顧客を組織の共通言語にする、事業マーケティングBlueprintの全貌
顧客理解を深める手法はわかった。しかし、それを組織全体に根付かせるにはどうすればよいのか。富家氏が「組織的な仕組み」について尋ねると、関口氏は「事業マーケティングBlueprint」を実践していると答えた。

Blueprintでは、まずWho・What・Whyを定義し、「なぜ自社でなければならないのか」を言語化するところから始める。
次にイネーブルメントの確認だ。セールスイネーブルメントという言葉はよく聞くが、関口氏が指すのはより広い意味でのイネーブルメントである。営業の成功だけでなく、サポートする環境やそのソリューションを顧客が使える環境が整っているか、使いこなせる土壌があるかどうかまで確認することが含まれる。
その上でデマンドジェネレーションや広告といったHowの設計に進み、最後にデータによる継続的な見直しを行う。このBlueprintが生まれた背景には、関口氏自身の原体験がある。
「前職でマーケティングを担っていた際に、商品が完成すると私に仕事が回ってきました。そこで『この商品は誰向けで、何が独自価値なんですか?』と聞くと、『そんなこと聞くの?』と言われるような状態でした」(関口氏)
営業とマーケティングで考えが食い違ったり、同じ組織でも担当者によって認識が異なることがある。こうした認識のズレを埋めることこそ、Blueprintの本質的な役割だ。だからこそ、「まずは言語化することに意味がある」と関口氏は言う。
もちろん、一度確認して終わりではない。
「市場は毎日動いています。3ヵ月前に決めたことが、そのままでいいわけがない。データを見ながら臨機応変に変えていくことが重要です」(関口氏)
顧客との接点を組織全体に広げる「カルチャースナック」が目指すもの
組織全体で顧客と向き合う仕組みは、フレームワークだけではない。コクヨが実践するのは、地域を巻き込んだパブリックイベント「CULTURE SNACK」という独自のアプローチだ。

「B面でつながる大人の文化祭」をコンセプトに、仕事以外の趣味や個性を持ち寄るイベントで、編み物やカレー作りなど約140人の社員が参加する。挙手制でメンバーを募り、社員が自主的に運営しているのが特徴だ。このイベントの本質的な狙いは、顧客と接する機会を組織全体に広げることにある。
「社内でお客様と接点を持てるのは、限られた人になりがちです。普段はバックオフィスを担当しているメンバーも、お客様と直接コミュニケーションをとる機会がこのイベントです。『コクヨ、おもしろいことやってるね』と言われた時に、自分もこのビジネスに貢献できているという実感が持てる。それが日常の業務にもいきていきます」(小川氏)
実際にイベント参加者のエンゲージメントスコアは、参加前に比べて高いという結果も出ている。顧客と直接触れる体験が、社員のモチベーションや当事者意識を高めているという証拠だろう。
富家氏は「顧客と社員がいかに触れる機会を作れるか。その旗振り役を担うこともBtoBマーケターの重要な職責ではないか」とまとめる。
「顧客の先」とは何か
セッションの最後に、関口氏は「顧客の先」という言葉に新たな意味を加えた。
「今日は対面しているお客様のさらに先、という話をしてきました。しかしもう一つの『先』があります。お客様の企業が、どこへ向かっているのか。ビジョンや将来像を把握しているか。目先のビジネスだけを追うのではなく、お客様の未来を一緒に考える視点も大切にしてほしいと思います」(関口氏)
ビジネスにゴールデンルールはない。それでも、顧客の「先」を見続けること。組織全体で顧客と向き合う仕組みを育てること。そのためにどうすればいいか?その問いを持ち続けることこそが重要だ。富家氏は「顧客の先を見ることで景色が変わる」というセッションの核心を改めて強調し、講演を終えた。
