マーケティングと企業のサステナビリティ
1300年の歴史をもつ伊勢神宮の式年神宮という行事や、GRIによるサステナビリティの定義と報告書のパフォーマンス指標をみると、どちらかというと短期的な販促や利益向上に偏りがちなマーケティングの視点も見直す必要を感じます。
例えば、「将来の世代が彼らのニーズを満たす能力を損なうことなく、現在のニーズを満たす」という持続可能な発展に関する目標を、Webの世界のスケールに落としてみると、Webサイト公開後の運用のニーズを満たすことを損なうことなく、構築のニーズを満たすことができるかだったり、現在のWebマーケティング施策が将来的なマーケティング施策にもつながるようにすることだったりするということになるのではないかと思います。
Webにおいてサステナビリティが問題となるのは、これまでのメディア(TV、新聞、雑誌など)を使ったマーケティング・コミュニケーションの手法がごく限られた一定の期間のみコミュニケーションを行うのと違い、SEOでも、ブログでも、Eコマースでも、Web上でのマーケティングの場合、期間を限定せずに常設的にコミュニケーション展開を図ることで効果をあげようとするからです。私たちはよく「企業のWebサイトはその企業を映し出す鏡」という言い方をしますが、まさに企業Webサイトでのマーケティングの持続可能性は企業自体の持続可能性と大きな関連性をもっています。
当然、Webマーケティングに持続可能性を期待するのであれば、Webマーケティングがすべての企業活動の一部であるという認識が必要となってきます。企業活動そのものが健全な持続可能性を保たれなければ継続的にマーケティング活動を行う基盤そのものが危うくなるでしょうし、逆にWebマーケティングが企業全体の持続可能性にどれだけ貢献できるかという統合的な視点がなければ目先の利益確保のためにSEOスパムなどの非倫理的な行為に走ってしまうことにもなりかねません。
マーケティング手段がWebに大きく依存している企業であっても、多くの場合、企業には顧客以外のさまざまなステークホルダー(従業員、株主、会計団体、行政機関など)が存在します。当然、利益さえ上げていればいいのかというとそうではなく、持続可能な発展のためには自社と利害関係を持つステークホルダーとのコミュニケーションが重要になってきます。
そして、再び「将来の世代が彼らのニーズを満たす能力を損なうことなく、現在のニーズを満たす」という持続可能な発展に関する目標を鑑みれば、コミュニケーションの対象は現在、実際に関係を持っている人々や組織だけでなく、より広い観点で社会や環境、経済的な側面を対象にする必要があるのもわかるでしょう。