導入プロセスの最後のステップ、タグ実装とテスト
今回は、導入プロセスの最後のステップであるタグ実装・テストについて見てみましょう。
実装前の確認
実装する際には、以下の情報を把握しておく必要があります。
実装対象ページと担当者の把握
アクセス解析を利用する上で大切なのことは、タグをすべてのページに入れておくことです。そのためには、対象となるページをリストアップしておくと良いでしょう。設計書がちゃんとあるサイトであれば、既にリストはあるかもしれません。
また、ページのオーナーについても意識しましょう。小規模のサイトであれば、サイトへのコンテンツアップロードは1人あるいは1つのグループ内で完結しているかもしれません。しかし、大規模なサイトになると、CGI系のコンテンツはIT部門が更新し、特集などは別の部門が更新している場合もあります。
その場合は、両方に作業手順を説明し実行してもらう必要があります。また導入後にも定期的に新規ページがアップロードされる場合は、そこにも必ずタグを入れてもらえるように周知しておく必要があります。
ベンダーによっては、「タグを自動で追加するプログラム」および「タグが入っているかをチェックしてくれるプログラム」を持っている場合があります。導入をしようとしているベンダーあるいは代理店にこのようなツールがあるのかを事前に確認しておきましょう。
入れるタグに関して
すべてのページに同じタグを入れる場合は特に気にしなくても良いのですが、細かい変数を取得できるタイプのサービスは、ページによって記述の内容が変わる場合があります。その際には、どのページにどの記述を入れるのかを明確にしておく必要があります。また、可能であれば今後のために、どの記述を入れたかを一覧で残しておくと良いでしょう。
タグを入れるだけで終わらない場合もあります
前述のケースのように細かい変数を取る場合、JavaScriptに変数を渡してあげる必要があります。例えば、GETパラメータに入ってこないような、商品の単価や購入数・ログインの有無などはその代表例です。サイト側でどのように変数をはき出し、JavaScriptのどこの変数で取得するか? 要件定義時にベンダーと一緒にこの辺のルールは決めているはずなので、それに沿って作業をしていきましょう。意外とここに工数がかかる場合もあります。
モバイル固有の対応をしておこう(モバイルのみ)
導入形式にもよりますが、「端末識別番号の引き回し」「変数追加によるURL長の制限対応」「モジュール版のサーバのCPU負荷への影響チェック」などいくつか気をつける点があります。マニアックな内容になってしまいますので、上記の詳細は割愛しますが、モバイルとPCの計測までの実装方法はかなり異なってきます。
リダイレクトや特殊コンテンツへの対応
リダイレクトはアクセス解析の天敵です。詳細は前回の10の事実の5番目をご覧いただければと思いますが、SEOとのトレードオフになったり、正しく計測するためにサイトのURL構造に手をいれたり、といった工数が発生します。他にもFLASH、AJAXでの計測の場合はツールによって実装方法が異なるため、事前によく確認し、工数を想定しておきましょう。
実装後の確認
実際にタグを導入した後には、ちゃんと意図どおり計測が行われているかをチェックする必要があります。いきなり本番環境にタグを入れてアップロードするのはリスクが大きいので、必ず開発環境にタグを入れてテストをしてから、本番にアップしましょう。
テストにかかる工数は最低1週間、できれば2週間は見てください。この工数に大きく影響してくるのは、テストをどこまで行うのかです。計測ができているかという1番単純な確認は、1日もあれば終わるでしょう。しかし、「想定どおりのグルーピングルールで計測されているか」「流入キーワードと成果となるページが紐付いているか」といったテストを行うと、あっという間に1週間が経ってしまいます。
テストでは以下のような項目をテストします。優先順位の高い順番に並べてみました。そのため、工数にあわせて上からテストをしていく事をオススメいたします。ツールによっては該当しない部分もあるかと思いますので、そこはスキップしてください。
タグを入れることによりサイト表示への影響がないか
ページの読み込みが遅くなったり、JavaScriptエラーが出たり、最悪ページが表示されなかったり、といった事は致命的です。複数のJavaScriptを使っているページ・CGI系のページなどはよく確認をしておきましょう。JavaScriptの文字コード・変数の競合・記述ミスなどいくつか発生原因があります。
計測ができているか
ページ単位で計測ができているのか確認をしましょう。計測ができていれば、とりあえず最低限の計測はされている証明となります。全ページで行う必要は無いですが、まずは主要な導線をアクセスしてみて、各ページが計測できているかを確認しましょう。
設定したとおりのグルーピングや変数が取得できているか
特定のGETパラメータの取得、あるいは成果ページで特別に取得したい情報(購入額、購入数など)が取得できているかを確認しましょう。せっかく、導入したのに肝心の売上が正しく入っていないのは、非常にもったいないです。また、初速の結果を見ることができなくなってしまいます。
サイトの重要なページタグを設置し、PVのカウント以外に取得しようとしている情報が取れているかを確認してみましょう。
正しい回数の数値が取れているか
上記3項目が問題なければ大丈夫な場合がほとんとですが、10回ページを表示したのに9回しか取れていなかったらそれは問題です。いくつかのページは回数チェックを行っておくと良いでしょう。
流入元の情報が正しく取得できているか
開発環境ではテストが手間な項目です。Yahoo! から入ってきた場合に、ちゃんとYahoo! から入力したキーワードで入ってきているか確認をしておいた方がよいかもしれません。
各種設定項目が反映されているか
社内アクセスや特定のURL除外といったような、除外項目やその他設定を行っている場合、それが適用されているかチェックを行っておきましょう。カットオーバー後に特定のデータを除外する事は面倒であり、できない場合も多いです。
通常は、前半の3つまでをテストしておく事をオススメします。初めて、そのツールを導入する場合は、念のために後半の3つも見ておくと良いでしょう。テストを行う際にはチェックシートを用意しておく事をオススメします。
なぜ、1週間、ないしは2週間という期間を取っているかというと、テストをして何か間違いに気づいたとき、設定を変えて再度計測をする事に日数がかかる場合があるからです。
例えば、レポートが翌日に出てくるタイプのアクセス解析サービスの場合の一例を以下に記します。
(1日目)計測をしてみる
(2日目)数値が想定と違ったため、画面の設定を変更する
(画面で設定変更したものが反映されるのが翌日0時の場合…)
(3日目)新しい設定状態で再度アクセスする
(4日目)その結果を確認する
これだけで3日間かかってしまいます。リアルタイムかつ設定が即時反映される物であれば、1日で何回かテストができるかと思います。これはツールによって変わってくるので、設定反映のタイミングは事前にベンダーに確認しておくとよいでしょう。
本番反映時の確認
テストが終わればいよいよ本番での計測開始です! しかし、最後まで油断はいけません。本番反映時の注意事項を見ておきましょう。
開発環境と本番環境でタグが違う場合は必ず正しい物に変えておく
正しいタグに変えておかないと、本番の計測データが開発の閲覧画面に飛んでしまいます。開発の閲覧画面のデータを本番の閲覧画面のデータにうつす事はほとんどのツールではできないので注意しましょう。ログ型であれば特に気にする必要はありません。
除外設定が正しく適用されているか確認しましょう
開発環境ではテストのため社内からのアクセスも計測しています。本番では除外したいのに、その設定変更を行わずに本番に反映してしまうと、社内のアクセスもカウントしてしまいます。ほとんどのサイトの場合、社内より社外からのアクセスが圧倒的に多いので、大きな問題にならない可能性はありますが注意は必要です。
データが取れているかの確認は必ず行っておきましょう。
リアルタイムのツールであれば、すぐに確認しましょう。翌日反映のツールであれば、翌日朝1番に確認を行っておきましょう。計測ができていれば、まずは一安心です。
今回の説明で、導入のプロセスは終わりです。いよいよここから活用フェーズといきたいところですが、あと1回だけ導入についての記事を書きます。次回は、企業などで複数サイトに導入していく時に考えておきたい内容です。
ここ数回は1サイト分の導入をステップで追ってきました。しかし複数サイトへの導入を行う場合、それを統括し、よりスムースに導入を行うために情報の整理や資料の作成、ベンダーとのやりとり強化が大切になってきます。次回は、私も職務としている複数サイトへの導入時のTIPSを紹介したいと思います。次回もお楽しみに。