約70%の戦略が実行されずに失敗している
PwCコンサルティングのなかで丸山氏が所属するのは、「Front Office & Experience」という組織。クライアントの「顧客」を軸にして、顧客理解、チャネル戦略、組織戦略といった領域でイノベーションを推進していく特化型チームで、PwCのグローバルネットワーク全体で約5,700名が所属している。
数々のクライアントとともに顧客戦略を立案してきた丸山氏だが、「戦略立案後に現場で実行する段階で壁にぶつかる企業が多い」と実体験を語る。
それは丸山氏が提示したデータからも明白だ。一般的にも、立案された戦略が実行されずに失敗する割合は約70%にのぼる。また、戦略を立案したにもかかわらず実行していないということは、それだけでも損失を生むということ。実行失敗に伴う損失の割合は、年間収益に対して5~10%という調査結果もある。
「みなさんのなかにも、戦略を作ったとて、現場に“ふーん”というリアクションをされてしまい、導入してもらえなかった、失敗してしまったというケースに心当たりがある方がいるはずです。では、なぜこんなにも高い割合で失敗してしまうのか。今回は複数の調査や分析の結果をもとに、いくつかの切り口から紐解いていきます」(丸山氏)
データから紐解く、戦略が実行失敗に終わる3つの要因とは
丸山氏は戦略実行の失敗要因を「3つの断絶」として数値をもとに整理した。
第一の断絶は、市場および顧客に対する解像度の低さ。ある調査では、経営危機に陥った企業のうち、52%が「市場・顧客の変化に適応できなかった」と答える結果が出た。また、マーケティング担当者の54%が「顧客インサイトの欠如」を最大の課題に挙げたという調査結果もある。「変化の激しいVUCA時代にもかかわらず、5~10年前に定めた顧客像を追い続けていないか?」と丸山氏は問う。失敗しない戦略を策定するためには、本質的な顧客理解から始めることが必須だ。
第二の断絶は、経営層と現場のあいだに横たわる深い溝だ。トップダウンの企業では、従業員がリーダーや経営層のビジョンに賛同できているとは限らない。PwCの調査によると、それにもかかわらず、ケイパビリティ(組織能力)を構築・拡大するための従業員向けプログラムを導入している企業は、わずか16%にとどまる。丸山氏は「多くの企業から『人が足りない』『誰かいい人いない?』という声が聞かれます。ケイパビリティ、リソース、スキル、知識、経験の不足が、慢性的な課題になっているのではないでしょうか」と語る。
そして第三の断絶が、ステークホルダーへの浸透不足。従業員の95%が「自社の戦略を認識または理解していない」というデータもある。戦略を理解していないゆえに、納得感のないまま“なんとなく”KPIを追いかけるような現場の施策は、当然ながら失敗に終わってしまう。また、共通理解がないからこそ、部署間の会話が成立せず、お互いがお互いの批判に終始してしまうケースも多い。丸山氏は今回の講演における重点として特に衝突を起こしやすい「営業領域」「マーケティング領域」に着目し、解決策を提言していった。

