「キンドリルウェイ」で実現した組織文化変革
━━新しい企業文化「The Kyndryl Way(キンドリルウェイ)」について、具体的に教えてください。
「キンドリルウェイ」は、私たちの文化醸成のための枠組みです。2つの大きな要素から構成されています。

1つ目は「Restless」「Empathetic」「Devoted」という3つの行動指針です。
「Restless」とは、先見性を持ち、常にお客様のニーズを先読みし、深い理解に基づいてサービスを提供する姿勢です。日本では「進化する」と表現しています。
「Empathetic」とは、お客様の声に真摯に耳を傾ける姿勢です。従来の「売るために早い段階で提案する」スタイルから脱却し、しっかりと傾聴することを重視します。日本では「共感する」としています。
「Devoted」とは、心からの献身的な姿勢でお客様とともに戦略を構築していくことです。日本では「尽力する」と表現しています。
2つ目の要素は、「組織運営の3原則」です。「ビジネスをシンプルに」という要望を受け、組織運営面でも「Flat」「Fast」「Focused」の3つの原則を設けました。
「Flat」は、組織階層を可能な限り減らし、多様な人材が個性を発揮し責任と権限を持って行動することを意味します。「Fast」は、プロセスの障壁を取り除き、あらゆる局面ですばやくシンプルな方法を見出すこと。そして「Focused」は、優先順位を明確にし、卓越したサービス提供に注力することを表します。
これらの文化的基盤の上に、具体的な人材投資戦略を展開しています。技術的なスキル向上だけでなく、従業員のウェルビーイングやキャリアパス構築も重視し、長期的に価値ある仕事を続けられる環境づくりに注力しています。
従業員を主役にしたブランド戦略
━━従業員向けのブランディングの取り組みについてもお聞かせください。
2023年には「Progress with Purpose」という言葉を掲げました。これは「キンドリルで働く意味」を明確化し、現在の従業員にプライドを持ってもらうとともに、優秀な人材を市場から惹きつけることを目的としています。
特徴的なのは、求人広告に実際の従業員の写真を使用していることです。外部のモデルの写真ではなく、私たち自身がブランドそのものの顔となることで、より「Authenticity(真正性)」の高いメッセージを発信しています。この取り組みにより、日本でも求人への応募者数が大幅に増加しています。

━━BtoB企業でここまで「人」にフォーカスした施策を展開する理由は何でしょうか?
テクノロジー企業からサービス企業へと転換したことが大きな理由です。テクノロジー企業時代は、技術や製品が前面に出ていました。しかし、サービス企業として成功するためには、お客様に共感し、深く理解することが日々求められます。そのためには、まず私たち自身が人間らしさを大切にし、それをブランドに反映させる必要があります。これが「ヒューマナイズ」の考え方です。私たちにとっては、従業員がそのまま「プロダクト」なのです。
この広告がわかりやすく示しているように、従業員をスポットライトの中心に据えることは、「キンドリルで働くとはどういうことか」を具体的に伝えられ、自社のサービス哲学そのものを表現する手段でもあります。