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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Autumn

広告産業のパーパスを考える

AI時代に広告会社のクリエイターは何を担う? AI化できない部分の鍛え方、一番大事なスタンスの持ち方

誰も教えてくれない「オリエン設定」の重要性

藤平:田中さんの「スタンスが大事」というお話、非常に共感します。博報堂DYグループはグローバルパーパスの中で「Aspirations Unleashed(内なる想いを、解き放つ)」という言葉を掲げており、社内でも最近「Aspirations(内なる想い)」というワードを使う場が増えてきました。

 「なぜ/誰が担うか」が結果として重要になったAI全盛の時代だからこそ、内発的に働く矢印が拠り所として必要になっているのだと強く思います。自分の講座でも「姿勢」と題したコマが4時間あるのですが、それも似たような課題意識ゆえです。

田中:さらに言うと、自分のキャリアのスタンスも決められるといいと思います。僕は「クライアントのために!」と定めることで企画が伸びるタイプですが、そう思えない人に押し付ける気もなくて。

 大切なのは、スタッフが自分なりのスタンスを掲げられるよう、促すこと。「この仕事を代表作にする!」とか「カンヌで賞を獲ってスターになる!」とか、何でもいいんですよ、自分が燃えるための燃料なので。そういうドロドロした野心や、人としての好き嫌い、広告人としての矜持をAIに食わせて、多様化している手口と噛み合せていければこの先クリエイティブ業界が枯れることはないのではと思うわけです。

 AI時代だからこそ、自分のスタンスを問い直してみる。人間の泥臭い部分も含めて理想論・精神論を語ったほうが、業界が明るくなるのではないでしょうか。

 いちいち自分のスタンスに立ち戻ってオリエンに向き合うというのは、ある種僕なりのハックでもあります。その方がクライアントともいい関係が始まりやすいんですよね。

藤平:なるほど、「対自分のオリエン設定を欠かさない」ということですね。あくまでクライアントの事業成長がゴールなので、その妙が大事になりそうですが、動き出す前に自分と対話するスタンスは重要そうですし、そういった振る舞い方で教えられることはありそうです。

米村:そもそも、クリエイティブストラテジーは、ストラテジーとは言うものの、数学ではないですからね。絶対的な1つの正解があるわけではありませんし、何かしら自分の想いが反映されます。「このクライアントにはこうあってほしい」「このほうがクライアントが企業としてかっこよくなる」みたいな、自分の好き嫌いやスタンスもあったほうが、クライアントとの関係が長く続くというのは僕も同意見です。

クライアントに「責任を負う」というのはどういうことなのか

藤平:明確な自分のスタンスや好き嫌いを持てたとしても、それに即して意思決定を続けるのは難しいですよね。最近マーケティングの意思決定において、数字的な最適解やベストプラクティスに重心が置かれることが多いと感じています。「挑戦したい」「新しいことをしたい」というお題だったはずが、「前例」「過去実績」「シミュレーション」も必要になるというか。そうなると、自分やクライアントのスタンス、好き嫌いといった山っ気よりも「確からしい正解」が優先されてしまいます。

 ただ、「確からしい正解を即座に出す=AIのやることでは?」と、一周回ってクリエイティビティを大事にする流れもあるような気がしており。そうなると、スタンスを持った提案を貫くことが我々の責任という気もします。

田中:わかります。最近は、AIを使って速攻で企画する「A案」と、残りの時間で人間が粘りに粘って考え抜く「B案」の2案発想を徹底しています。広告に留まらず、ビジネスのあらゆるレイヤーで説得力を持ったアイデアが生まれやすくなるし、決裁者も決めやすくなるように感じていますね。

米村:クリエイティブジムで言うところの「A案とZ案」ですね。まっとうに考えた「A案」と、少し振り切って考えた「Z案」を出すという昔からあるアプローチです。

田中: AIが「面白くない正解」をすぐに出してくれるおかげで、「意表をつく別解」を探しに行く時間が生まれているのだと思います。つまりは、AIを使っても、全然仕事は楽になってないんですが(笑)。

藤平:先ほどの言葉を借りれば、そういう状況で個々人のスタンスが問われませんか? 外部から「提案する」という行為に対する責任や、広告代理店としてクライアントを「代理する」ことの責任もあるので、クライアントが選ぶ案が正解だからと、AIを使って色んな案を出すのもなんか違う気がしますし、一方でエゴ満載の「Z案」ばかりを提案し続けるのも、それはそれで無責任な気がします。

田中: そうですね、色んな案をありったけ提案して、クライアントに選ぶことを丸投げするのは、サービスではないですよね。ビジネスを成功させるアイデアに「絞る」のが、責任あるCDの仕事だと個人的には思います。絞らない=責任を取らないことにつながるとも思います 。結果が出なかった時に「御社が選んだ案なので」と開き直れてしまうので。

 クライアントのプロジェクトが失敗しても、広告代理店はフィーをいただきますし、給料もボーナスももらえます。広告産業は一般的に給与水準が高いと言われますから、クライアントより給料をもらっている場合だってあるわけです。そんな中、「クライアントのビジネスにコミットする」と言いながら、その人なりの覚悟を見せないのはずるい気がします。

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事業会社で進むインハウス化、1つに絞らないキャリアの在り方

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2025/08/29 09:00 https://markezine.jp/article/detail/49659

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