実践!GTM DMIモデル
─ CMO不在でも総力戦はできる。“戦略の共通言語化”で組織間分断を解消する「GTM DMIモデル」とは
─ 進出する市場=勝てる土俵をどう見極める? GTM戦略における「順番」と「つながり」の重要性
─ 売れないのは「知られていないから」ではない。大企業が新市場開拓で陥る罠と「顧客理解」の重要性
─ 自社がコンタクト可能なターゲット顧客は「何社・何人」か?売上に直結する「販売チャネル」戦略の進め方(本記事)
「何社・何人」の共通認識はできているか?
これまでの連載では、第2回記事で「Market & Accountレイヤー」として対象市場やアカウントの解像度、第3回記事で「Buyer & Valueレイヤー」として購買意思決定者のペインや値について説明してきました。
今回はGTM DMIモデルの「Channel & Engagementレイヤー」をご説明したいと思います。ここからより実践的なプランニングに移ります。

まずは下図をご覧ください。「ターゲット企業」は「Market & Accountレイヤー」で策定したターゲットとなる企業ですが、「自社のCRMやMAに存在するコンタクト可能企業」と重ねた場合、(B)エリアにいるのは「何社・何人」でしょうか? また、その数値は社内での共通認識でしょうか?

この「何社・何人の社内での共通認識」が、本日解説する「Channel & Engagementレイヤー」のプランニングにおいて、非常に重要な意味を持ちますので、ぜひ覚えておいてください。
GMT DMIモデルにおけるチャネルとは「営業部門」や「販売代理店」などの販売チャネルを指します。ターゲット顧客と顧客価値を明確化できれば、その顧客価値を適切かつ効率良く届け、売上につなげるプランが必要となりますが、それをRoute To Market(以下、RTM)と呼びます。
どういったターゲットセグメントに、どのような販売チャネルを利用してアプローチするのか? これを明確化し、その販売チャネルごとに支援策を考えていく必要があります。
具体的には、
- 上場企業約3,600社は社内の営業部隊が直接営業する
- それ以下の企業はインサイドセールスが営業を掛け、販売代理店にトスアップする
など、まずは「テリトリー」と呼ばれる営業領域を設計します。

こうしたテリトリーの設計により、上記の例では上場企業向けの営業部隊の支援に加え、インサイドセールス部隊と販売代理店の支援が必要になることがわかります。
社内の営業向けには商材の社内説明会や、WebによるQ&A集の提供、商談ロールプレイの実施、提案資料のひな形の提供など、単なるリードだけではなく、実際の商談に役に立つ支援を提供する必要があります。
また、販売代理店向けには同様の教育や資料による支援に加え、インセンティブ設計も重要です。販売目標の達成に応じて卸売価格の調整や、優秀な支店を表彰するなど、様々な手法を駆使し、自社の商材を販売する動機形成を行う必要があります。
日本において、マーケティング部門がRTMを自由に設計している企業は少ないですが、販売チャネルへの支援を提供することは売上に直結する重要な施策となります。
たとえば、「Play Book」として市場と顧客価値の説明資料の作成、導入事例、商材のカタログやWebの作成、販売店向け説明会、目標達成のインセンティブイベントの実行など、マーケティングが得意とする施策が多くあります。
ターゲティングと顧客価値設計の解像度が高ければ、営業部門とともにチャネル施策にも様々なアプローチが可能となるのです。
これまで日本のB2Bマーケティングでは、顧客向けのキャンペーン施策が注目され、KPIも無意識に送客数や案件金額など、「顧客との直接的なインタラクション」が目標値とされていました。しかし、こうした「チャネル支援策」もB2Bマーケティングが設計すべき領域なのです。