この傾向で懸念されること/ファン・推しの上位互換が生まれるかも?
今後の未来予想としては、世界情勢や日本の景気動向を踏まえて女の子たちがコンテンツなどに平和な世界観を求める傾向は強まっていくと推察します。
心温まるコンテンツが増えること自体は非常に喜ばしいことで、女の子たちの不安をあおる要素が世の中から減ってほしいと願う方も多いでしょう。しかしここで懸念されるのは、あらぬ方向へのエスカレートです。
特に、自らの素を切り売りする芸能人やインフルエンサー・恋愛リアリティーショーなどに心の平穏を求める風潮が強まりすぎてしまうと、受け取り手側が過度な期待を勝手に膨らませてしまう状況になりかねません。なにかの拍子で期待に添わない姿が露出した場合に、大きな反発を生む可能性があります。
また配慮が行き届いたコンテンツ自体は素晴らしいものですが、これもエスカレートして当たり前化すると、逆に少しでも配慮が欠けたコンテンツがあれば批判が殺到する事態になりかねません。視聴者によるコンテンツの粗さがしが激化し、発信者たちが公開するコンテンツのハードルもどんどん上がっていくでしょう。
こういった状況になった場合、リスク回避のために、発信者たちが自分たちの粗や尖りを受け止めてくれる理解のあるファンだけを集めた閉ざされたコミュニティを作り、自由なコンテンツについてはその中だけで発信するようになると推察します。

最近では「華金カップル」がYouTubeのメンバーシップ制を活用して、気軽に語るラジオを配信し始めましたが、まさにこれは発信者たちの未来の先駆けかもしれません。閉ざされた空間だけで本音や尖りを見せる発信者と、彼らの人間性をまるごと理解するファンとの絆は日々深まり、「ファン」や「推し」の上位互換となる新しい言葉が生まれるでしょう。
また、ほとんどの発信者が自由度の高いコンテンツを閉鎖的な場でのみ公開する事態となれば、インターネットという広がりある自由な世界だからこそ加速していたコンテンツ全体の成長が止まってしまう未来がやってくるかもしれません。
人間というのは多面的な生き物です。そもそも全方位にとって幸せな事象は少ないものかもしれません。出演者や推しが幸せかどうかを自分の尺度で決めつけてしまう行為や、彼らが自分の期待に沿う人間であることを求める風潮がエスカレートすることなく、女の子たちが引き続き幸せに浸り続けられる最適解へ世の中が向かっていくことを願っています。
電通GIRLʼS GOOD LABは、「女の子」のインサイトに特化して研究をする社内横断チームです。女の子たちがいいね!と思える社会を作るべく活動しています。毎月気になるトレンドをお届けしていきますのでお楽しみに!

本記事のイラストは、電通グラレコ研究所が描いたものです。電通グラレコ研究所は、グラフィックレコーディングを 中心としたビジュアライゼーションサービスの提供と研究を目的とする電通グループ横断チームです。