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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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小売×メーカー×広告会社で築く協調領域、トライアルの目指す「ファン共創基盤」としてのリテールメディア

 近年、広告・マーケティング業界においてホットワードとなっている「リテールメディア」。検証として部分的に着手している企業は多いものの、いまだ本格的に機能させることができていないケースも多いのが現状だろう。単なるトレンドで終わらせず、マーケティング基盤としてリテールメディアを有効活用するために、各社はどう動いていけばよいのだろうか。トライアル×SalesPlus×電通デジタル×電通の4社対談 から、リテールメディアが目指すべきゴールや、会社や業種業界の壁を越えた「共創モデル」のあり方を探っていく。

認知で終わらせず、“売り”につなげ、シェアを変える

MarkeZine:この記事では、トライアル×SalesPlus×電通グループが注力するリテールメディア領域の取り組みについて聞いていきます。はじめに、トライアルのリテールメディアに対する考え方、基本理念を教えてください。

野田(トライアル):私たちはリテールメディアを単なる「枠売りメディア」に留めないことを強く意識しています。地域のお客様に代わって商品を仕入れ、提供する立場である我々の使命は、メーカーと小売の「共通のファン」を増やしていくこと。そのためにメーカーと小売が深く連携し、顧客を育成していくプロセスそのものが、リテールメディアの「核」であると考えています。

株式会社トライアルホールディングス 常務執行役員 マーケティング部長 野田大輔氏
株式会社トライアルカンパニー 常務執行役員 マーケティング部 部長 野田大輔氏

 また、私たちはリテールメディアの「範囲」を広く捉えています。デジタルサイネージやアプリはもちろんですが、自社開発のスマートカートシステム「Skip Cart」やテレビCMまで、あらゆるタッチポイントがリテールメディアの「範囲」に入ります。IDPOSデータを基に来店前~来店・購入~ブランドスイッチに至るまでの行動を捉え、“売り”につなげるコミュニケーションを実現する。つまり、商品を認知させるだけでなく、最終的に「その商品のシェアを変えること」がリテールメディアのゴールだと考えます。

MarkeZine:日本ではまだ検証段階にある企業も多いリテールメディアですが、本格的に機能させるために、なにが必要と考えられますか?

野田(トライアル):やはり重要なのは「売り場との連動」ではないでしょうか。リテールメディアは購買に近いマーケティングであるからこそ、売り場との密な連携がマストです。たとえば、どんなにテレビCMで購入意欲が高まっていたとしても、「スーパーの店内放送ひとつで気持ちが変わり、別の商品を手にとっていた」という経験がある方は多いでしょう。

 それほど小売のマーケティングにおいて「売り場」は重要です。リアル店舗でもEC上でも、顧客の意思決定に近い部分に注目し、集中的に「科学」すべきだと考えます。

1社に閉じず、競合も巻き込み、九州エリアをつないでいく

MarkeZine:トライアルの掲げる「共通のファンづくり」に並走しているのが、電通グループとトライアルホールディングスグループの連結子会社であるRetail AIの共同出資によって設立された「SalesPlus」です。SalesPlusの事業概要と、支援会社の立場としてリテールメディアとどう向き合っているか、お聞かせください。

関(SalesPlus):弊社の事業領域は多岐にわたり、リテールメディア開発からリテールメディア同士をつなげるネットワーク化、さらにはマスメディアやデジタルメディアと組み合わせたメディアミックス提案なども含まれます。その際、意識しているのは「トライアルに閉じない」ということ。トライアルは福岡県で多店舗展開していますが、トライアルに閉じず、福岡県全域、九州全域の小売企業を巻き込んだ展開を行っています。

株式会社SalesPlus 代表取締役副社長COO 関晋弥氏
株式会社SalesPlus 代表取締役副社長COO 関晋弥氏

MarkeZine:SalesPlusは、九州圏の複数のリテールメディアをつないだ「九州リテールメディア連合会」も主宰しています。競合ともいえる同エリアの小売企業が手を結ぶケースもあるのですね。

関(SalesPlus):ええ、通常は競合関係にある企業も、リテールメディアという領域においては協調できるのではないかと考えています。というのも、Aのスーパーで○○という商品のサイネージ広告を流したからといって、Bのスーパーで○○が売れなくなるとは考えにくいですよね。それなら、Bでも広告を流したほうが「面」が広がり、メーカーにとっての相乗効果を生むはずです。

 個社のリテールメディアではどうしても規模感に限界がありますが、それをエリア単位でつなぐことができれば、「営業販促」だけでなく「広告宣伝」としても十分に機能します。マーケティングの投資対象に足る大規模なリテールメディアネットワークを形成し、さらなる活用を推進していくことが我々の役割です。

メーカー6社と実施したPoC、企画棚の売上は13.7%増

MarkeZine:小売×メーカーで「共通のファンづくり」を実現できた事例はありますか?

辻森(電通デジタル):6社のメーカー企業様にご参画いただき、トライアル、SalesPlusとともに、電通デジタルを中心とした電通グループの連携体制でPoCに挑戦しました。このPoCでフォーカスしたのは、「売り場を起点にした企画づくり」です。

 私も実際にバイヤーの方々と対話を重ねる中で見えてきたのですが、トライアルの売り場は、購買データに基づいて非常に緻密に設計されています。一方で、生活者の「気分」や「体調」といった定性的な文脈での企画は、まだ発展の余地があるのではないかと考えたのが出発点となりました。

株式会社電通デジタル コマース&プロモーション部門 プロモーションデザイン部  第3グループマネージャー 辻森大邦氏
株式会社電通デジタル コマース&プロモーション部門 プロモーションデザイン部
第3グループマネージャー 辻森大邦氏

MarkeZine:PoCではどのような企画を実施されたのですか?

辻森(電通デジタル):「春バテ」というテーマで、製薬会社様をリーダーメーカーとした計6社のメーカー様にご参画いただき、検証対象となる計4店舗にて、ヘルスケア関連の企画棚を展開しました。今回のPoCでは、「メーカーが賛同しやすいようなカテゴリー横断の柔軟性があるか」「生活者視点で直感的にわかりやすいか」という2つの観点から、定量・定性データ、季節性・時事性のあるトピックなどをヒントに、100以上の企画案を検討しました。

 そして最終的に採用したのが「春バテ」というテーマです。夏と冬が長くなり、季節のメリハリがつきにくい近年だからこそ、共感されやすいキーワードだったのではないかと考えています。

 企画を実施した結果ですが、対象商品の売上は前年比で平均13.7%増となりました。比較店舗とも+18.2ポイントの差分が確認でき、顕著に購買につながった結果となっています。また、購入者の属性はDEWKS(共働き子育て世代)層や老年夫婦層の構成比が高い結果となり、「〇〇バテ」といった体調文脈の訴求がどのようなターゲットを動かしやすいかという示唆も得ることができました。

小売×メーカー×広告会社で「協調領域」を築いていけるか

MarkeZine:トライアルとSalesPlusは、今回のPoCでどのような手ごたえや学びを得ましたか?

野田(トライアル):きっと小売単独では、これほど多くのメーカーを巻き込んだ企画を実現することは難しかったでしょう。今回のPoCを通じて、小売同士はもちろん、広告会社と小売・メーカーがいかに「協調領域」を築いていくかというテーマに、大きな可能性を感じました。小さな単位でも検証を積み上げ、実績を可視化していくことが、今後のリテールメディアの未来につながると確信しています。

関(SalesPlus):今回のPoCには、大きく3つの「拡張性」があると考えています。1つ目は「店舗の拡張」です。4店舗での検証で顕著な結果が出たことを踏まえ、より多くの店舗へと展開を広げていける余地は十分に考えられます。

 2つ目は「メディアの拡張」。今回はまず棚企画にフォーカスした取り組みとなりましたが、サイネージをはじめとした店内リテールメディアを連動させるなど、より多くのお客様の注目を集める工夫はまだまだあります。

 3つ目は「店外(アウトストア)への拡張」です。たとえば、電通デジタルが得意とするデジタル広告などの施策と組み合わせることで、店外のお客様に対しても訴求し、来店を促すような仕組みを構築できるのではないでしょうか。

2026年1月新設、電通「リテールマーケティング局」の設立背景

MarkeZine:さて、電通は2026年1月 に「リテールマーケティング局」を新設し、リテール領域へ本腰を入れて注力する姿勢を示されました。改めて、電通がリテールメディア領域の重要性をどう捉え、どのような方針で活動されていくのかお聞かせください。

濱口(電通):テレビCMをはじめとした従来のブランドコミュニケーションだけではモノが売れにくくなっている時代、リテールメディアを含めたリテールマーケティングはもはや「必要不可欠」です。今後、リテール領域をカバーできなければ、“売る”ことにフォーカスしたパートナーポジションを獲得することは困難になっていくでしょう。電通グループとしてこの領域により一層注力していくために、専門組織「リテールマーケティング局」を設立するに至りました。

株式会社電通 データ・テクノロジーセンター長 濱口洋史氏
株式会社電通 リテールマーケティング局長 濱口洋史氏

MarkeZine:リテールマーケティング局は、具体的にどのような役割を担うのでしょうか?

濱口(電通):主に2つの役割を担います。1つ目は、メーカーへの支援。リテールメディアを有効活用して売上を中長期的に伸ばしていくためのプランニングから、PDCAの伴走までをサポートし、ブランド・商品の継続的な成長に寄与します。

 2つ目は、リテーラーへの支援です。もともと小売は「メディア」ではなかったからこそ、顧客体験の設計、メディア化、業務オペレーションや運用フローに悩まれ、自社だけではやりきれないと感じられている企業も増えてきていると思います。そのようなリテーラーのメディア開発/運用を併走支援しながら、よりよい顧客体験を提供していきます。

 メーカー側、リテーラー側のどちらの支援もすることで、お互いのニーズが見え、相乗効果を生むことができるでしょう。また、直接言いにくいことがあっても、広告会社が緩衝材になることで円滑なコミュニケーションがとれるかもしれません。多くのメーカーとリテーラーはすでに取引をしているものですが、我々が介入するからこその付加価値を生み出していきたいと考えています。

MarkeZine:支援領域が広く、多岐にわたる専門性が求められそうですね。

濱口(電通):ええ。リテールマーケティング局の業務は企画プランニングやデータ分析、システム開発、そしてセールスなど、極めて多様なスキルセットが必要になります。そのため、社内はもちろんグループ企業からも専門性の高い人材を招集しました。多様なスキルを持つメンバーがワンチームとなり、リテーラーとメーカー双方のお役に立てる組織になっています。

【リテールマーケティング局に関する詳細はこちらのリリースをご覧ください】

『電通、リテールメディアの開発・活用に取り組む専門組織 「リテールマーケティング局」を新設』

変化の嵐を楽しみながら、「買う瞬間に届くメディア」としての価値を高めたい

MarkeZine:リテールメディア領域のさらなる活性化に向けて、最後に今後の展望をお聞かせください。

辻森(電通デジタル):電通デジタルは、リテールメディア領域において、購買データを起点にしたデジタルプランニングから、販促施策の組み立て、売り場の企画設計までを一貫して支援できる体制を整えています。そんな中、今回のPoCでは、冒頭で野田さんがおっしゃっていた「売り場の重要性」を改めて実感しました。小売という専門領域に当社のデジタル領域の知見を掛け合わせることで、新たな価値を共創する取り組みを継続していければと思います。

関(SalesPlus):リテールメディアは、店内で扱っている商品の売上を直接押し上げる「販促メディア」としての側面と、多くのお客様に広く情報を届ける「リーチメディア」としての側面の両方を兼ね備えた、極めて稀有な存在だと考えています。

 販促メディアとしては、各小売企業に踏み込んだ売り場との連動をどこまで深くできるかがカギとなってくるでしょう。一方で、リーチメディアとしては「面」の拡大が重要です。メディア横断の取り組みや「九州リテールメディア連合会」のような小売同士の連携も始まってきていますが、まだまだ不十分だと感じています。

 リテールメディアは深さでも、面の広さでも、まだ拡張の余地が十分に残されている非常にやりがいのある領域です。現在はまさに変化の嵐の中にいるような感覚ですが、楽しみながら全力で走り続けていきたいと思います。

野田(トライアル):「買う瞬間に届くメディア」としての価値を高めていきたいですね。これから生活様式が変化し、オフラインで買う人が減るような未来が来たとしても、その時々のお客様のスタイルに合わせて姿を変え、購買の瞬間に寄り添い続けることが重要だと考えています。

 「九州リテールメディア連合会」のような取り組みも、地域ごとの細かなニーズや生活様式に合わせて、「買う瞬間」に価値を届けるための挑戦です。九州だけでなく、将来的には北海道、東北など、それぞれの地域で最適な訴求を実行していきたいです。

 メーカーと小売が手を取り合い、その間に広告会社が介在することで、業界全体の「ムダ・ムラ・ムリ」がなくなり、“売る”ための施策に集中していけるはず。今後もリテール領域におけるマーケティングの在り方そのものを変えていくために、チーム一丸となって挑んでいきます。

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この記事の著者

安光 あずみ(ヤスミツ アズミ)

Web広告代理店で7年間、営業や広告ディレクターを経験し、タイアップ広告の企画やLP・バナー制作等に携わる。2024年に独立し、フリーライターへ転身。企業へのインタビュー記事から、体験レポート、SEO記事まで幅広く執筆。「ぼっちのazumiさん」名義でもnoteなどで発信中。ひとり旅が趣味。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社電通デジタル

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2026/01/23 11:00 https://markezine.jp/article/detail/50234