考え方の大原則と取り組みの基本
本書では、従来の(最も利用者が多い)新聞・チラシからウェブまでをカバーし、媒体を選ばず、広告主と広告制作者の共通理解を促進させる「成功法則」を体系的にまとめています。
ダイレクト・マーケティング、あるいはCRMの最も基本的なコンセプトは「一度のお客様を一生のお客様にする」ということですが、レスポンス広告が担っている使命は、まず“一期一会”から“一生のお客様”となる“一度目のお客様”を獲得することです。本書の中では、90点にもおよぶ本書のために作成したサンプル広告を比較して以下の3つの極意をまとめました。
極意1 集客…広告そのものに対する集客を図る
広告は最初に言葉です。自分は無関係と思い、そのまま通り過ぎようとしているただの通行人の心の内に眠っている欲望をわしづかみにし、思わず立ち止まらせるような“つかみOK!”の強いキャッチコピーを、広告の“頭”の部分に配置していきましょう。
極意2 説得…広告の力だけで口説き落とす
行動を抑制しようとするターゲットの意識、ターゲットが抱えている疑問や課題を解決し、行動へと促す〝説得〟をすること。“買う理由”、商品の品質や価格の妥当性、効果効能を、伝えるだけでなく広告の力だけで納得させなければなりません。情報量や表現方法、レイアウトにも工夫を凝らし、パッと見、斜め読み、精読と3回の接触に値し、また堪えられる広告としましょう。
極意3 レレバンシー…納得・共感を呼ぶ広告にする
広告自体がターゲットの興味関心、価値観に適合した (ターゲット・インサイトに根差した)心の琴線に触れる“レレバンシー”の高いメッセージや情報であることが重要です。集客のポイントや説得のポイントだけでなく、情報の伝え方や演出においても適切であり、全体としてのバランスのとれた共感や納得を引き出す広告でありましょう。
それでは、それぞれの極意の一部を紹介していきます。
集客の極意の一例~ターゲットを明確に
上記の24~26の広告は予備校と学習塾の広告です。24の広告は生徒の合格実績をそのまま広告にしたもので、ターゲットは親です。確かに実績はわかりますが、具体的に何をしてくれるのかは伝わりません。25の広告は受験生本人をターゲットしたもので、彼らに対するインサイトが反映されています。
志望校別60段階のクラス分けをはじめ、具体的なカリキュラム、メンターやチューターの制度など、本人達にはイメージしやすく、ピンとくる項目が多数埋め込まれています。26の広告は小学生がターゲットの広告で、年長の兄弟がいない彼らが塾に求めるのは、学習指導だけでなく、学校でも家でも満たされない心の通い合いです。優しいお兄さんのような先生やお姉さんのような先生に対するイメージは彼らにとっての学習塾選びに大きな影響を与えます。
説得の極意の一例~サービス開発により説得する
スキンケア化粧品の肌に対する効果がないと考えている人はまずいません。しかし薬事法に則れば、これらの実際の効果効能を広告に表現することは許されていません。健康食品やサプリメントにおいても、ほぼ同様です。そこで生まれたのが、次のようなサービスの開発による説得力の強化です。
56は「全額返金」というサービスを訴えた広告です。セールスマンの「騙されたと思って、一度使ってみてください。ご納得いただけなければお代は結構です!」という殺し文句と同じです。そして一カ月使ってお客様が本当に満足しなければ、無条件で返品と返金に応じます。
健康食品やサプリメントの場合は空ビンや空箱に対して返金することになりますが、ターゲット(生活者)の側からすると非常に納得の高い提案といえるでしょう。注文に対する不安が減るだけでなく、そんなに自信があるのならきっと良い商品であるに違いないという期待感が増すので、相乗効果も期待できます。もちろん、実際に製品が良ければ、返品せずにその後も使い続けてくれることになるので、ウィンウィンの取引といえます。
実際に健康食品のような場合、三日分や一週間分の「無料サンプル」では、効果を実感することができず、結果的に製品購入にもつながらないことから、近年ではこの「全額返金」や「返品保証」をつけた〝製品販売広告〟が急増しています。また、これらの経験を経て、最近ではさらに一歩進んで、サンプルではなく製品本品を無償提供する広告も増えてきています。
57は「24時間電話相談受付」というサービスを訴えた広告で、商品使用中のあらゆる心配事や疑問に24時間電話で応えるというサービスです。58は「お祝い金進呈」というサービスを訴えた広告で、使用した期間内に成果を達成したお客様には〝お祝い金〟を進呈するというサービスです。祝い金という励みのおかげで、プログラムが忠実に実行され、結果として期待された成果が上がるとすれば、これもウィンウィンの取引といえるでしょう。