自らと向き合い、自らをケアする世代の深層心理
現代の若年層を象徴するキーワードは「セルフケア」である。不安定な社会情勢や情報過多なSNS社会で過ごす彼らにとって、自分自身と向き合い、心身を健やかに保つことは極めて重要な関心事となっている。
NRF2026のセッション「An in-depth look at new Gen Z research(最新のZ世代調査を深掘りする)」で紹介された、若年層に人気のアパレルブランドPacsunが公開した調査結果によると、Z世代およびα世代が人生において最も優先しているのは、身体的健康や学業以上に「メンタルヘルス」とのことだ。自身の精神的な安定を何よりも重要視しており、それが当たり前になっている。そのため、メンタルヘルスに関して家族や友人とオープンに語り合うことを恐れていない。
セルフケアの意識はメンタルヘルスだけでなく、身体の健康意識(フィジカルケア)の関心にもつながっている。セッション「FutureFit Growth: How PepsiCo North America Is Redefining Consumer Demand(フューチャー・フィットな成長:ペプシコが再定義する消費者需要)」に登壇したペプシなどを所有する世界最大級の食品・飲料メーカーPepsiCoのKris氏は、消費者の健康意識の変化について言及し、かつて健康やウェルネスへの配慮は「あれば良いもの」であったが、今や「必須条件」。すなわち「当たり前の期待値」になっていると指摘する。
実際にPepsiCoも健康意識へアプローチしている。事例としてセッションで紹介された商品が「Poppi」だ。Poppiは、急成長を遂げるリンゴ酢入りソーダで、2025年にPepsiCoが買収したブランドである。従来のソーダと比較して、低カロリーで罪悪感なく楽しめるだけでなく、リンゴ酢や食物繊維が含まれるため、若年層の間で「むしろ飲むとお腹にいいソーダ」とポジティブに捉えられ楽しまれている。
Poppiは機能性によるフィジカルケアだけでなく、若年層に合わせた体験設計がメンタルヘルスにも影響していると注目を集めている。象徴的な要素が、健康飲料らしくないネオンカラーでポップなパッケージだ。
ポップで持ち歩きたくなる商品になったことで、健康を意識するライフスタイルのアイコンとなった。「心身を大切にしている自分」を実感・表明しやすく、フィジカルケアにもメンタルヘルスにも寄与している。
結果、Amazonではアメリカの炭酸飲料カテゴリでコーラなどを抑えてPoppiが定期的に売上1位を獲得。オンライン上で確固たる実績を残したことで、現在はスーパーでも棚を押さえている。
シビアな金銭感覚を「ハック」として楽しむ
セルフケアに勤しむ一方で、若年層は極めて合理的で賢い金銭感覚を持っている。
PacsunのOlson氏が指摘するように、インフレや不況下で育った彼らは「価値意識(Value-Conscious)」が非常に高く、価格と価値のバランスに敏感だ。これは、日本国内で若年層の特徴として頻繁に挙げられる「コスパ意識」「タイパ意識」に通じる。安いから買うのではなく、価値に見合ったコストと判断した時に購入の判断をするのだ。
そして、そのような合理的な判断には、SNSだけでなくAIを活用していることが確認された。
Z世代コミュニティのメンバーとアパレルブランドのCMOによるセッション「The Z Suite Meets the CMO: Insights into how Gen Z Is using AI to shop for fashion(Z世代がCMOに語る:AIを活用したファッション・ショッピングの実態)」に登壇した学生の一人は、Z世代の多くが年収35,000ドル未満という現実の中で、「限られたお金で賢く買い物をするために、AIに割引コードやより安い売り場を聞く」と語った。
