価格高騰が影響。ネットチャネルとリアルチャネルの現状
ネットチャネルとリアルチャネルの現状についても、大きな変化が見られている。2000年頃、インターネットショッピングは5%ほどの人しか利用したことがなかったが、現在は15歳から69歳まで72%が年一回以上利用するまでに一般化している。利用回数も、特に若い世代で増加している。
従来のインターネットショッピングは比較検討を重ねて購入する特別なイベントであったが、現在の若い世代は少額商品を気軽に購入する傾向にある。心理的障壁も下がり、半分以上の人がネットだけで購入を完結させるように。年収が高い人ほど、インターネットを中心に買い物をする傾向も見られる。
他方、リアルチャネルは価格高騰の影響を受けている。コロナ禍後の回復では食品スーパーは戻ったものの、コンビニは価格高騰の影響で回復していない。
百貨店・デパートと総合ショッピングセンターでも差が生じている。ショッピングセンターは回復傾向にあるものの、百貨店・デパートは価格高騰の影響で国内一般顧客が戻らず、現在はインバウンドや富裕層が支えている状況である。
CtoC情報との向き合い方は?変わる情報収集とAIの台頭
情報収集においては、テレビ離れが進行している。若い世代に限った話ではない。2024年には60代で初めて「平日1日あたりのテレビを見ている時間」の数値が大きく下がった。コロナ禍でオンライン化が進んだことが考えられる。
「CM接触回数あたりの認知割合が減少傾向にあることも、データから確認されています。視聴者がテレビを見ていても注視していない、いわゆる“ながら視聴”が増加しており、CMがBGMのような背景的存在になりつつあることがわかるでしょう」(松下氏)
対照的に、インターネット利用時間は若い世代で大幅に増加している。10代や20代では仕事での利用を除いても一日5時間以上インターネットを利用しており、2021年にかけて中高年層も大きく伸びている。
情報収集も伝統メディアからネットへとシフトしており、特にインターネット上の売れ筋情報やユーザーレビュー、ブログ、SNSの評価など、CtoC情報を参照する割合が増加している。ただし日本人は他者の情報を参考にする一方で、自分からの情報発信は少ない傾向も見られる。2023年から2024年の全世界20都市での消費価値観調査では、日本人の流行感度の低さと口コミ発信力の低さが際立っていた。
AIを活用した消費への抵抗感について、興味深い傾向も松下氏は紹介した。「AIと会話しながら買い物することに抵抗はないか」という問いに対して、抵抗がないと考える人の割合を世代別に見ると、上の世代では低く、若い世代で高い傾向があるのだ。
