CRMの“宿命”をどう乗り越える?
──理想的な体制でマーケティングを推進されているようにお見受けしますが、苦労されていることはありますか?
鈴木:CRMの宿命と言えるかもしれませんが、顧客エンゲージメントの向上は売上や収益への貢献度を可視化しにくいため、経営層や他部署のメンバーにMAツールおよびCRMの意義を理解してもらう活動には、より一層力を入れなければなりません。
鈴木:「CRMに取り組むべき」という共通理解はあるのですが「それによって売上が●%上がりました」という単純な話ではないため、投資対効果の証明にチャレンジの余地を感じています。
髙松:ただ、6月に公開した当社のIR資料では、長期ビジョンの中に「自分のためだけのサンリオ情報が届くようになる」という文言が明記されていました。安定的な収益基盤の構築を目指すにあたり、CRMの果たすべき役割と期待の大きさを感じています。
部門間連携の一手は「データのリッチ化」
──最後に、御社の展望をお聞かせください。
髙松:キャラクターを活用したコミュニケーションを強化したいです。自身の好きなキャラクターの情報に接する時間は、まさにサンリオ時間だと思います。その時間を増やすためには、キャラクター別の1to1コミュニケーションが必要です。
鈴木:CX推進課のミッションは顧客エンゲージメントの強化です。それによるLTVの最大化がゴールなため、ミッションとゴールに即したBrazeの運用を今後も進めます。CRMの費用対効果を説明するためのロジック構築も引き続き課題ではありますが、1to1コミュニケーションによってお客様の体験が心地良くなるのは間違いありませんから、信じて推進したいです。
田口:当社は事業領域を拡大し、新しい顧客接点を増やしていく計画です。数年前に立ち上がった「エデュテイメント事業」をはじめ、ゲーム事業やメタバース事業にもチャレンジしています。ファンの皆さまが自分の好きなサンリオキャラクターを通じてサンリオの様々なサービスに触れ、体験することができる。Sanrio+がその入り口になれると良いと思っています。
それを実現するためにも、事業/部署の垣根を超えた連携と一貫した顧客コミュニケーションのシナリオ作りは不可欠です。組織を横断しながら顧客体験をシームレスにつなげる取り組みのため、今まで以上にBrazeを活用しながら取り組んでいきたいです。
髙松:たとえば「このお客様にはお子様がいらっしゃる」「このお客様はゲームが好き」などのデータは、他の事業部にも価値を感じてもらいやすいと思います。データをリッチにし、Sanrio+という会員基盤を様々な事業で活用できるような体制づくりが重要だと考えています。

