BXデザインで大切にしているのは「いちユーザーとしての視点」
山中さんはBXデザイン室にあるチームのひとつでマネージャーもつとめている。BXデザイン室へやってきた依頼をほかのマネージャー2名と相談し、チームごとに割り振っていく。チーム全員がBXデザイナーだが、役割や担当サービスは固定化していない。「それぞれの個性や得意分野を把握しつつ、さまざまな仕事にチャレンジする機会を与え、可能性を広げていきたい」と考えているためだ。
そんな山中さんのチームが担当した業務のなかで印象に残っているプロジェクトが、2020年9月にオンライン開催されたLINE Business Conference「LINE DAY 2020 ―Tomorrow's New Normal―」だ。イベントロゴやキービジュアル、デザインガイドラインやKeynoteデザイン、イベント会場デザインなどを韓国のBXチームとともに、山中さんをふくめ4人のBXデザイナーが担当した。
毎年行われているLINEのカンファレンスでは、通常であれば半年前から準備を始めるが、コロナ禍の影響もあり今回の準備期間はわずか3ヵ月程度。LINEとしては初めてのオンラインカンファレンスでありながら、例年以上にスピードも求められる形となった。
「社内の映像デザインチームと協力し、キービジュアルを映像化するための議論にも加わったり、韓国のBXデザインチームと連携して制作を行うなど多くの人と関わりながら取り組んだプロジェクトでしたね。常に考えていたのは、どうしたらオンラインでもユーザーに楽しんでもらえるか。大変なことも多かったですが、とても貴重な経験でした」
2019年にLINEは、ライフスタイルイノベーションによって24時間365日ユーザーの生活すべてをサポートするライフインフラを目指すことを宣言し、それを実現するべく掲げたビジョンは「Life on LINE」。人々の生活を支えるブランドだからこそ山中さんが常に大切にしているのは、社内のコミュニケーションと同様「いちユーザーの視点を忘れないこと」だ。
「ライフツールとして使ってほしいというビジョンがあるにも関わらず、そもそも私自身が理解できないサービスやブランドだったら好きになれませんよね。自分自身もふくめ、家族や友人に自信をもってオススメできるサービスであるか。これは常に頭に置くようにしています」
ストーリーは「感じとってもらうもの」 LINEのブランドに携わる醍醐味とは
コミュニケーションアプリ「LINE」の国内のユーザー数は8,800万人を超え、日本で暮らす人々にとってもっとも生活に馴染んでいるアプリのひとつであることは明白だ。これだけのユーザー数を誇るブランドを日本国内で探すことのほうが難しいかもしれない。それだけ日常に溶け込んでいるブランドであることが、LINEに携わる醍醐味でもあると山中さんは語る。
「LINEは入社前ももちろんずっと使っていましたし、周りでLINEのサービスを利用していない人のほうが少ないのではないでしょうか。ですがこれだけ多くのユーザーがいるからこそ、その反響やリアクションもダイレクトに返ってくる。良い意味で、とても緊張感をもって取り組むことができる環境だと感じています」
生活に密接したブランドであるLINEだからこそ、コミュニケーションアプリだけではなく、LINEのサービスがあれば便利で豊かな生活を送ることができる状態を作ること。これが山中さんの今後の目標だ。
「そのために私たちBXデザインチームができることは、どういったブランドだと“良い”のかを考え続けること。それはつまり、LINEがユーザーにとって便利で親しみやすいものであることを伝えるための『ストーリーテラー』であることではないかと考えています」
そのアウトプットにたどり着いたプロセス、いわばストーリーを非常に大切にしていると語る山中さん。その過程が納得できなければ一過性のデザインになってしまい、長く愛されるライフツールとしてブランドが機能しないと考えているためだ。ただ、単にブランドの前面にストーリーを押し出していけば良いというわけではない。
「ストーリーをユーザーにアピールするのではなく、『感じとってもらう』イメージに近いです。私が思う良いデザインとは、見た人がいろいろ想像できること。このデザインにはこんな思いがあるのではないか。私はこんなふうに受け取った――。それが意図と合っているか合っていないかは別にしたとしても、ユーザーが自由に感じとって想像できる余白があるものが、良いデザインなのではないでしょうか」

最後に、どんなマインドをもった人がLINEのカルチャーや働きかたにフィットすると思うかという質問をぶつけてみた。すぐに返ってきた答えは「変化を楽しめる人」だ。
「LINEの魅力は、ユーザーの声を効果検証して次々にアップデートをしていくところ。そのため私たちBXデザイナーも、場合によってはロゴをリニューアルしたり、インターフェイスを一気に変えてみたり、かなり大胆な判断をすることも多いように思います。そんなときに、自分が作ったロゴだからという理由でそれに固執するのは少し違う。環境や状況の変化、新しい課題に対して前向きに楽しめる人だと、とても刺激的な会社なのではないでしょうか」
根本のアイデンティティは変わらないけれど、人もブランドも時代や環境によって変化していくものであり、それに対応しながらブランドやサービスの姿を伝えていくこと。それこそがBXデザイナーの仕事だと山中さんは補足する。
ユーザー数が国内で8,800万人を超えるブランドだからこそ、生活や人々の変化はひときわ大きな波動となって押し寄せてくるだろう。だがその波を受け止めながら乗りこなしていくことで得られるものの数も、ひときわたくさんあるに違いない。

