関心が最大化する「瞬間」を狙い撃つ。YouTube広告活用の極意
MZ:今回の広告施策における方針と狙いを教えてください。
利光(UUUM):一般的な広告配信というのは、アフィニティーやKWを用いて「釣りに興味のあるユーザー」にターゲティング配信するというのが定石なのですが、私自身、この手法には一種の限界を感じておりました。というのも、このターゲティング手法では、「今、釣りに強い興味を持っているユーザーに配信できているかはわからない」ためです。
一方でタイアップ広告には「ファンダムのみにリーチが留まってしまう」「施策効果が短期的である」という明確な弱みがあります。では、各ファンダムを制覇するためにクリエイター一人ひとりと個別にコラボするかというと、それには莫大なリソースとコストが必要になります。この構造的なジレンマを突破する方法を模索していました。
そこで私たちが打ち出したのが、釣りコンテンツを「今、この瞬間(モーメント)」に視聴しているユーザーへダイレクトに届ける広告配信です。フリークアウトグループのアセットである「GP YouTube Contextual Targeting(以下、「GP」)」を活用して実現しました。
「釣りよか」を取り巻くファンダムの熱量を、“今、釣りに猛烈な関心を持っているユーザー”であれば伝播させられるのではないか——それが本施策の狙いとなります。
MZ:GPは具体的にどのような機能があるのか、今回の施策ではどのような設計をしたのか教えてください。
韓(GP):GPはコンテンツの内容を映像情報と動画説明情報を総合的に解析することで、ブランドと親和性の高いコンテンツを選定し、ユーザーの熱量が高いタイミングを狙って広告配信できる技術です。今回で言えば、釣りに関する動画をまさに“今”見ている視聴者に対し、「釣りよか」を使ったクリエイティブを届ける、といったイメージになります。
今回の配信では、「釣りよか」とのタイアップ動画を用いたクリエイティブを作成し、2つの手法でのA/Bテストを実施しました。
- GPのコンテキスト解析技術で「釣り関連の動画だけ」を指定した「コンテンツターゲティング」
- Googleの管理画面で設定できる「釣り興味関心層」への「オーディエンスターゲティング」
また、広告管理画面上の数値だけでなく、計測ツール(Adobe Analytics)で遷移率や滞在時間といった数値も計測し、流入後のユーザー行動まで踏み込んだ効果検証を行っています。
CTR10倍、EC売上3倍を記録。ファンが「広告を見たよ」と喜ぶ理想的な循環も
MZ:今回の施策の検証結果や成果を教えてください。
利光(UUUM):当初の目標であった「深い態度変容」につながる、顕著な成果が見られました。通常のTrueView配信と比較して、GPを活用したコンテキストターゲティング配信は、クリック率約10倍、ウェブサイトに遷移したあとの第二階層遷移率2.1倍、滞在時間2.2倍という結果となっています。遷移単価にして15分の1にまで抑えることに成功しました。
また今回、「『釣りよか』ファンダム以外にも届けること」が広告としてのミッションでしたが、結果は全リーチのうち82%が「釣りよか」登録者外。パフォーマンスの高さをキープしながら、ファンダム以外の「釣り」文脈のなかにいる膨大なターゲット層にリーチし、態度変容を促すことに成功したと言えるでしょう。
また今回の検証では滞在時間、遷移率といったユーザーの興味関心を表す指標と視聴完了率との相関は見られませんでした。視聴完了率の高い動画の内訳を調査してみると、「アニメコンテンツや長尺コンテンツが多く、コネクテッドTV上で子どもが見ているケースなどにおいて、広告をスキップしていないから視聴完了率が高かったのでは」という仮説が立てられます。
一般的に「視聴完了率が高い=ブランド理解が深い」と盲信されがちですが、「スキップされない状況で流れているだけ」の再生に、真の態度変容は宿りません。数値の裏側にある「視聴の質」を見極める重要性が、今回の検証で浮き彫りになりました。
MZ:実際の売上やファンダムの反応など、CASIO側から見えた成果もあれば教えてください。
中村(CASIO):「G-LIDEシリーズ」のEC売上は、前年比で3倍という結果でした。また通常、タイアップ施策は初速が最大化し、その後は縮小していくものですが、今回は広告配信中3ヵ月にわたり高い売上水準を維持できた点も特徴的でした。
加えて、ファンダムの熱量も強く感じました。「釣りよか」のタイアップ動画やSNSには「広告見たよ!」とポジティブに報告するファンが多数見られ、リアルイベントでは視聴者の方に「釣りよかを応援してくれてありがとう」と声を掛けていただく場面がありました。そのレベルにまで、ブランドが深くファンダムに浸透しているという事実が衝撃ですし、非常にうれしかったです。
ただ、今回の取り組みで得られた最大の収穫は、短期的な売上増以上に、G-SHOCKの本質と共鳴する形でブランドを自然に露出させ、その結果、熱量の高いコミュニティの中で受け入れられる構造を設計できたことにあります。一過性の成果ではなく、中長期でファンを増やしていくための土台を築けたことこそが、本質的な価値でした。

