ファン化の鍵は「カスタマー・ハピネス」にあり
続いて定性調査では、「コグニティブ・インタビュー」という手法を用いて、絆層のブランド接点から現在に至るまでのジャーニーを描き、感情の変化や思考を詳細に把握しました。ブランドに対する気持ちの上がり下がりを時系列で描き、その過程でどんなことがありどんなことを考えたのか、より詳細に語ってもらいます。各社3名ずつインタビューを実施しました。今回は、その中からハウスメーカーの絆層の事例を紹介します(図表5)。

この方は当初「重量鉄骨」「外観のかっこよさ」などに魅力を感じていましたが、実際に気持ちを高めたのは営業担当者の寄り添う姿勢でした。「家を決めていく過程が結婚式の主役のようだった」と語り、住み始めた後も困りごとに迅速に対応してもらえたことで強い愛着を抱くようになりました。
4社全体を通して理解が深まったことは、ファンを育成するには「カスタマー・ハピネス」(ブランドを通じて幸せを感じること)への注力が大切ということです。商品やサービスを売りつけるのではなく、ブランドを通して幸せになってもらうこと、そしてそのためには顧客に寄り添う努力をすることが何より重要です。そうした努力を重ねることで、顧客は心を開き、ファンになっていきます。今回の調査では以下のような実例があがりました。
・家づくりの過程で、結婚式の主役のような気持ちになった(ハウスメーカー)
・金融商品の相談で親身な説明を受け、結果利益が出て助かった(銀行)
・ショップの店長との出会いが、自分のバイク人生を支えてくれた(バイク)
・コスパの良いメガネと出会い使い分けるバリエーションが増え、楽しみが増えた(眼鏡店)
顧客の「幸せ」に寄り添い、心を動かすアプローチ
ファンを育成するには、まず現状を正しく把握し、自社に合った施策を展開することが大切です。
・「絆層」と「好意層」のどちらを増やすべきか
・具体的にどのようなアクションを展開するか
これらを見極めた上で、顧客の心を動かす施策を実行することが求められます。
たとえば「防犯性が高い」よりも「空き巣が窓を壊せず諦めた防犯性」、「断熱性が高い」よりも「冬は暖房いらずで快適」といった訴えのほうが、顧客の心に響くでしょう。また「スピーディーな対応」を実践することは、安心感だけでなく、自分のことを気遣ってくれているという気持ちにつながります。さらに、次の商品を売り込むのではなく、「今の商品を大切に使ってほしい」という姿勢を見せることも、愛着や信頼を生み、ファンの育成につながります。
重要なのは自社都合でマーケティングを考えるのではなく、ターゲット顧客の生活に寄り添い、一緒に幸せを実現しようとするプロセスです。100人中100人の幸せを実現するのは困難であり、自社のカテゴリーや提供価値との親和性が高いターゲットを選定し、カスタマー・ハピネスを具体化することが求められます。定量調査と定性調査を上手く使うことで、自社に合ったファン育成のアプローチが見えてくるでしょう。
