GTM策定はビジネス成功の可能性を高める
ビジネス全体を考える広義のマーケティングの制服を着ることで、マーケティングの枠を超えて目に見える経営への貢献も可能になります。Boyd, Chandy, & Cunha Jr.(2010)(注3)によると、CMO が企業価値を高めるために果たすべき役割には、以下の2つがあります。
1)情報的役割(informational role)。新しい市場機会を見つけ、既存顧客と新規顧客から新しい売上を得る。
2)意思決定的役割(decisional role)。マーケティングの投資にどのようなあるいはどの程度の投資をなすべきかを決定する。
CMOが不在だとしても、マーケティングが担うべき役割は変わりません。さらに自身の役割を広義のマーケティングだと考えた場合にはビジネス全体をマーケティングが主体となって考える必要があり、上記の2の意思決定自体はできなくても製品の開発を含めて「投資」の意思決定に必要な情報を集めることがマーケティングには求められます。
GTMモデルを精緻に策定することで、企業価値を高める事業開発のための投資判断に必須な情報を整理することが可能になり、適切な投資判断ができる可能性を高めます。GTM策定で可能になる「解像度の高い顧客・市場理解」がビジネスの成功の可能性を高め、ひいては適切な投資判断につながるのです。
部門の壁を壊すためのツールとして、GTMについて会話しよう
GTMモデルはこのように強力な権限を持つCMOがいない場合にも、市場および顧客、市場戦略自体の解像度と一貫性を持たせ、他部門のメンバーにも「広義のマーケティング」の観点と意識を持ってもらうための強力なツールとなります。実際にGTMを策定、遂行するためには様々なハードルがあることも事実ですが、一方でGTMモデルの構築、実行に必要な「広義のマーケティング」の観点、意識をマーケティング部門および関係者に浸透できる効果は非常に大きいと考えます。
VUCAと呼ばれる変化が激しい環境下の中で、企業が持ち得る力と知恵を集約し総力戦を行うことができる仕組みのひとつとして、GTMモデルの活用が進むことをDMI(デジタルマーケティング研究機構)として切に願っています。
【参考資料】
注1:【名言・格言解説】「人はその制服どおりの人間になる。」by ナポレオンの深い意味と得られる教訓注2:ドラッカー5つの質問 単行本 – 2017/12/16山下 淳一郎 (著)あさ出版 2017/12/16
注3:Boyd D. Eric, Rajesh K. Cunha, and Marcus Cunha Jr. (2010). When do chief marketing officers affect firm value? A customer power explanation. Journal of Marketing Research, 47, 1162–1176.
