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広告を“邪魔者”から“体験”へ。サッポロビール×DAZNが拓く「Fandomマーケティング」の新境地

 情報過多の現代において、広告は“邪魔者”と見なされがちだ。どうすればブランドはメッセージをポジティブに届けられるのか。その答えの一つが、ファンコミュニティの熱量を活かす「Fandom(ファンダム)」マーケティングにある。ファンの“没入”に寄り添い、広告を“体験”の一部へと昇華させる――。この先進的なアプローチを、DAZNのグループ観戦機能「FanZone」で実現したサッポロビール。両社のキーパーソンに、施策の全貌と成果を語ってもらった。

なぜ今、マーケターは「Fandom」に注目すべきなのか?

MarkeZine編集部(以下、MZ):サッポロビールでは「黒ラベル」においてDAZNとともに、「スポーツファンの熱量」を活かした施策を展開したそうですが、その狙いを教えてください。

黒柳(サッポロビール):近年の飲酒離れによるビール市場の縮小は大きな課題です。既存施策の延長だけでは対応できないため、サッポロビール全体で「ビールに関心のある人」を増やすことを重視しています。そのためには、関心が薄い方との新しいタッチポイントを作り、関心層へ引き上げる必要があります。

 そこで鍵になるのが「体験」です。これまでも音楽フェスへの出店などを通じ、熱量の高い場でポジティブな感情とブランドを結びつける接点を創出してきました。今回のDAZNとの施策もそうしたファンの熱量に着目したものです。

サッポロビール株式会社 マーケティング本部 ビール&RTD事業部 サッポロブランドグループ 黒柳真莉子氏
サッポロビール株式会社 マーケティング本部 ビール&RTD事業部 サッポロブランドグループ 黒柳真莉子氏

MZ:その「熱量」に関連して、今「Fandom(ファンダム)」という言葉が注目されています。DAZNは「Fandom」をプラットフォームの価値に位置付けているとのことですが、これはどのような概念なのでしょうか?

酒井(DAZN):受動的に情報を受け取ることが多い時代だからこそ、今、“何かに夢中で没入する空間”の価値が見直されています。スポーツで言えば、ゴールの瞬間に知らない人とハイタッチして喜びを共有するような、“感情がピークに達する瞬間”が連続するシーンです。私たちは、そうした熱狂の瞬間をいまかいまかと没入している特別な空間を「Fandom」と捉えています。

DAZN Japan Investment合同会社 エージェンシーリード 酒井琢磨氏
DAZN Japan Investment合同会社 エージェンシーリード 酒井琢磨氏

MZ:Fandomがマーケティングにもたらす価値とはなんでしょう。

酒井(DAZN):まさに“感情のピーク”に寄り添える点です。ブランドがFandomの空気感に自然に馴染むことで、コミュニティの一員のように受け入れられ、メッセージが記憶に深く根付きます。「サッカーのときは黒ラベル」という意識が芽生えたり、ソーシャル上にブランドのことを自発的に投稿してくれるような、ファンがアンバサダーになることもFandomの特徴です。

リアルに次ぐ“第2のスタジアム”「FanZone」の強み

MZ:DAZNでは、Fandomをオンラインで創出するグループ観戦機能「FanZone」を実装していますが、どのような機能なのでしょうか。

酒井(DAZN):FanZoneは2024年4月にスタートした機能で、我々は“リアルに次ぐ第2のスタジアム”であると捉えています。DAZNで試合を観戦しながらリアルタイムでのチャットに加え、投票やクイズ、スタンプなどでファン同士が交流をしながら観戦を盛り上げる、能動的な仕掛けが多数あります。

 参加者はコアなファンが中心で、良い意味で“ギーク”な熱量の高いコミュニティです。協賛ブランドに対しても「この試合に協賛してくれてありがとう!」「ハーフタイム中に黒ラベルを買ってきました!」といった、ポジティブなコメントが自然発生しやすいのも特長です。

MZ:サッポロビールでは、どのようなことを期待して「FanZone」の活用を選択されたのでしょうか?

堀内(サッポロビール):情報過多の現代では、広告を“ポジティブに、記憶に残る形”で届ける難易度が上がっています。一方、FanZoneは私たちブランドとファンコミュニティの“密な接着点”を提供してくれます。感情が高ぶるスポーツの場では、コミュニケーションが「体験の一部」として受け取られやすく、私たちのメッセージが前向きに届くチャンスが広がります。この設計に大きな魅力を感じました。

サッポロビール株式会社 マーケティング本部 ビール&RTD事業部 メディア統括グループ リーダー 堀内也実氏
サッポロビール株式会社 マーケティング本部 ビール&RTD事業部 メディア統括グループ リーダー 堀内也実氏

堀内(サッポロビール):とはいえ、広告認知の先の行動変容にどこまで寄与するかは未知数でした。そこで今回はトライアルとして、まずその手応えを確かめたかったのです。また、あえて「スポーツ文脈以外のクリエイティブ」でポジティブな反応を得られるかを検証する狙いもありました。もし良い成果が出れば、今後の選択肢が一気に広がると考えました。

広告を“体験の延長”に。サッポロビールが実践したクリエイティブ戦略

MZ:具体的な施策内容を教えてください。

堀内(サッポロビール):アーティストの書き下ろし楽曲を起用した新CMと、連動した限定デザイン缶のローンチに合わせ、Jリーグの1試合でDAZNの「FanZone」を活用したプロモーションを実施しました。具体的には、CMと同じクリエイティブを配信したほか、試合の盛り上がりに合わせたモーメント連動型の広告や、投票機能を使ったインタラクティブな施策などを展開しました。

MZ:ゴールの瞬間に“乾杯”を促すようなクリエイティブもあったそうですね。複数パターンを用意していたのでしょうか。

堀内(サッポロビール):はい。FanZoneの良さは、感情が盛り上がる瞬間に自然なブランド接点を持てることだと考え、ハイライトに同期したクリエイティブを複数用意しました。ゴールや好プレーといった熱量が最高潮に達する瞬間に寄り添うことで、コミュニケーションが“押しつけ”ではなく“体験の延長”として受け取られることを狙いました。

ゴールの瞬間に合わせた「乾杯」クリエイティブ(クリックで再生)

MZ:施策を実施するにあたり、特に意識・工夫された点についても教えてください。

堀内(サッポロビール):今回の施策では、体験を重視し、楽しい観戦体験の横に黒ラベルがそっと寄り添う設計を重視しました。たとえばFanZoneの投票機能ではブランド色を出し過ぎないことを意識し、「黒ラベルのイメージは?」といった直接的な問いではなく、「ついビールに手が伸びる瞬間は?」のように、観戦を楽しみながら思わず参加したくなる設問を心がけました。

ファンの心を動かす体験の裏側。DAZNが「感情のピーク」を作る仕組み

MZ:FanZone施策において、DAZNのクライアントサポートの体制やメニューについて教えてください。

酒井(DAZN):技術面では、イスラエル拠点のDAZN Xという開発チームが各地域のニーズに応じたFanZoneの開発にコミットしています。ブランドやユーザーのニーズを素早く取り込み、機能を最速で進化させられる体制がDAZNの大きな強みです。

 サービス面は大きく2つあります。1つ目は、グローバル事例の即時共有で、海外で生まれた成功事例をすぐに日本へ展開できます。現在グローバルでは「Daily Challenges」というクイズ機能が実装済みで、ユーザーが毎日DAZNを訪れた際にブランドと楽しく接点を持てる仕組みが動き始めています。こうした新機能が日本でも続々登場予定で、ブランドとファンが継続的に触れ合える接点を広げていきます。

 2つ目は、シナリオの設計支援です。視聴者の感情の動きに寄り添い、ブランドのKPI達成に繋げるシナリオを事前にご提案します。たとえば「このタイミングでは投票」「ブランド色をもう少し薄めたほうが参加しやすい」といった演出を設計して実装まで並走します。

 サッカーでいえば、ゴールの瞬間はもちろんですが、判定が揺れるVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の場面なども感情がピークに達しやすい瞬間です。そこに合わせた表現を用意することで、体験が記憶に残りやすくなります。ライブ中継の最中に自在な表現ができる点は希少な価値だと考えています。

好感度・購入意向が20pt超リフト。数字で見るFanZoneの効果

MZ:今回の施策の成果を定量・定性の両面で教えてください。

堀内(サッポロビール):調査の結果、数字として明確な成果が出たことが大きな収穫でした。「サッポロ生ビール黒ラベル」への好感度は、FanZone参加者が非接触者に比べて20pt以上高く、さらに「購入したい」という意向も同じく20pt以上上回るなど、明確なリフトが見られました。広告の“認知の先”にある態度変容に寄与できる、という手応えを確認できました。評価指標でも、通常枠の接触者に比べてFanZone接触者の広告認知が高いという結果でした。

黒柳(サッポロビール):今回の成果で得られた最大の学びは、必ずしもクリエイティブが“スポーツ直結”でなくとも、深いコミュニケーションは可能だということです。スポーツ文脈に依らない素材でも、感情のピークに寄り添う設計さえ整えば、ポジティブなブランド体験として受け止めてもらえる。これはDAZNの大きな可能性であり、我々の次の挑戦に向けた大きな示唆だと考えています。

MZ:今回の成果について、DAZNというプラットフォームのどんな特性によってもたらされたとお考えですか。

酒井(DAZN):ポイントは没入(イマーシブ)で、視聴者の感情がピークに達した瞬間に、最適なメッセージを重ねられたことが行動変容を押し上げたと見ています。一般的な「一方通行の広告」ではなく、広告が観戦体験の一部に昇華され、ユーザーにコンテンツとして受け取ってもらえた点が大きかったと思います。

画像を説明するテキストなくても可

「好き」を起点に、体験価値の拡張へ

MZ:サッポロビールの堀内さん、黒柳さんに伺いますが、今回の結果を踏まえ、DAZNで挑戦したいことや今後の期待、さらに黒ラベルとして目指す姿を教えてください。

堀内(サッポロビール):今回の取り組みで、スポーツは人の気持ちを動かし、注目(アテンション)を促す力が強いと実感しました。今後は「ファンとブランドを近づける体験設計」というDAZNならではの魅力がさらに磨かれていくことに期待しています。DAZNは「次は何ができる?」と共創を加速させるワクワクがあり、その瞬間を一緒に作るパートナーであり続けてほしいです。

黒柳(サッポロビール):私たちが目指すのは、ブランドを通じて“ビールへの関心”そのものを増やすこと。ビールは嗜好品だからこそ、ポジティブな気持ちで選んでいただくことが大切です。スポーツと同じく、“好き”や“その人らしさ”に触れる体験を広げ、日常に小さな彩りを加えたい。リアルな飲用体験は今後も継続しますが、そこにとどまらず、体験の拡張に挑んでいきたいと考えています。今回の取り組みは、その大きな一歩目となりました。

MZ:最後に酒井さんに、DAZNとしての展望をお願いします。

酒井(DAZN):私たちが目指すのは、視聴者の方に「この広告、自分たちのことをわかってるじゃん!」と感じていただく体験です。それには感情の琴線に触れるクリエイティブを、視聴者の気持ちに寄り添って届けることが必要です。今回、FanZoneでサッポロビールの皆さまとその体験づくりに挑戦できたことは貴重な機会となりました。

 現在DAZNでは、スポーツと密接に結びつく感情を起点にした新プロダクト開発に着手しています。視聴者の感情により寄り添う広告体験を実装することで、スポーツマーケティングの価値をブランドの成果に還元していきます。これからも、ブランドとファンをつなぐ共創体験を皆さまと一緒に生み出していきたいと思います。

熱狂的なスポーツファンと深くコネクトしたい広告主様へ

 DAZNには日々、様々なライブスポーツを楽しむ熱量が高いスポーツファンがユーザーとして多く存在します。視聴者同士が熱狂を共有し、リアルタイムで交流できるFanZoneなどを通じて、コンテンツ視聴を深い共感と参加の体験へシフトさせています。本記事でDAZNのユーザーやサービス特長、広告商品などにご興味を持たれた方は、DAZN広告公式サイトへお問い合わせください。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:DAZN Japan合同会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/10/16 10:00 https://markezine.jp/article/detail/49902