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MarkeZine Day 2026 Spring

実践!GTM DMIモデル

自社がコンタクト可能なターゲット顧客は「何社・何人」か?売上に直結する「販売チャネル」戦略の進め方

商談額や売上から必要なリードを「逆算」する

 リバースエンジニアリングという言葉をご存じですか? 元々はエンジニアリング用語で、既存の製品を分解・解析して、その仕組みや仕様、構成部品、技術、設計などを調査・分析する手法です。一般的な開発・製造工程と逆に進むため、「リバースエンジニアリング」と呼ばれています。

 転じてマーケティング用語として使う場合には、達成しなければならない商談額、売り上げから逆算して前述のファネルの考えに従って必要な、SQL/SAL/MQL/MALなどのリードがいくつ必要なのかを「逆算」して算出。それぞれのステージで必要なリード数(条件を満たすコンタクト、機会創出数)を創出するためのマーケティングキャンペーンを設計、実行していくという考え方になります。

 現在のCRM・MA上のデータは「何社・何人の共通認識」を基に、それぞれのステージで必要なリード数を算出していくと、そのGTMモデルの実行プランの実行可能性の解像度、腹落ち度が上がってきます。たとえば、ある高価な5兆円以上の売り上げの日本企業向けに特化したERP製品があったとします。GTMで目指す年間の売り上げ目標が100億で商談の平均単価が20億、つまり年間5件の成約がないと売り上げ達成が不可能で、ターゲット企業にアプローチして成約するコンバージョンレートが10%だとすると、最低50社のターゲット企業がGTMで設定したゴール達成には最低限必要ですが、2025年3月の段階で売り上げ5兆円以上の日本企業は27社のみです(注4)。

 これでは、コンバージョンレートが大幅に上がらない限り達成不可能なので、ターゲット企業を広げるのか、コンバージョンレートを上げるのか、コンバージョンレートはどのようにしてあげていくことが可能なのかなど、営業、マーケティングで「現実的に実行可能なプラン」にしていくためにChannel and Sales Enablementの項目などで狭義のマーケティング領域以外にも注力して行くことがGTMモデルで作成したプランを実現するためのキーとなります。

 多くの場合、一度でGTMの3つのレイヤーを検討、合意できることはほぼなく、それぞれのレイヤーを一つずつ検討していくと、レイヤー間で整合性が取れなくなることがほとんどです。ただし整合性が取れないからと言ってそこで諦めるのではなく、整合性が取れるまで関係者間で実現のためのプラン、モデル自体の共通理解を上げていくことが、GTMモデルの解像度と実現可能性を上げるためのキーとなります。

 連載最終回となる次回は、CMOがいないことを前提とした中でどのように有効なGTMモデルを構築し実践していくのかを提言していきます。

【約注】

注1:一般社団法人日本BtoB広告協会 発行 BtoBコミニケーション 2024年8月号   〈事例〉ゼロから取り組んだグローバルマーケティング組織構築~プロセスを動かすのは人である~ 武井美樹 サトーホールディングス執行役員 大石芳裕 明治大学名誉教授

注2:【対談】レゾナック社:社内ステークホルダーと連携して 強固な自走組織体制を各国に構築する

注3:Events and Interviews
マーケティングの存在意義とは? NECが実現させた並走分業と、 営業との真の組織連携【対談】

注4:2025年日本企業売上高ランキング 日本経済新聞調べ

 

【用語集】

◆KGI/KPI/KSF

KGI(Key Goal Indicator):経営目標達成指標。経営・ビジネスの最終目標の達成度合いを測るための定量指標。

KPI(Key Performance Indicator):重要業績評価指標。KGI達成に向けた中間目標で、KGI達成に向けたプロセスが的確に達成できているかどうかを評価するための定量指標。

KSF(Key Success Factor);重要成功要因。KPIを達成するために最も重要と思われるプロセスを設定する。

◆ファネル

 顧客が商品・サービスを認知してから購入するまで、さらには購入後の行動プロセスを図式化したもの。形状が漏斗(ファネル)に似ていることから名付けられ、BtoBにおいて有効なフレームワークとして知られる。「パーチェスファネル」「インフルエンスファネル」「ダブルファネル」などいくつかの種類があり、活用目的や商材の特徴によって使い分けることができる。

◆MAL/MQL/SAL/SQL

 見込み顧客(リード)を区分する用語。

MQL(Marketing Qualified Lead):MALのうち、リードナーチャリング活動を行った結果「商談可能」と判定され、「確度が高い」リードとして営業部門に引き渡されるリードを指す。

SAL(Sales Accepted Lead):営業部門が営業活動の対象とするリードを指す。MQLがそのままSALとなることが一般的。

SQL(Sales Qualified Lead):アプローチしたSALのうち、営業部門が案件化の可能性が高いとみなしたリード(商談中のリード、今後案件化・受注の見込みが高いリードなど)を指す。

◆セールスイネーブルメント

 イネーブルメント(Enablement)は、enable(~ができるようにする)という意味を持つ言葉。セールスイネーブルメントは、営業組織が継続的に成果を上げていくために行われる、人材の育成・改善に向けた有効化や機能強化の取り組み全般を指す。

◆「Coverage(網羅率)」と「Frequency(接触頻度)」

 「アカウントベースドマーケティング(ABM)」を実践するために必要な4つの要素「PICF」=「Priority(優先順位)」「Identification(識別)」「Coverage(網羅率)」「Frequency(接触頻度)」の一部。

◆SMART(の法則)

 適切な目標設定のためのフレームワーク。「Specifide(明示的で)」「Measurable(計測可能な)」「Attainable(達成可能である)」「Related(目的と関連性のある)」「Time-oriented(期限)」の頭文字をとったもの。

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この記事の著者

大橋 慶太(おおはし けいた)

公益社団法人日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構
B2Bマーケティング委員会 委員長
マーケットワンジャパン 合同会社 執行役 事業開発管掌

BtoC、BtoB企業のマーケティング・コンサルティングに20年以上従事。現在は大手製造業向けに、マーケティングを軸にした新規事業探索、デジタルト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/04/10 09:30 https://markezine.jp/article/detail/48842

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