SNSインパクトは「ポジティブ」にも「ネガティブ」にも作用する
では、SNSの“声”が企業に与えるインパクトとは、具体的にどのようなものなのか。田中氏は、SNSの「ポジティブな影響」と「ネガティブな影響」について解説した。
まずは、SNSが事業にもたらすポジティブな影響について。わかりやすいのは「SNS上でバズ」が起きた時のインパクトで、バズの発生により商品の短期売上が増加したり、好意的なUGCの蓄積からエンゲージメントの向上に繋がったりする。他にも、SNSの属性データをもとに、消費者の声を分析することで、新規ペルソナや潜在的なニーズの開拓も可能になるだろう。

一方、SNS上の声はネガティブな影響をもたらす場合もある。たとえば、SNS上で炎上が起きてしまうと、来店や予約のキャンセルによる売り上げ機会損失、広告出稿停止やカスタマーサポート・法務などの臨時コストによる収益圧迫といった影響が発生してくる。加えて、誤情報が出回るリスクも大きい。
田中氏は、こうした両義的なSNSインパクトをビジネスインパクトへと変換するために、4つのステップからなる「仕組み」を導入するとよいと話す。ポジティブとネガティブ、どちらのインパクトに対しても同じ仕組みで対応できるという。
SNSデータの利活用が進展する4つのステップ
SNSデータの利活用について、田中氏は「集める」「揃える」「解く」「AI活用」の4ステップを紹介した。

ステップ1:集める
最初の「集める」ステップでは、ブランドや商品に関する投稿をすべて収集することが重要となる。自社に関するSNS上の声を収集する際、「XやInstagramで商品名を検索している」人も多いかもしれない。だが、この方法では情報収集に偏りが出てきてしまうと田中氏は指摘する。
「XやInstagramで自社名や商品名を検索している企業も多いのですが、これは危険です。SNSの最適化アルゴリズムによって、見たくない情報やあまり検索されない内容は遮断されてしまうため、実はその方法ではすべての情報を捉えられていません。結果、得られる情報が偏ってしまいます」(田中氏)
だからこそ、Meltwaterのような外部データ提供企業を通して、データを全量で収集することが大事になってくるのだ。
ステップ2:揃える
次に「揃える」ステップでは、客観的にデータを分析するための“共通言語”を構築する。SNSには指標となりうる様々な数値があるが、その意味や重みを決めることが必要だという。たとえば、「エンゲージ」とひとくくりにされる指標も、「いいね」と「引用リツイート」ではその重みが大きく異なる。各指標の意味付けを統一し、KPIを設計しておくことで、SNSデータをもとにした判断・意思決定ができるようになる。

ステップ3:解く
3つ目の「解く」ステップでは、収集した情報を分析する際の“型“を見つけていく。
たとえば、UGCの実態を掴むためには、その商品に関して単発で投稿されているのか、長期にわたって何回も投稿されているのか分析することが有効だ。他にも、インフルエンサーによる投稿でとどまっているのか、インフルエンサーによる投稿から一般の消費者による投稿まで広がっているのかを可視化するなど、把握したいことに対して必要な「分析の型」を作ると、傾向を読み解きやすくなる。またこれらが、分析レポートやダッシュボードの型にもなってくる。
ステップ4:語る(AI活用)
最後のステップはAI活用だ。分析結果の背景、要は「なぜ?」を抽出するためには、SNS投稿を一つひとつチェックし、投稿されている画像や文章の内容、方向性、スタンスなどを見ていかなければならない。ただ、それをすべて人力で行うのは非現実的だろう。
現在のAI技術を使えば、投稿内容やテーマの抽出、スタンス・論点(賛否/要望/不満)の分類などを自動で仕組化できる。さらに、AIが抽出した内容を関係者へ一斉送信するところまで仕組化すると、意思決定およびアクションがよりスピーディーになる。