合ったSNS戦略を立てられます。
まずは、「自社の商品やサービスについて、どこかで誰かが語っている可能性がある」という認識をもちましょう。そして、SNSのほか、ブログや掲示板サイト、食べログや@cosmeなどの口コミサイト、Google Mapなどに投稿されたレビューをチェックする習慣をつけましょう。
特に食品や飲食店、コスメ、音楽や映画のように「手に取りやすい(利用しやすい)」「他者へ勧めやすい」商品やサービスを扱う企業であれば、なおさらSNS上の口コミに注目し、内容を把握しておくべきです。
ここからは、UGCの具体的な分析方法を解説します。
STEP1:分析するデータを集める
第3回でも解説した通り、ChatGPTなどのAIツールは、SNSプラットフォームに直接アクセスできません。そのため、分析したいデータは別途収集し、AIに渡す必要があります。ここでは、X(旧Twitter)とInstagram上のデータの集め方を紹介します。
Xの場合
第3回でも紹介した「ついすぽ -Tweet Export-(ついすぽ)」の活用がお勧めです。Google Chromeに拡張機能として「ついすぽ」を追加したら、Xにアクセスします。
検索窓に、ユーザーの声を聞きたいキーワード(商品名やブランド名、社名など)を入力し、検索を行います。検索するキーワードによっては、スパムや不要な情報が多く含まれ、分析の精度が落ちてしまいます。
除外設定の方法としては、「-(マイナス)」を使った検索テクニックが便利です。たとえば、bot投稿を除外したい場合は、検索キーワードとスペースを入れた後に「-bot」「-自働投稿」などと入力します。広告や宣伝を除外するなら「-キャンペーン」「-お得情報」などのキーワードを追加すると良いでしょう。
実際に検索結果をみて、よくみるワードを一つずつ追加していくのも良いですが、下記のようなプロンプトで、ChatGPTに除外ワードを考えてもらうことも可能です(以降、有料版ChatGPT 4-o モデルの利用を想定)。
【プロンプトの例】
X上のユーザーの声を分析する際、botによる投稿やアフィリエイト目的の投稿を除外したいです。どのようなキーワードが考えられますか?
検索結果が表示された後の処理は、第3回の「STEP4-1.データを集める」で紹介している「ついすぽの使い方」を参照してください。
続いてはInstagramでUGCの情報を集める効率的な手段、そして集めたUGCの分析です。
Instagramの場合
Instagramに投稿されたUGCは、PCのスクリーンショット機能を使って収集します。まずは、Xと同様にユーザーの声を聞きたいキーワード(商品名やブランド名、社名、ハッシュタグなど)を決めましょう。そもそも競合が思いつかない、という場合はそれも生成AIに検索してもらうと良いと思います。
次に、そのキーワードのUGCを検索します。Instagramのブラウザ版は検索機能に制限があるため、URLパラメータを直接操作する方法が効果的です。Instagramにログインした状態で、下記のようにURLを変えてアクセスします。
https://www.instagram.com/explore/tags/[キーワード]
【例】ユーザーの声を聞きたいキーワードが「ホットリンク」であれば……
https://www.instagram.com/explore/tags/ホットリンク
検索結果が表示されたら、画面のスクリーンショットを撮り、画像として保存します。スクリーンショットを撮る投稿数は任意ですが、検索トップの投稿は含まれるようにしましょう。