インターネット登場以来の大変革期到来
──AIの進化および浸透は、生活者の購買行動や企業の活動にどのような影響を及ぼしていますか?
加藤:情報検索や購買行動など、あらゆる場面でAIが浸透しつつあります。特にAIエージェントの登場によって、インターネット登場時と同規模の変革が起きると言えるでしょう。
2001年にアイ・エム・ジェイ(IMJ)へ入社。取締役副社長COOを経て、2018年にアクセンチュアへ入社。約20年間、一貫してデジタル変革やデジタル領域におけるデータ活用、マーケティング戦略&実行支援、などに関わる。現在はAccenture Songのセールス日本統括、M&A・アライアンス推進などに従事
加藤:生活者の観点では、無駄な作業から解放され、本来やりたかったことや余暇に多くの時間を使えるようになります。AI脅威論も存在しますが、このような変化は不可逆的な流れであり、働き方や人とAIの関係性が根本的に変わっていく中で、より豊かな社会が築かれると考えます。
企業の観点では、既存の業務やビジネスを基にAIエージェントを加えるという発想ではなく、AIエージェントを前提として業務やビジネスそのものを根本から変えていく必要があります。つまり、個別の業務改善ではなく、経営アジェンダとして全社的に取り組むべきだと強く感じています。
──最近はマーケティングと経営の距離が近くなりつつある印象です。お二人の目から見ても、マーケティングが企業の中で担う役割や存在感は大きくなっていますか?
水谷:マーケティングの役割や存在感は確かに大きくなっていると思います。ただ、海外のお客様と話をすると、CMOの地位は日本企業のそれよりも高く、顧客接点を築く力や「顧客とどうコミュニケーションしていくか」を考える力も強いと感じます。
2000年、電通とGEのジョイント企業であるISID(現:電通総研)に入社。2012年、仏国IT企業のダッソーシステムズにて、自動車事業の責任者を務める。2018年よりSAPジャパンにてバイスプレジデントおよびChief Sustainability Officerを務めた。2024年4月にBrazeの日本法人代表に就任
加藤:日本ではマーケティングという概念が矮小化されている印象を受けます。未だに商品やサービスの「プロモーション」の範囲を超えないケースもあると思っています。
顧客接点力が自社の競争優位になる
水谷:マーケティングは会社をトランスフォーメーションするための鍵です。日本でも企業全体でマーケティング、より具体的に言えば顧客接点力の強化を経営アジェンダとして捉える必要があります。顧客接点力の強化に注力している日本企業が海外ほど多くないからこそ、追求することで自社の競争優位性にできるはずです。
加藤:顧客接点という意味では、マーケティングもセールスもコマースもカスタマーサポートも、すべて連携して考えるべきです。その基盤にあるのがデータやAIであり、これらを活用することで、真の意味での顧客接点強化が今後進んでいくのではないかと思います。
日本には昔からおもてなしの文化が根付いていますよね。サザエさんに出てくる三河屋さんのように、顧客のことをよく理解した上で適切なサービス・商品を適切なタイミングでお届けすることは、ずっとやってきたと思います。つまり、日本企業には顧客接点強化や1to1コミュニケーションを実行する素地が十分あるということです。

