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先進的なCRMを実践する事例大全

ビームス流、顧客と“相思相愛”になるCRM 顧客の行動にマイルを付与する新制度の成果は?

 多くの企業が試行錯誤しながらCRMに取り組んでいる。セレクトショップを営み、2026年で創業50年を迎えるビームスもその一社だ。長年にわたりCRMに取り組んできたビームスは、2024年に会員プログラムをリニューアルし、行動でもマイルがたまる制度を導入したという。ビームスのマーケティング本部 本部長 山崎 勇一氏に、同社のCRM構築の歩みやリニューアルの成果、顧客との長期的な関係を築くための秘訣を聞いた。

「相思相愛」の状態を目指すビームスのCRM戦略

──現在ビームスは、マーケティング戦略の中でCRMをどのように位置づけて推進しているのでしょうか。

 当社は来年で創業50周年を迎えます。元々は原宿の小さなスペースから始まり、良いモノを選んでお客様に届けるというプロダクトマーケティングで成長してきました。しかし、コロナ禍を経て、お客様の価値観や企業の存在意義が大きく変化し、これまで以上にお客様に向き合う体制が必要となりました。

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株式会社ビームス マーケティング本部 本部長 山崎 勇一氏

 その変化に対応するため、従来のプロダクトマーケティングだけでなく、新たに「カスタマーマーケティング」という考え方も重視するようになりました。そして、2021年にカスタマーエンゲージメント本部を設立。私たちが提供すべき価値は「素晴らしいモノ、ヒト、コト」であり、お客様としっかり向き合える組織が必要だと考えたのです。

 また、「ロイヤリティ」や「エンゲージメント」といったマーケティング用語では、社内に一貫した思いが伝わりにくい。そこで、カスタマーエンゲージメント本部として目指す姿を議論した結果、「ロイヤリティが高い状態=相思相愛」と定義しました。

 この大きな顧客戦略の中に、CRMが位置づけられています。CRMでは「多くの人にたくさん買っていただく」のではなく、「一人のお客様と継続的な関係性を築いていく」のが目指すところです。

2002年から始まった、ビームスのCRM構築の歩み

──CRMの構築は、1日にして成らずだと思います。ビームスのCRMの取り組みが、現在に至るまでの歩みを、山崎さんのご経歴とともに教えていただけますか?

 私は1996年に入社し、最初は店舗に配属されました。いくつかの店舗を経験した後、店舗を統括するエリア長を担当しました。

 2002年から「BEAMS CLUB」という会員組織が部分的に始まったのですが、当時はデータを活用したCRMという考え方がまだ浸透していませんでした。そこでCRMの導入を提案したところ本格的に取り組むことになり、以来CRMに向き合ってきました。

ビームスのCRM構築の歩み

2002年:BEAMS CLUB 会員組織開始(一部店舗)

2013年:CRM推進部 設立 データ分析・活用開始

2016年:MA・アプリ導入、 EC刷新

2021年:カスタマーエンゲージメント本部設立

2024年:会員プログラムリニューアル「行動マイル」導入

 2013年にCRM推進部が設立されるまでの11年間は、ポイントプログラムというよりはデータを活用しきれておらず、すべてのお客様に同様のサービスを提供していました。2013年からは、データを活用した顧客分析やメール・DMの配信を開始しました。特に2016年が大きな転換点でした。この1年間で、4つの大きなプロジェクトを断行しました。

● ECサイトのリニューアル
● MA(マーケティングオートメーション)の導入
● アプリの導入
● 会員システムのリプレイス

──1年に4つとは、想像を絶しますね。

 本当に大変でした(笑)。ですが、この年から大きく変化しました。それまではセグメント配信はしていても、多くのお客様に画一的な情報を届けるコミュニケーションが中心でした。しかし、テクノロジーの進化により、データを活用してお客様一人ひとりに合わせた情報を届ける「One to Oneコミュニケーション」が可能になりました。

 当初は3人でMAを動かしていましたが、少人数だったからこそ、思いをぶらさずにスピーディーに進められた面もあります。

 2021年には「カスタマーエンゲージメント本部」が設立され、CX(カスタマーエクスペリエンス)、つまり顧客体験をどう紡いでいくかという部門の責任者を務めました。そこでは、会員様の分析や体験の設計、そしてアプリ、メール、LINEといったプッシュ型メディアの運用を担当していました。

 そして現在は、2024年3月に新設された「マーケティング本部」の責任者を務めております。この本部は、従来の顧客コミュニケーションなどの部門が再編されたブランドエンゲージメント部と宣伝販促部、クリエイティブ部からなる約110名の組織です。

 そのうちのデジタルコミュニケーション課14名が、メール、アプリ、LINE、SNS運用といった顧客コミュニケーションを担い、顧客体験価値の向上をテーマに、チャレンジを続けています。

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メール許諾率15%向上、F2転換率も改善傾向に

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この記事の著者

尾倉 直弥(オグラ ナオヤ)

SaaS企業のマーケター。専門はBtoBマーケティング。複数メディアでライターとしても活動中。https://x.com/ogurin91

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/09/02 08:00 https://markezine.jp/article/detail/49542

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