利用ジャンル数もゆるやかに減少
では、コンテンツファンの広がりに着目して、データからその背景を探ってみます。
コンテンツ調査では11のコンテンツジャンルについて、この1年間に利用したか否かを聞いています。回答したジャンル数が多ければ幅広いジャンルを楽しんでいるといえ、少なければ特定ジャンルを楽しむ傾向が強いといえます。
コロナ禍の影響を受ける前からの比較をするため、2019年調査から2025年調査までを対象に、少なくとも1ジャンルは利用している「利用層」の、利用ジャンル数の推移を見てみます。
2019年には一人あたり平均4.29ジャンルの何らかのコンテンツを利用していたものの、2025年では3.8と約0.5減っています。緩やかに減少しており、少なくともジャンルをまたいで様々なコンテンツを利用する傾向は減っているようです。
新たなコンテンツとの“出会い”が減っている?
コンテンツ利用の広がりに関して、意識の変化も見てみます。コンテンツ調査には、コンテンツ利用に関する意識や嗜好を聞く設問があり、「1ヵ月あたりにコンテンツに使う金額を気にしている」や、「コンテンツに感動して泣くことがよくある」といった掘り下げた選択肢を幅広く設定しています。
この設問で、コンテンツ利用の広がりに関連がありそうな回答を確認します。これまでと同じく2019年と2025年調査の結果を、「利用層」ベースで比較します。
「新しいコンテンツが増えている」や「コンテンツがたくさんある」といった回答が減っています。実際には、世の中にはリアル、ネットを問わず数多くのコンテンツが存在していると思いますが、たくさんのコンテンツに“出会えて”いるという実感が得にくくなっているのかもしれません。
一方で増えたのが、特定のコンテンツの体験を深めるような回答です。
もしかすると生活者は新しいコンテンツに“出会う”よりも、気に入ったものを繰り返し楽しんだり、深めたりするような傾向を強めているのかもしれません。こうした中、気になるのがレコメンドベースでのコンテンツ利用が定着してきたことです。
動画や音楽の配信サービスでは過去の利用履歴をベースとしたレコメンドが一般的で、生活者はレコメンドにそって次々にコンテンツを利用できますが、「新しいコンテンツと出会えた」という実感には必ずしもつながっていないのかもしれません。
