P&G、日本コカコーラ、企業がメディアを持つメリット
こうした「Webセントリックマーケティング」について、誰もが「難しい」と声を揃え、事例を求めるという。しかし、佐々木氏は「残念ながら事例はない。だからこそ、これからのマーケティングの在り方で実現させていかなければならないのではないか」と力説する。そこで、「Webセントリックマーケティング」の中核を担う自社サイトについて、先進的な事例が紹介された。
まず紹介されたのは、P&Gの「Home Made Simple」である。同サイトの現在の会員数は1,000万人以上を誇り、ターゲットはワーキングウーマンとなる。単なるブログというレベルではなく、しっかりとお金をかけて作っているサイトという印象だ。
「P&Gはカンパニー制をとっていて、それぞれのブランドごとに予算を持っているので『ワーキングウーマン』を対象とした6つのブランドがお金を出し合いサイトを運営しています。このレベルのサイトとなると、コンペティターは専業のメディアサイトとなります。実は、P&GはWebを活用したマーケティングという意味では後手だったのですが、7年かけてこのメディアを作りあげました。いまは自社のテレビ番組も展開しています」とした。
このように強力なメディアサイトを自社で持つことのメリットは、顧客の情報が全てわかることだ。通常、他のメディアへ広告出稿したとしても、顧客情報まではわからないが、自社サイトのメディア化に成功すれば、どんなコンテンツに関心があるのかかがわかる、嗜好が読める、サンプルを配れるなど、自社サイトでマーケティングを完結することができる。
また、日本の成功事例としては日本コカコーラの事例を中心に紹介した。
日本コカコーラは「コカ・コーラ パーク」というPC・携帯に対応した会員サイトを運営している。750万人以上の会員数を持つ同サイトは、専業メディアサイトと比べても遜色のないメディアへと成長している。
「昨年、日本コカコーラは日産とダイレクトに組んだキャンペーンを行っていました(プレスリリース:[日産「キューブ」とコカ・コーラが贈るクリスマスキャンペーン「Coca-Cola×cube Xmas ハッピースフルキャンペーン」。このように、クライアントが直接やり取りするようなキャンペーンに代理店が入り込む隙間はありません。また、あるマーケティング関連のイベントでは、日本コカコーラがブース出展をしていました。何をしているのかと思ったのですが、『コカ・コーラ パーク』のメディア紹介をしていたのです。これは企業がメディアを事業化することも可能ということを意味しているのではないでしょうか」
また、日本コカコーラは自社メディアとして自動販売機も活用している。コカコーラの自動販売機は携帯で購入できるようになっているため、いつ、どこで、誰が、何を買ったのかという情報を会員IDと紐付けられる環境にあるのではないか、と推測する。
そのほか、デルや、ナイキの取り組みを紹介した後、最後に本セッションを理解するためのキーワードとして「仕組み」と「しかけ」という2つのキーワードについて触れた。
「Webセントリックマーケティングを成功させるキーワードとして『仕組み』と『しかけ』があります。本日お話した内容は『仕組み』のお話が中心でしたが、仕組みを作っただけでは成功しません。結局、どういう「しかけ=企画」をするのかで成否が別れます。仕組みの予算は投資型の予算なので、2年、3年かけて償却していくものと理解してください。一方、『しかけ』は販促型の予算なので、年度中に償却していきます。これらを混同せずに中・長期的な視点でマーケティングに取り組みことが大切だと思います」と語り、セッションを締めくくった。