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森永乳業×東急ストアのID連携で実現へ!メーカーとリテールの枠を超えた、購買行動の可視化と効果検証

 多くの情報があふれる昨今、リテールメディアの活用など顧客との多様な接点作りの重要性はメーカー企業においても高まっている。一方で、デジタル施策がリアル店舗でどの程度の購入につなげられたかといった効果検証は難しく、購買行動の詳細な把握やコミュニケーション活用に課題を感じるマーケターも多い。そこで今回は、森永乳業・東急ストア・グローリーの3社が挑む、購買行動の可視化とコミュニケーション最適化に向けた取り組みについて聞いた。

プロモーション施策は本当に売り上げにつながっている?効果検証できない苦悩

MarkeZine編集部(以下、MZ):今回は、森永乳業東急ストアグローリーの3社による「データコネクティングサービス」を活用した取り組みについてうかがいます。まず取り組みの背景として、森永乳業が抱えていた課題を教えてください。

長谷川(森永乳業):メーカーとして大きく2つの課題がありました。1つは、小売店と顧客について同じ目線で会話をする必要がある点です。小売店は顧客との距離が近いことから、データを収集しやすくより詳細な分析が可能なため、私たちメーカーも顧客理解の精度を高める必要があると感じていました。もう1つは、自社が持つ顧客接点を有効活用できていない点。当社はECサイト、牛乳宅配、LINE公式アカウントなど複数の接点があるものの、同一顧客を統合的に把握できていませんでした。

 こうした課題に対して、顧客情報データベースを構築しLINEを活用したコミュニケーションを始めたものの、社内からは「本当に投資価値があるのか」「実際に購買につながっているのか」という声が常についてまわりました。リアル店舗での売り上げ効果をどう検証すべきか悩んでいたところ、Retail Media Summit 2024に参加した際にグローリーのデータコネクティングサービスを知りました。

 このサービスなら、当社の公式LINEアカウントでのコミュニケーションが実際の購買にどのようにつながったかを追跡できます。私たちが求めていたOne to Oneマーケティングの効果検証が可能になると考え導入に至りました。2025年7月より、実際に取り組みをスタートしています。

森永乳業株式会社 国内営業本部 営業企画部 戦略推進グループ マネージャー 長谷川亮輔氏 2004年に森永乳業に入社し、営業部門で小売店営業を経験した後、業績管理や販売施策の立案に従事。2020年に営業企画部に異動後は、営業・マーケティングDXの推進を担う。顧客情報データベースの構築やLINE公式アカウントの運用を手がける中「データコネクティングサービス」を導入し、取り組みの社内理解や促進、体制などの推進環境の整備を行っている。
森永乳業株式会社 国内営業本部 営業企画部 戦略推進グループ マネージャー 長谷川亮輔氏
2004年に森永乳業に入社し、営業部門で小売店営業を経験した後、業績管理や販売施策の立案に従事。2020年に営業企画部に異動後は、営業・マーケティングDXの推進を担う。顧客情報データベースの構築やLINE公式アカウントの運用を手がける中「データコネクティングサービス」を導入し、取り組みの社内理解や促進、体制などの推進環境の整備を行っている。

白坂(森永乳業):私も「効果の可視化」という点に強い課題感を持っていました。営業現場に長くいた経験から、商談時の苦労は本当に大きいと実感します。お客様に「この商品は本当に売れます」と伝えたくても、データという裏付けがないと説得力に欠けてしまいます。「こういった広告を打ちます」「SNSで配信します」といった施策の説明だけでなく、どれだけ売り上げに貢献するのか具体的な数値で示す必要がありました。

 社内でもっとデータを整備するべきだと感じていましたし、営業担当者が自信を持って提案できる効果を数値化した資料があればどんなに心強いか。そういう意味で、今回の取り組みはまさに現場が求めていたものだと感じています。

森永乳業株式会社 国内営業本部 営業企画部 戦略推進グループ アシスタントマネージャー 白坂 亜希子氏 2003年森永乳業に入社。複数の営業部門で現場経験を積み、2024年から営業企画部の戦略推進グループに所属。データコネクティングサービスにおいては、実務面の推進運用を担当する。社内連携の調整から、実際のデータ分析まで、施策の実行部分を担う。
森永乳業株式会社 国内営業本部 営業企画部 戦略推進グループ アシスタントマネージャー 白坂 亜希子氏
2003年森永乳業に入社。複数の営業部門で現場経験を積み、2024年から営業企画部の戦略推進グループに所属。データコネクティングサービスにおいては、実務面の推進運用を担当する。社内連携の調整から、実際のデータ分析まで、施策の実行部分を担う。

配信から店舗購入まで、購買ジャーニーの完全可視化を目指す

MZ:お取り組みの全体像を教えていただけますか。

山口(東急ストア):森永乳業の会員IDと東急ストアの会員IDを、データコネクティングサービスを介して連携させるものです。これにより、これまで断絶していたデジタルコミュニケーションと実店舗での購買行動を、一つのIDでつなげることが可能になりました。具体的には、LINEで新商品の情報を受け取ったお客様が、いつ、どの店舗で実際に購入したのか、という一連の行動を把握できるようになります。

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山口(東急ストア):この取り組みにおいて、東急ストアは単なるデータ提供者ではなく、顧客とメーカーをつなぐデータプラットフォーマーとしての役割も担っています。購買データの提供、顧客接点の実現、そして共創パートナーとして、お客様の体験価値向上に貢献する“翻訳者”の立ち位置と捉えています。

株式会社東急ストア MD企画部 マーケティング課長 山口 修平氏 1999年に東急ストアに入社し、情報システム部で約20年間システム開発や運用に携わる。2023年に営業部門に異動し、現在はMD企画部マーケティング課長として、リテールメディア戦略の一環であるデータコネクティングサービスの構築を推進する。
株式会社東急ストア MD企画部 マーケティング課長 山口 修平氏
1999年に東急ストアに入社し、情報システム部で約20年間システム開発や運用に携わる。2023年に営業部門に異動し、現在はMD企画部マーケティング課長として、リテールメディア戦略の一環であるデータコネクティングサービスの構築を推進する。

山口(東急ストア):メーカーにとっては施策効果を明確に検証でき、我々リテール側もLINEを起点とした送客効果を確認できる。さらに、配信後の購買動向をPOSデータで定量的に把握できるため、単なる販促を超えて、お客様がどのように商品と出会い店舗に足を運ぶのかというジャーニー全体を可視化できるようになりました。

プロモーション施策の効果検証から顧客解像度の向上まで

MZ:お取り組みの状況はいかがでしょう。

白坂(森永乳業):今年の7月からIDの連携キャンペーンを開始し、現在は東急ストアのレシート告知を通じて連携者を募っている段階です。森永乳業の商品購入者に限定せず、東急ストアを利用いただく幅広い層の方々に参加いただけるよう設計しました。9月末でID連携キャンペーンを終了し、10月から本格的な配信・検証フェーズに入る予定です。

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長谷川(森永乳業):検証では、LINE配信が実購買に与える影響を明確にするため、連携いただいたお客様を配信グループと非配信グループに分けて比較分析を行います。当社の商品も嗜好品から健康系まで幅広いので、複数回にわたって異なる商品での検証を実施し、より精度の高いデータを収集していく計画です。

MZ:今回の取り組みで、期待されていることは何でしょうか。

長谷川(森永乳業):最も期待しているのは、LINE配信によって実際の購買量が増加することです。ただ、自社商品だけが売れても長続きしませんので、小売店全体での売り上げ向上に貢献できることが重要だと考えます。

 将来的には、顧客の購買行動の変化を継続的に追跡することで、より深い分析が可能になります。いつ・どのようなきっかけで購買パターンが変化したのかなどメーカー視点で分析し、結果を東急ストアにもフィードバックすることで、双方に価値あるインサイトを共有できる関係を築いていければと考えています。

白坂(森永乳業):私も自社商品のデータだけでなく、東急ストアでの購買行動全体が見えることに期待しています。ID連携と分析によって、お客様が普段どのような商品を購入しているのか、どんなライフスタイルを持っているのかが可視化できます。「森永乳業の公式LINEアカウントの友だちは具体的にこういう方々である」と解像度を上げ、今後のマーケティング施策に活用していきたいです。

配信直後だけでなく「継続購買」まで追跡可能に!

MZ:データコネクティングサービスの特徴を教えてください。

片桐(グローリー):メーカーとリテールという異なる企業のデータをIDベースで連携する仕組みは、現時点で他にはないと認識しています。従来のサービスでは、たとえばLINE配信後の購買者数で瞬間的な効果は把握できても、その後も継続的に購買されているかは不明なままでした。

グローリー株式会社 国内カンパニー 営業本部 DXビジネス推進統括部 データビジネスデザイン部 部長 片桐 聡志氏 2021年グローリーに入社し、DX分野の新規事業開発や新サービス企画を担当する部門の部長を務める。前職では共通ポイント事業に長年携わっており、データ活用を追求してきた経験を活かし、データコネクティングサービスの企画からリリースまで手がけた。
グローリー株式会社 国内カンパニー 営業本部 DXビジネス推進統括部 データビジネスデザイン部 部長 片桐 聡志氏
2021年グローリーに入社し、DX分野の新規事業開発や新サービス企画を担当する部門の部長を務める。前職では共通ポイント事業に長年携わっており、データ活用を追求してきた経験を活かし、データコネクティングサービスの企画からリリースまで手がけた。

片桐(グローリー):データコネクティングサービスの最大の強みは、この「継続性」を追跡できる点にあります。具体的には、カテゴリー全体の購買金額と自社商品のシェアを基に顧客を分類し、施策前後でどのような変化が起きたかを継続的に分析します。

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片桐(グローリー):今回の取り組みについても、連携された会員の行動可視化の準備を進めた上で、仮説通りの効果が得られたのかを検証します。「お買い上げ金額は上がったけれど、カテゴリー内での森永乳業製品のシェアは上がらなかった」のか「お買い上げ金額も上がって、シェアも上がった」のかなど、会員ベースで継続的に追いかけていく形です。

メーカーは精度の高い提案を、リテールは顧客の体験向上を実現

MZ:このデータ連携について、どのような意義があるとお考えですか。

長谷川(森永乳業):冒頭でも述べた通り、メーカーにとってリアル店舗での購買行動を把握することは本当に難しい課題でした。今回のデータ連携でそれが可能になる意義は計り知れません。

 従来からPOSデータは提供いただいていましたが、ID連携によってその価値がさらに高まることでしょう。顧客一人ひとりの購買パターンを追跡できることで、より精度の高い提案が可能になるとともに、得られた知見を営業活動に活かすことで商談の質も大きく向上すると期待しています。

山口(東急ストア):リテール側から見たデータ連携の意義は、大きく3つあると考えています。まず、来店・購買機会の拡大。メーカーの公式LINEアカウントには熱心なファンが集まっており、その方々を店舗に送客してもらうことで、新規顧客の獲得や特定商品の販売促進につながります。

 次に、購買データに基づく深い顧客理解です。メーカーのファンがどのような商品を併買しているか、どの店舗を利用しているかがわかることで、棚割りやクロスマーチャンダイジングなど効果的な売り場作りに活かせます。

 そして最も重要なのが、顧客体験価値の向上です。お客様の購買行動や興味に合った情報をタイムリーに配信することで、店舗でのスムーズな購買体験を実現できます。情報過多の時代に、本当に必要な情報を適切にお届けできることが、この仕組みの最大の価値だと感じています。

データコネクティングサービスが切り開く、さらなるアプローチ

MZ:最後に、今後の展望をお聞かせください。

長谷川(森永乳業):3つの点を考えています。1つ目は、小売店とメーカーがそれぞれ持つオウンドメディアから双方向でアプローチできるようになる点です。幅広い顧客層にリーチできる小売店のメディアと、コアファンを持つメーカーのメディアが連携することで、大きな相乗効果が生まれると期待しています。

 2つ目は、施策効果が明確に可視化されることで、従来の広告やプロモーションのあり方が大きく変わる可能性です。だからこそ早い段階から検証を重ね、知見を蓄積していくことが重要です。今回のデータコネクティングサービスの導入・活用は、当社のデータ活用における代表的な取り組みとして位置づけています。

 最後に、このサービスによってメーカー単独では接点を持てない顧客層にもアプローチできる点です。顧客の併買データを活用することで、売り場提案や品揃え提案など、より踏み込んだメーカーからの営業活動も可能になります。お客様の体験向上に貢献できる提案を行っていきたいですね。

山口(東急ストア):今回の取り組みはまだスタート段階ですが、将来的にはもっと大きな可能性があると見ています。まず、購買履歴や来店頻度に基づいたセグメント別の最適なコミュニケーションを実現したいです。複数のメーカーが参画することで、合同キャンペーンなど新しい仕掛けができる可能性も感じます。

 さらに、当社が推進しているリテールメディア戦略との統合も視野に入れています。店内サイネージなどの既存メディアと今回のようなデータ連携施策を組み合わせ、店舗・LINE・アプリなど複数のチャネルを横断した一気通貫の戦略が実現できるのではないでしょうか。お客様との接点をシームレスにつなげることで、より価値の高い購買体験を提供できると考えます。

片桐(グローリー):当社としてはデータコネクティングサービスを通じて、今後様々な新しい発見を生み出していきたいと考えています。

 まず、参画企業の拡大として、ドラッグストアなど参画いただくリテールを増やしていきます。たとえば、東急ストアの会員がドラッグストアでどのような買い物をしているか、逆にドラッグストアの会員が東急ストアでどう購買しているか可視化することで、顧客理解をより深められます。

 メーカー同士の連携も促進していきたいです。それぞれ異なる課題をお持ちかもしれませんが、情報交換することで「その施策は自社も試した」といった知見の共有が生まれ、課題解決のスピードも上がるでしょう。

 また、グローリーとしてはハードウェアメーカーを多くご支援する一方で、エンドユーザーとの直接的な接点は実はまだ強くありません。一方、駅のコインロッカーのような消費者との直接的な接点がある、高いシェアを持つハードウェアも存在します。こうした接点とデータを融合させることで、さらなるマーケティングの価値創造を目指していきたいです。

リテールメディアサミット2025登壇のお知らせ

グローリー株式会社は「リテールメディアサミット2025」に登壇いたします。
今回のセッションでは、当社が提供する新サービス「データコネクティングサービス」をテーマに、リテールとメーカーが真の共創を実現するためのデータ連携の可能性について、実例を交えてご紹介します。

  • 登壇日時:10月9日(木)11:15~11:30
  • 会場:ベルサール新宿グランド

リテールメディアサミット公式サイトよりお申し込みください。

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この記事の著者

太田 祐一(オオタ ユウイチ)

 日本大学芸術学部放送学科を中退後、脚本家を目指すも挫折。その後、住宅関係、金属関係の業界紙での新聞記者を経て、コロナ禍の2020年にフリーライターとして独立。現在は、IT関係を中心に様々な媒体で取材・記事執筆活動を行っています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:グローリー株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/09/29 11:30 https://markezine.jp/article/detail/49812