時代が変われば、コンテンツの「王道」も変わる?
今月のテーマは、「平穏と幸せを摂取する女の子たち」です。
ドラマや映画などのコンテンツでは一般的に、ハラハラドキドキする展開や不安に感じるシーンが、視聴者の関心を惹き続けるための効果的な手法として多用されてきました。視聴者の心を不安や衝撃で大きく揺さぶることで、ストーリーにメリハリをつけて面白味を感じさせる考え方です。しかし、最近女の子たちの間では、終始幸せな空気感が漂う「平和100%のコンテンツ」が人気になっています。

象徴的なトレンドは、穏やかで愛にあふれる恋愛リアリティーコンテンツの流行です。Netflixでは日本初の男の子だけの恋愛リアリティーシリーズ「THE BOYFRIEND」や、男女10人が異国の地でデジタルデバイスを手放して旅する「オフラインラブ」が女の子たちの間で非常に人気になりました。
少し前まで恋愛リアリティーショーといえば、交錯する恋模様の中で起こるトラブルやいざこざを醍醐味に、恋愛を強制的に動かすゲームのような制度がある作品が多数でした。しかし、女の子たちの人気を獲得したこの2作品については雰囲気が全く異なり、演出ではないピュアなトンマナで出演者たちの言動が丁寧に記録されています。視聴者は彼らの自然で繊細な心の動きに集中しながら終始温かな気持ちで作品を鑑賞することができました。
また、推し活でも、最近特に人気を集めやすいのはメンバー仲が良いグループ。STARTO ENTERTAINMENT所属のアイドルグループ「Snow Man」は、パフォーマンスやバラエティでのトークなどからメンバー達がお互いを尊重し合っている様子が伺え、その微笑ましいやりとりがファンの心を温めています。韓国の女性トップアイドルグループ「TWICE」でも、メンバー同士がプライベートをともに過ごすほど仲が良いことはファンの誇りです。
幸せ、共感、平和をキーワードに、女の子の心をぐっと掴んだ推し活トレンドは、まだまだあります。
STARTO ENTERTAINMENT「timelesz」
同事務所の「timelesz」も、5名の新メンバーを迎え入れるまでのストーリーをNetflixのオーディション番組で放送し、一気にファン層を拡大させることに成功しました。
特に、新規加入した寺西拓人さんが、人生で初めて“メンバー”と呼べる存在ができた幸せを噛みしめる様子が話題となるなど、お互いを家族くらい大切であると発言する彼らの愛に癒される女の子が続出。6月から全国8都市で行われるライブツアーのチケットは高倍率となり、落選を嘆くポストが各SNSで多く見られました。
ちゃんみなプロデュースのオーディション番組「No No Girls」
また、音楽プロダクションのBMSGが主催し、アーティストの「ちゃんみな」さんがプロデュースしたオーディション番組「No No Girls」の人気ぶりからも、今の女の子たちがコンテンツに求めるものが伺えます。
これまでの人生で「No」を突き付けられてきた候補者たちとちゃんみなさんが真正面から向き合い、彼らの可能性に最大限のリスペクトを持って接する姿が印象的だった「No No Girls」 。オーディション番組でありながら候補者を”落とす”という雰囲気が非常に薄く、特に最終選考結果発表のちゃんみなさんは 「彼女たちにとってなにが一番幸せなのか 」を考えたと語り、候補者1人ひとりのより良い人生を願うかのような選考理由に多くの番組ファンが共感しました。
さらに番組終了後に、ファイナリスト(惜しくもメンバーになれなかった参加者も含めて)全員で歌唱するYouTube動画は非常に話題になり、公開から約半月で再生回数1,000万回超えに。当落関係のないファイナリスト同士の絆を目撃した番組ファンの女の子たちから「全員に幸あれ」「1人残らず幸せになって」など、温かいコメントが寄せられました。
大阪を拠点として日常の様子を投稿する夫婦YouTuber「華金カップル」
カップルYouTuberといえばお互いドッキリを仕掛けあい、カップルの雰囲気が険悪になったり・プチ喧嘩に展開したり……なんていう少しドキドキする動画が定番でしたが、最近は「華金カップル」のようなYouTuberが人気です。
彼らの動画は“夫婦2人のなんてことない日常のシーンの記録”に近く、起承転結がない構成。見ていると、まるで彼らの穏やかな暮らしに同居しているような温かい気分にさせられます。
「華金カップル」が駆け出しYouTuberだったころ、テレビプロデューサーの佐久間宣行さんがラジオで “(2人の様子が幸せ過ぎて)気持ちが荒んでいく・鬱な気持ちになる”という旨の話をされていましたが、彼らの動画には下手すると視聴者がちょっと落ち込んでしまうほど“幸せ”が溢れすぎているのです。
2024年末にはスタイルブックも発売し、全国各地で開催されたお渡し会に、多くの応募が殺到した彼らの人気ぶりは、今の女の子たちがコンテンツに対して、心がピリっとするちょっとした刺激よりも、心を満たせる平穏と幸せを求めていることの象徴と言ってもいいでしょう。