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CVR286%を実現!認知で終わらず獲得までつなげたNTTドコモ ahamoの「スマホ不安超常現象」

 ブランドの認知拡大は非常に重要である一方、「認知は向上しているのに、売り上げや購入・契約数は伸び悩んでいる」という課題に直面する企業もいるだろう。NTTドコモのモバイルサービス「ahamo」ではこの課題に対応すべく、電通デジタルとともに「スマホ不安超常現象」と題したユニークなミドルファネル向けキャンペーンを実施。主たるターゲットであるZ世代の共感を呼ぶクリエイティブによりニーズや悩みを顕在化し、獲得効率の大幅アップに成功した。本記事では具体的な施策内容と成果ポイント、そして戦略のカギとなった「ブランデッドダイレクト」について、両社に聞いた。

名前は知られているのに選ばれない……「ahamo」が直面した停滞期

MarkeZine編集部(以下、MZ):今回は、NTTドコモ電通デジタルが展開した「ahamo」のお取り組みについてうかがっていきます。まず、実施背景や課題感を教えてください。

高嶋:ahamoは、2021年3月に提供を開始したZ世代向けのモバイルサービスです。新社会人の方を主なターゲットとして、シンプルでわかりやすい価格設計で展開しています。

 取り組みの検討を始めたのは2023年頃です。当時はahamoのリリースから約2年半が経過したタイミングとなり、リリース初期に比べると検索ボリュームやサイト訪問数、獲得効率が落ちている状況でした。他社が同様の価格帯のプランを次々と展開していたことなども影響し、契約者数の伸びも鈍化していました。

株式会社NTTドコモ コンシューマサービスカンパニー マーケティング推進部 コンシューママーケティング推進室 モバイルマーケティング担当 高嶋紘基氏マーケティング推進部モバイルマーケティング担当として、「ahamo」「ドコモMAX」「ドコモmini」などの契約者拡大に向けた販売促進を担当。

株式会社NTTドコモ コンシューマサービスカンパニー マーケティング推進部 コンシューママーケティング推進室
モバイルマーケティング担当 高嶋紘基氏

マーケティング推進部モバイルマーケティング担当として、「ahamo」「ドコモ MAX」「ドコモ mini」などの契約者拡大に向けた販売促進を担当する。

高嶋:特に「ahamoという名前は知っているけれど、自分に合うプランなのかわからない」というユーザーの声も多く、顕在層だけでなく潜在層へのアプローチが重要だと感じていました。そこで、顕在層向けの施策は継続しつつ、興味・関心を喚起するミドルファネル施策へ着手したいと考え、電通デジタル社に相談しました。

“認知と獲得の乖離”をつなぐ「ブランデッドダイレクト」な戦略とは

MZ:課題を解消するために、どのように施策を設計されたのでしょうか。

河上:ブランドネームの認知が高い一方で、契約意向が顕在化していないことが獲得に結びついていない理由なのではないかと予想しました。そこで、認知と獲得の間に生じていたコミュニケーションの乖離をなくし、ahamoへの興味喚起を図ることに。その上で、顕在予備軍の母数を増やせば、獲得効率が上がると仮説を立てました。

 そのためには、ターゲットのエンゲージメントを高め、モチベーションを上げることが重要です。広告接触からCVまでの体験をより豊かに、そして効率的に設計する「ブランデッドダイレクト」という手法が有効だと考えました。

 具体的には、動画クリエイティブで興味を喚起し、LPで顕在層のパイを広げる構成です。継続的に接点を持つためにLINE友だち追加をKPIに設定し、中長期的な獲得効率の向上を狙ったコミュニケーションプランとして設計しました。

株式会社電通デジタル アドバンストクリエイティブセンター ブランデッドダイレクトクリエイティブ第2事業部 河上奈央氏クリエイティブに加え、プラットフォームやデータテクノロジーを活用しながら、クライアントの事業成果と収益最大化を支援する組織「アドバンストクリエーティブセンター(ACRC)」に所属。クリエイティブディレクターとして、認知領域を軸にフルファネルやアクティベーション施策を設計し、クライアントのビジネス課題の解決に取り組む。

株式会社電通デジタル アドバンストクリエイティブセンター
ブランデッドダイレクトクリエイティブ第2事業部 河上奈央氏

クリエイティブに加え、プラットフォームやデータテクノロジーを活用しながらクライアントの事業成果と収益最大化を支援する組織「アドバンストクリエイティブセンター(ACRC)」に所属。クリエイティブディレクターとして認知領域を軸にフルファネルやアクティベーション施策を設計し、クライアントのビジネス課題解決に取り組む。

MZ:ブランデッドダイレクトについて、詳しく教えてください。

河上:当社が提唱している、ブランディングとダイレクトマーケティングを掛け合わせた考え方です。まず、「獲得」「認知」といった分離しがちな施策を一つのカスタマージャーニーとして捉えます。広告接触の段階からターゲットのモチベーションを上げ、エンゲージメントを築き、その結果として、最終的に購買意向が高まる状態を作ります。

河上:ブランデッドダイレクトを実現する具体的な手段は様々ですが、今回はZ世代がahamoのターゲットだったため、親和性の高い縦型動画からLPへつなぐ流れを採用しました。

「昭和レトロ×オカルト」でZ世代の心をつかむ!

MZ:具体的な取り組み内容をお教えください。

河上:初年度の第1弾では、まずチャレンジ的に取り組みました。「ahamoの名前は知っているが、どんな価値があるのかまでは伝わっていない」という課題を前提に、ブランデッドダイレクトの考え方を取り入れた動画を制作。“バカップルの会話”をモチーフに、スマホのわからないポイントをコミカルに描き、「それはahamoで解決できるよ」という流れでLPへ導く構成にしました。結果、主要KPIは約700%を達成するなど、大きな成果が得られました。

 今回詳しくお話しする施策は、第2弾として取り組んだものです。クリエイティブ設計にあたり、3つのポイントを意識しました。

 まず1つ目は、ネクストアクションにつなげる設計です。主張とレスポンスを両立させる電通デジタル独自の動画フレームワーク「A!MAC(アイマック:Attention・Interest・Merit&Motivation・Action)」を活用し、短尺動画でLPへ遷移させる構成を組みました。

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河上:ターゲットのインサイトを捉えるため、調査データやワークショップ、AIリスニングを実施し、“スマホ不満”を感じる4つのシチュエーションと悩みを抽出しました。その課題をahamoのスペックで解決できるという構成にし、LPへの遷移を促しています。

 2つ目は、縦型動画特有のスワイプリスク対策です。指を止めてもらうためにZ世代をリサーチしたところ、「昭和レトロ」や「オカルト番組」といったジャンルへの興味が高いことがわかりました。そこで、その2つを掛け合わせた世界観を採用。「スマホ不安超常現象」と題し、広告らしく見せないトップカットから始まり、エンタメ化することで最後まで見てもらいやすい動画構成にして、視聴離脱を防いでいます。

世界観に没入したまま、LINE友だち追加まで進める導線を準備

松村:3つ目は、LPの設計です。動画を見てLPに遷移した際、動画の世界観とLPのクリエイティブの差で「現実に戻され、モチベーションが下がる」ことのないよう意識。動画の世界観をそのまま引き継ぐ形でLPも制作しました。

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松村:スクロールを促進する仕掛けを組み込むとともに、4種の動画それぞれに合わせたLPを準備しました。スクロールしていくと「ahamoの謎」が解き明かされる構成にし、最後にLINE友だち追加へと自然に誘導できるよう工夫しています。

株式会社電通デジタル アドバンストクリエイティブセンター ブランデッドダイレクトクリエイティブ第4事業部 松村朋美氏クリエイティブプランナーとして、顧客獲得を目的としたダイレクト領域の広告プロジェクトをリード。データ分析に基づいた戦略立案から企画・制作ディレクション、配信後の効果測定までを一貫して担い、PDCAを回しながらクライアントの成果に直結するクリエイティブを追求する。
株式会社電通デジタル アドバンストクリエイティブセンター
ブランデッドダイレクトクリエイティブ第4事業部 松村朋美氏

クリエイティブプランナーとして、顧客獲得を目的としたダイレクト領域の広告プロジェクトをリード。データ分析に基づいた戦略立案から企画・制作ディレクション、配信後の効果測定までを一貫して担い、PDCAを回しながらクライアントの成果に直結するクリエイティブを追求する。

高嶋:目を引く動画コンテンツが数多くある中で、企業色を出しすぎるとZ世代にはすぐにスキップされてしまいます。その点、「昭和レトロ×オカルト」という企画は純粋におもしろく、動画として非常によくできていると感じましたね。

CTR125%、CVR286%など目標を大幅達成!新規申込数もアップ

MZ:施策の成果はいかがでしたか。

松村:目標として掲げていた指標をすべて大幅に達成できました。具体的には、CTR(動画のクリック率)が125.0%、CVR(LP来訪ユーザーのLINE友だち追加率)は286.0%、CV(LINE友だち追加数)は324.5%と、いずれの達成率も高い成果を上げています(2025年3月22日~4月31日単月実績)。

 また、動画配信後3ヵ月間のリスティング広告実績では、新規申込数の達成率122.0%を記録。一連の取り組みを通して獲得領域まで効果が出ており、Z世代に「ahamoは自分向けのブランドだ」と感じてもらうことに成功しました。

高嶋:動画の完全視聴率は第1弾の施策よりも上昇しており、クリエイティブとしての手応えを強く感じています。昨年度から「タレントの力を使わず、コンテンツの中身で勝負する」という方針を意識していましたが、Z世代に刺さるテーマで関心を持っていただけるクリエイティブを実現できました。

 GAの計測結果でも、広告に接触した人は未接触の人に比べて「ahamo 契約」というキーワードの検索率が約30%増加していました。「興味を持ってサイトを訪れてもらう」という施策の狙いがしっかり成果として表れており、とても満足しています。

ブランド好意度と獲得、双方の両立へ

MZ:成果につながったポイントはどこにあるとお考えですか。

河上:CVから逆算して設計したことが大きいと思います。Z世代が何に興味を持ち、どんなきっかけで行動に移るのかを捉えたことで、興味喚起のアプローチがうまく機能しました。

 またZ世代特有の、コンテンツへの“偶発的な接触”から関心を持ってもらえた点も成果ですね。結果的にニーズや悩みの顕在化にもつながり、ブランデッドダイレクトの戦略がうまく機能したと実感しています。

松村:認知と獲得、両指標のエンゲージメントを高めるブランデッドダイレクトの考え方を落とし込み、パーソナルな興味を生み出すコミュニケーションでZ世代との関係性を深められました。ブランドの好意度も上がり、ロイヤルカスタマー化の土台も築けたのではないでしょうか。

MZ:最後に、今後の展望についてお話しください。

高嶋:今後も、同様の課題は出てくると思います。たとえば新プラン「ドコモ MAX」などでも、似た構造の課題の発生が想定されるでしょう。今回得た知見を活かしながら、健在層向け施策の強化とミドルファネル施策の両輪で取り組みを続けていきます。

松村:私は普段、獲得施策を中心に担当していますが、今回はミドルファネル施策で成果に貢献できました。今後もミドルファネルと獲得の両面から企業様を支援できるよう、取り組みの幅を広げていきたいです。

河上:「名前は知られているが、獲得にはつながらない」という課題は多くのブランドで共通しています。スペック訴求だけでは伝わりづらい部分について、興味を喚起する表現で届けることが重要です。そして、ブランド好意度も上がるような仕掛けにできれば、よりエンゲージメントは深まります。こうしたコミュニケーション設計やクリエイティブのニーズは今後ますます高まっていくことでしょう。引き続き、NTTドコモ様との取り組みを強化していきたいと思います。

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この記事の著者

太田 祐一(オオタ ユウイチ)

 日本大学芸術学部放送学科を中退後、脚本家を目指すも挫折。その後、住宅関係、金属関係の業界紙での新聞記者を経て、コロナ禍の2020年にフリーライターとして独立。現在は、IT関係を中心に様々な媒体で取材・記事執筆活動を行っています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社電通デジタル

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/11/28 11:00 https://markezine.jp/article/detail/50009