イベントだけじゃない、BtoBマーケを支えるプラットフォーム
「おそらく、イベント系のツールのイメージが強いと思うのですが」と浅野氏は切り出した。シャノンはMAを中心に、CMS、SFA、データ分析まで、BtoBマーケティング活動をワンストップで支援するクラウドサービスを提供している。顧客層はITや製造業が中心だが、金融・不動産など幅広い業界に導入実績を持つ。BtoBだけでなくBtoCのクライアントも抱えており、その守備範囲は広い。
浅野氏自身は、サン・マイクロシステムズ(現オラクル)、村田製作所を経てシャノンに入社。ITと製造業の双方に精通した現場視点を武器に、MA黎明期から企業のデジタル変革を支援し続けてきた。
2025年、CMOに就任。現在は、AI検索が主流となる時代を見据え、マーケターが構築すべき「信頼資産」の定義とその手法を自ら最前線で実践。理論に留まらない「次世代のマーケティング組織のあり方」を追求し続けている。
そして浅野氏は、本セッションの立ち位置をこう位置づけた。「今日は、AIO対策を提案するベンダーとしてではなく、皆さんと同じ実践者として話したい」。
PV至上主義の終焉と、総評論家時代の到来
浅野氏はまず、BtoBマーケティングの変遷を俯瞰した。2000年代は営業が顧客へ情報を届ける時代。2010年以降のコンテンツマーケティング元年を経て、2015年のMA普及期には「いかに効率よく情報を広く届けるか(PV)」が主戦場となった。そして2025年以降、新たなキーワードとして浮上しているのが「AIO」だ。
AIOとは「AI検索最適化(AI Search Optimization)」を指す。GoogleのAI Overviewをはじめ、ChatGPTやPerplexityなどのAI検索ツールが急速に普及するなかで、ユーザーはキーワード検索でWebサイトを訪問する前に、AIの回答で情報収集を完結させるようになっている。つまり、いくらSEOを磨いてもAIに推薦されなければ存在しないも同然━━そういう時代が到来しつつある。
その影響は数字にも表れている。シャノンの独自調査では、2026年1月時点で前年同期比のWeb流入が「減少した」と回答した企業は76.0%にのぼる。

ただし、興味深いデータも存在する。PVが下がっても、「コンバージョン(CV)に影響がない」、あるいは「上がっている」という企業が約半数(49.2%)存在するのだ。これまでも重要視されてきた「情報の質」が、もはや無視できない最優先事項となったことを、このデータは示している。
そしてAIOは、もうひとつの変化も引き起こした。「総評論家時代」の到来だ。かつてマーケターは、デジタルマーケティングにまつわる数値を専門的な立場で社内に説明する役割を果たしていた。しかし今は、誰でも自社のマーケティングについてAIに問うことができるようになっている。

「今までマーケティングの知識がなかった人でも、AIと対話することで自社の課題を擬似的に言語化できるようになり、その回答を引き合いに出して『うちの施策は足りない』などと言い始める。社内でそういった説明責任が生まれているのが、今の現場の実態です」(浅野氏)
ただし、社内のあらゆる層を巻き込む必要が生じた一方、それはAIO対策を全社課題として昇華させるきっかけにもなりうる。浅野氏はこの変化を、課題であると同時に好機として捉えていた。
KPIは「商談数」へ回帰 創出の鍵は全社連携に
マーケティング部門のKPIにも、変化が表れている。シャノンの調査では、最重視されるKPIの1位は「商談創出数(および商談金額合計)」(約65〜70%)、2位が「MQL/SQL」(約55〜60%)となり、かつてトップだった「新規リード獲得数(件数)」は3位(約50%)に後退しつつある。
背景には、「AIが一般的な知識を瞬時に要約できるようになった」という構造的な変化がある。ネット上の情報をまとめただけの資料では、顧客はAIとの対話で満足してしまい、自社サイトへの流入や問い合わせには至らない。商談につながる深い検討を促すには、AIには生成できない「その企業にしかない体験(一次情報)」を届ける必要がある。
「この時代に、獲得数だけを追っていると、どこかで限界がくる。そして、一次情報はマーケターだけで取得できるものではありません」(浅野氏)
浅野氏は続けてこう問いかけた。「営業ときちんとコミュニケーションはとれていますか? 顧客とのパイプはありますか? 経営陣・広報との接点は足りていますか?」。
かつての「営業VSマーケ」の構図は終わり、一次情報を継続的に生み出すための全社体制こそが問われる時代になった。マーケティング部門を「リード獲得担当」として閉じた組織で運営している限り、AIO時代の競争には対応できない。浅野氏はそう断言した。
AIO対策の緊急度は業界で異なる? ITサービスは「待ったなし」
現時点ではAIO対応の必要性や難易度が、業界によって大きく異なると浅野氏は分析する。
ITサービス(SaaS等)においては、見込み顧客がAIでツール比較を完結させてしまうリスクがすでに現実になっており、直接的な影響が出ている。「おすすめのMAツールを教えて」とAIに問えば、競合も含めた比較が瞬時に提示される。Web上に情報が溢れている分、AIを「納得」させるための対策難易度も高い。
一方、製造業にとっては大きなチャンスだ。製造現場の深いノウハウや製品の仕様詳細は、まだネット上に少ない。スペック比較だけでは完結しない、BtoB特有の情報を、いち早くAIが読み取れるかたちで公開すれば、その分野における「唯一の正解」としてAIに学習され、指名買いに近い状態を作れる可能性があると浅野氏は指摘した。

では、AIに「選ばれる」ためには何が必要か。浅野氏が最初に勧める方法はシンプルだ。「まずAIに直接聞いてみる。なぜ自社が選ばれなかったのかを問いかける。回答は毎回変わるので定点観測が必要ですが、地道に続けることで改善できます」。
より体系的に取り組むなら、AIが評価する軸は「経験(Experience)×一次情報」「専門性×結論ファースト」「権威性×権威の裏付け」「信頼性×構造化・サイテーション」の4つだ。シャノンの調査では、AIO対策に早期から取り組んでいる企業の多くが最初に着手するのは「構造化データ(Schema.org)の設定」(全体の57.3%)だという。
一方で、真に差別化につながる「一次情報の資産化」はまだ多くの企業で手がついていない。「量産型コンテンツの時代から、現場にしか生み出せないカスタムな一次情報の時代へ。この変化に、まだ対応できていない企業が多いのが実態です」と浅野氏は語った。
シャノンの実践 「誰が言うか」「どこで言われているか」を設計する
では一次情報の資産化のために、具体的に何をすればいいのか。浅野氏はシャノン自身の取り組みを開示した。

(1)権威性の担保
コンテンツの執筆者をCxOや社内専門家に設定し、個人ブランドと会社情報を紐づける。著名人である必要はない。「社内にいる勤続30年の技術者に、どんな思想で、どんな苦労の末にその製品をつくったのかをインタビューする。重要なのは、その方の専門性がデジタル上で客観的に証明されていることです。公式プロフィールやSNS等と連携させ、『何者か』を明確に定義して初めて、そのコンテンツはAIに評価される一次情報の価値を持ちます」(浅野氏)。社内に専門家がいないと嘆く声もあるが、「専門家は外部ではなく社内にいる」というのが浅野氏の一貫したメッセージだ。
(2)信頼性とサイテーションの強化
SNSや第三者評価サイトでの言及を重視し、口コミには積極的に対話する。「集めるだけでなく、コミュニケーションを取ること。厳しい指摘に対しても逃げずに誠実に応じ、解決に向けた姿勢をデジタル上に公開・蓄積していくプロセスそのものが、AIへの信頼資産になります」(浅野氏)。出しっぱなし、集めっぱなしではなく、対話をルーティン化することが重要だと強調した。
(3)公式発信へのエンドースメント
プレスリリースなど公式情報を出す際には、第三者からの推薦コメントを必ず含める。パートナーや顧客からのコメントをもらうための調整は工数がかかるが、「連動させることで、AIはこれを価値ある情報だと学習してくれる。ここまでやらなければいけない時代です」(浅野氏)。

これらは「マーケ施策の一環」として単発で依頼するだけでは続かない。「全社課題」として経営レベルで位置づけることが不可欠だと浅野氏は言う。
「競技ルールが変わったのではなく、競技そのものが変わった。その認識を全社で共有するところから始めてほしい」(浅野氏)
マーケターを「オペレーター」から解放する
このような組織変革には当然ながら、時間が必要だ。しかし今のマーケターは、ツールの運用に時間を使いすぎている。浅野氏はここに根本的な問題があると指摘する。
「2015年以降、複雑なツールを使いこなせることがマーケターの価値だという認識が広まってきた側面があります。でも本来の真価は、ツール運用という『作業』ではなく、戦略やコミュニケーションという『思考』にあるはずです」(浅野氏)
難しいツールを一部の担当者だけが操作している状況は、全社を巻き込んだAIO対策の障壁にもなる。一次情報を集めるために営業や経営陣と協力しようとしても、ツールの操作が属人化していれば、関わる人を増やすことすら難しい。
「ツールを使いこなすことが目的化し、マーケティングに関わる人を限定してはいけない」(浅野氏)。こうした「脱オペレーター」の思想を具体化するため、シャノンはAI支援機能を搭載した新UIを市場に投入した。営業やインサイドセールスが直感的に触れ、自然とマーケティング基盤に参画できる環境を整えることで、組織全体から一次情報を吸い上げる体制を支援するためだ。
さらに、マーケティングの一歩を踏み出すハードルを下げるべく、担当者不在の中小企業でもkintoneと連携して運用できるプラン「シャキーン」を提供。専門家がいなくても「誰でもマーケティングに携われる」ツールへと進化させることで、企業がAIO時代の新たな戦い方に転換する機会を創出している。

オペレーションコストを見直し、捻出した時間で全社を巻き込んだAIO対策へ踏み出す。シャノン自身が実践者として歩むその道筋が、浅野氏の講演を通じて示された。
AIO時代のBtoBマーケティングを加速させる「シャノンMA」
シャノンが提供するMAツールは、AI支援機能でマーケターを単純作業から解放。商談創出という本質的な成果を最大化します。本記事で興味を持たれた方は、ぜひ製品資料をダウンロードしてみてください。

