実践!GTM DMIモデル
─ CMO不在でも総力戦はできる。“戦略の共通言語化”で組織間分断を解消する「GTM DMIモデル」とは
─ 進出する市場=勝てる土俵をどう見極める? GTM戦略における「順番」と「つながり」の重要性
─ 売れないのは「知られていないから」ではない。大企業が新市場開拓で陥る罠と「顧客理解」の重要性
─ 自社がコンタクト可能なターゲット顧客は「何社・何人」か?売上に直結する「販売チャネル」戦略の進め方
─ 広告プロモーション担当という服を脱ぎ、ビジネス全体を考える“広義のマーケティング”当事者になろう(本記事)
「GTM」はマーケティングのミッションである
本連載の第一回でも触れましたが、DMIとして今回「GTM(Go To Market)DMIモデル」を策定した背景には、ものを売るための販売戦略・プロモーション・広告・市場調査など一般的にイメージされる「狭義(狭い範囲)のマーケティング」から脱却し、本来的にマーケティングに含まれる商品開発・市場調査・戦略立案に加え、販売後のデータ分析などいわゆる4P(製品、価格、流通、プロモーション)と呼ばれる「市場と向き合う広範な機能」を持つ「広義のマーケティング」を実現することが、これから先、より重要になってくると考えているためです。
そして、この広義のマーケティングを実践するための強力なツールが「GTM」であり、本連載では、マーケティング部門が中心となって「GTM」を策定・実行する必要性と具体的な進め方についてお伝えしてきました。
連載最終回となる今回は、「GTM」をマーケティングのミッションとして捉え、遂行する意味に関して改めてお伝えしたいと思います。
「狭義のマーケティング」の制服を着ていないか?
フランスの皇帝であったナポレオン・ボナパルトの名言に「人はその制服どおりの人間になる」というものがあります(注1)。
この言葉は、私たちの行動や考え方が、身につけるものや周囲の環境によって影響を受けることを示しています。なぜ、急に服装の話をしだしたのかと訝しがられる方もいらっしゃると思いますが、ここで筆者が伝えたいのは、「自身の役割は広義のマーケティングの計画・実行である=GTMの策定・実践である」と認識、自己暗示を掛けることによって大きく「当事者意識」が変わるということです。どういうことか解説していきましょう。
P.F ドラッカーは、著書「ドラッカー5つの質問」(注2)の中で、企業を成功に導くためにマネジメントで重要な5つの質問を上げています。
第1の質問:我々のミッションは何か
第2の質問:我々の顧客は誰か
第3の質問:顧客にとっての価値は何か
第4の質問:我々の成果は何か
第5の質問:我々の計画は何か
狭義のプロモーション(Promotion)という制服を着ている状態では、「我々の顧客は誰か(Place)」は営業部門の、「顧客にとっての価値は何か」は製品(Product)を製造する製造部門の仕事であり、(少なくとも)マーケティング部門の責任ではないという考え方になりがちです。一方、自身の制服(責任領域)を広義のマーケティングだと考えた場合には、質問の2から5まで、何が自社にとって重要なのかという問い掛けはすべて、自身やチームが解決しなければならない「自分ごと」になります。