6つのクラスターと性年代の傾向、人々の欲望は変化していくもの
さてこれらの欲望クラスターをもう少し俯瞰して見ていきましょう。
前述のとおり、この6クラスターは性年代のメリハリがついています。大きく分けると【享楽】【自由】【安全】の各クラスターがシニア寄り、【地位】と【愛情】クラスターが若者寄り、【現状維持】クラスターは30~40代が多くなっています(図10)。
また、未既婚や子供の有無によっても差が見えています。【享楽】クラスターは既婚だけど子供はなく、【現状維持】クラスターは既婚で子供がある人たちに多く見られます(図11)。
こうした違いはなぜ生まれるのでしょうか?
欲望は一人ひとりに様々に備わっているものです。全く何の欲望も持っていない人はいませんが、一方で、あらゆる欲望を常に発揮している人もいません。
ある時期には強い欲望が、違う時期には弱くなるということも十分にある話です。学生時代には「遊興&解放」の欲望が発揮されやすいでしょうし、社会人になると「承認&優越」の欲望が発揮されやすくなります。結婚して子供が生まれることでさらに欲望の強弱は変化していきます。
また欲望は社会での価値観の変化の影響も受けます。その欲望の強弱の変化がクラスターに影響を与えることも考えられます。
欲望クラスターは、人々を欲望の出方の違いで分類したものです。つまりその人の現在の属性によって、属するクラスターは変わってくることが十分に考えられます。若くて世の中の色々なことに興味のある人は「上を目指したいステータス志向クラスター」に当てはまりやすくなりますし、そうした人が年を重ねて家族を持つようになったら家族を優先するようになり「自分は二の次でも今が幸せクラスター」に変化していき、さらには子供が独立した後に「感情のままに刺激が欲しいクラスター」になっていくことも予想できます。
このように説明すると、クラスターは性年代によって決まると思われそうですが、1つのクラスターがずっと続く人もいるでしょう。あるいは、シニア女性に多い「縛られたくないシンプル志向クラスター」に当てはまる10代男性や、若年男性に多い「上を目指したいステータス志向クラスター」に当てはまるシニア女性もいます。
そもそも各性年代で見ると、最も多いクラスターでもその性年代の25~30%ですので、性年代との関係はあくまで傾向と考えるべきものでしょう。
欲望クラスターは、日本人の欲望の出方を考察するツールとなる
では実際に欲望クラスターを実際にどのように活用できそうか考えていきましょう。
この欲望クラスターは、15~74歳の男女を網羅して6タイプに分類したものです。おおよそ日本人を網羅していると言えます。つまり、今の日本人の欲望の出方はこの6クラスターのいずれかに当てはまります。
欲望はニーズのさらに手前に存在するものです。欲望をつかむことでまだ見ぬニーズの発見につなげられれば、消費者のより深い意識を把握することが可能になります。
商品のブランド戦略を開発する際に、その商品に合いそうなクラスターをあらかじめ想定しておけば、有効なコンタクトポイントやクラスターが持つ価値観にフィットしたブランディングの立て方が見えてきます。また自社商品と他社商品のブランドポジションの違いをクラスターの違いから見ることもできるでしょう。
逆にどのクラスターが適正なのかはわからないが、商品が想定している性年代のターゲットがある場合、そのターゲットがどのようなクラスター構造になっているかを読み解くことも可能です。そうすることで商品と適合するクラスターを読み解き、ペルソナを描いたりカスタマージャーニーを構築したりできます。
または商品開発の際にもクラスターは活用可能です。たとえば、30代の男性向けに新商品を開発したい場合、30代男性のクラスター分布を見ると、多い順に「上を目指したいステータス志向」「愛の承認願望」「身体も心もモノまでもリスクヘッジ」の3クラスターが並びます(図12)。これらのクラスターそれぞれについてのペルソナを見ながら、商品開発のアイデアを策定していくことも可能です。
DDDでは、欲望は生活者の価値観変化にともなって変化していくものと考えています。今回の分析では、生活者の欲望の表出には年代ごとの特徴がある程度出ることがわかりました。社会の価値観そのものの変化や自身の社会ステータスの在り方によって、欲望の表出が変化するのであれば、欲望クラスターは今後も変わっていくのでしょう。
DDDでは、今後の欲望の変化、欲望クラスターの変化を通じて消費環境の変化を読み解き続けていきたいと思います。
