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「20%マージンは適正なのか」
広告業界の“古き慣習”への新提案

 不況下ながら、成長を続けているSEM市場。リスティング広告は、予算やキーワードの管理などシステムの高度化に伴い、運用業務も煩雑になっている。このような状況を踏まえ、自動入札管理ツール「アドエビスAutoBid」を提供するロックオンは「ライト・マネージド・サービス」という新たなサービスを提唱した。ロックオンの岩田進氏にその狙いを聞いた。

運用コストに対して売上が見合わない現実

 リスティング(検索連動型)広告は、予算管理や効果測定、掲載順位の調整、掲載する曜日や時間帯の調整など、細かな運用が必要とされる。ロックオンが提唱する「ライト・マネージド・サービス」は、自動入札管理ツール「アドエビスAutoBid」を活用し、高度化するリスティング広告の運用コストを軽減するサービスだ。

 ライト・マネージド・サービスの説明の前に、まず現在のSEM市場動向や運用シーンの実態について岩田氏に聞くと「リスティング広告市場は伸びています。ただし、競争が激化し運用が高度化してきているため、運用コストに対して売上が見合わなくなっています。一部の広告代理店は人件費の安い地方などに拠点を作っていますが、それにも限界があり儲からないサービスになりつつあります」と指摘する。

 また、広告主の状況のついては「リスティング広告の場合は、比較的容易に広告主が直接広告を購入することができます。仮に1,000万円の予算がある広告主であれば、通常は200万円が代理店マージンとなり、実質の広告費は800万円となるところ、直接広告を購入することで予算をフルに広告に投入できるのです。ただし、そういった作業を社内で行うにはそれなりのノウハウや作業が必要ですし、サポート窓口としても代理店の役割は重要でした。つまり広告主は広告代理店に対して、『ノウハウ』『作業負荷』『サポート』を期待し、その対価として20%のマージンを支払っていたのです」と説明する。

 リスティング広告運用の負荷が増大

 リスティング広告は常に効果測定を行い、その効果を元にチューニングしていく必要があり、その運用はハイレベルになっている。岩田氏は「例えば『何曜日の何時にだけ掲載する』といった管理もあり、すでに人手で管理できる限界を超えています。加えて、未曾有の不況と自動入札管理ツールの誕生が重なったことにより、新しいリスティング広告の運用サービスに対してのニーズが高まりつつありますね」と語る。

 同社では、すでに「アドエビスAutoBid」という自動入札管理ツールサービスを提供し、リスティング広告運用を支援している。しかし、現在の「アドエビスAutoBid」は、指示通りに動くルールベース型であり、広告主が期待する「ノウハウ」「作業負荷」「サポート」のうち、「作業負荷」しか解決することができない。そこで、他の2つを満たしたソリューションを模索した結果、生まれたサービスが「ライト・マネージド・サービス」というわけだ。

 なお、「ライト・マネージド・サービス」は、ロックオン社が単独で提供するサービスではなく、ロックオン社が提供する自動入札管理ツール「アドエビス AutoBid」と、広告代理店のノウハウ、サポートを加えて、広告主のニーズに応えるサービスとなっている。

通常サービスとオプションサービスを切り分け

 ライト・マネージド・サービスは、広告代理店のノウハウを活かして初期設定を行い、月次の運用は大半の部分を「アドエビスAutoBid」で自動化する。そして、コスト計算が難しく、広告主との期待値のバランスがとりにくい不定期で必要なサービスについては、オプションとして切り出すことによりコストを大幅に抑える形式となっている。

 具体的には、予算管理、効果測定、CPC調整、掲載順位の調整、曜日や時間帯ごとの調整などを自動化し、キーワードの再提案や作業対応、レポーティングやミーティングをオプションとすることで、広告代理店側の運用コストを軽減し、その分広告主へのマージン設定も軽くするという、広告代理店と広告主双方のニーズを満たすサービスだ。

通常メニューとライト・マネージド・サービスのメニュー比較
通常メニューとライト・マネージド・サービスのメニュー比較

 同サービスが生まれた背景の1つとして岩田氏は「海外のツールベンダーは、代理事業も兼ねているケースも多いですが、サポートサービスについては広告代理店が高度に発達した日本の方が優れている。日本の広告主はこうした手厚いサポートに慣れていますので、単純にツールにスイッチすることは難しいでしょう。そこで、『作業負荷』をツールが担い、『ノウハウ』と『サポート』を代理店が担うという考え方です」と語る。

初期設定をしっかりと行い運用を自動化

 一方、リスティング広告を広告代理店に依頼する場合、まず時間をかけるのはキーワードの選定や広告文の作成、運用ポリシーの作成などの初期設定だ。

 岩田氏によると、多くの代理店は初期費用を取らずに、毎月の運用費で回収していることが多いという。「初期段階では、人の手でしっかり設定をするので、ここはお金がかかると思います。その後の運用は初期のポリシーに従って自動化することで、かなりのコストを抑えることができます。広告代理店側に、キーワードの再設定やプランの再検討、月次のミーティング出席など、手厚い対応を求める場合は、オプション化してしまいます」

 ライト・マネージド・サービスは、初期の運用ポリシーをしっかり設定して自動化するために、100通り以上のルールを用意している。

 「あらかじめ想定されるルールを用意しておくことで、早く・安く導入いただけると思います。もちろん、広告代理店さんは細かいサービス定義も行った価格設定をされる場合もあるでしょう。こうしたフローを実現することで、これまで20%だったマージンが10%以下で提供される会社も出てくるのではないかと感じています。また支払い方法は請求書払いにも対応しています。海外のツールの場合、クレジットカード払いのみ対応のケースが多いですが、日本の広告主企業の担当者はカードでの支払いになれていませんから」と国内ならではニーズへも対応している。

広告主の視点で見れば「広告代理店への支払い額を10%減らす」(上図)だけでなく、
マージンが10%になったことで「広告費をさらに10%上乗せする」(下図)することも可能となる
従来は広告出稿額の20%を支払っていたが、ライト・マネージド・サービスにより出稿額の8%に抑えることも可能

日本に適したテクノロジー×リスティング広告

 また岩田氏は、ライト・マネージド・サービスで新たなニーズを掘り起こすことが自動入札管理ツールの浸透につながると説く。

 「広告主と代理店双方にニーズがあるはずなのですが広告主は手厚い人的サポートを期待し、代理店側は、手間と一緒にマージンが減ることに対して懸念もあります。景気が低迷し、コスト意識が高まっているタイミングでライト・マネージド・サービスを導入しておいて、景気が回復したら、通常のサービスを提供していくというシナリオも描けますので、これまで取りこぼしていた小規模の広告主に多数導入していただくという時期ではないかと思います」。

ライト・マネージド・サービスで、新規顧客を開拓を加速させ将来的に景気が回復した際には、
通常サービス(SEM)や純広告の販売につながると考えている
ライト・マネージド・サービスで、新規顧客を開拓を加速させ将来的に景気が回復した際には、通常サービス(SEM)や純広告の販売につながると考えている

 このように運用負荷の面から、リスティング広告運用の自動化は必須の流れと予測されているが、その将来像について岩田氏は以下のように指摘する。

 「リスティング広告は投資効率を上げることが命題ですが、広告主の目的はさまざまです。例えば、CPA(成果一件あたりの支払額)をできるだけ下げようとすると、数が獲得できません。『CPAが300円だと5件しか獲得できなかったから、3000円にして100件獲得しましょう』というような、予算とCPAと獲得数のバランスをとる必要があります。『いま、とりあえず数を獲得したい』、『とにかくCPAを追求したい』などのニーズに対して、自動的に最適化できるツールが登場してくるのではないでしょうか

 現状では、管理者が手作業で行っている運用も、目的に従って運用ルールまで提案するツールも出来てくると予測する岩田氏。

 「ルールベースで運用ロジックが整理された形のライト・マネージド・サービスを使って、わかりやすいところから自動化していく利用法が浸透していけば、ルールの提案までをツールが行うポートフォリオ型に近いツールへのニーズも高まってくると思います。この場合、最初に挙げました『ノウハウ』『作業負荷』『サポート』のうち、『ノウハウ』と『作業負荷』をツールが担い、『サポート』を代理店が提供することになり、これも『ライト・マネージド・サービス』になります」と可能性を予測する。

 さて、次回の取材では既にライト・マネージド・サービスの提供をはじめているリスティング広告代理店である株式会社プルーブの運用実績についてご紹介させていただくので、ぜひ楽しみにしていただきたい。

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

 就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2009/07/29 11:00 https://markezine.jp/article/detail/7754