次世代インフラ整備によるビジネスへの影響

インフラの進化に伴い、ビジネス形態が変化することも考えられる。神尾氏は、ポケットからイー・モバイルの3G一体型モバイルWiFiルーター「Pocket Wi-Fi」を取り出し、そのポテンシャルに注目していることを紹介した。
「Pocket Wi-Fi」は無線LANのアクセスポイントがない場所でも、イー・モバイルサービスエリアであれば、最大5台までの同時接続が可能なモバイルWi-Fiルーターだ。従来、外出先でインターネット上のサーバーにアクセスし、コンテンツを利用したり、サイトを閲覧するのは携帯電話だけだった。しかし、このような製品の登場によってPCはもとより、携帯用ゲーム機などさまざまなパーソナル用途のモバイルデバイスは、Wi-Fi経由でインターネットに繋がるようになる。
こうしたソリューションが広まれば、メーカーはよりグローバルに商品を展開できる可能性もある。例えば、カーナビでは3Gのモジュールを入れる場合、各地域ごとにキャリアとアライアンスを組み、各市場ごとにスキームを作る必要があったが、カーナビにWi-Fiを積むだけでこれらの工程が解消されることになる。神尾氏は「携帯ビジネスという考え方はやめ、モバイルビジネスという考え方をすべきだ」と新インフラとともにビジネスの形が変化し初めていることを主張した。
ユーザーのライフスタイルにも変化が見え始めている。総務省のデータでは、2005年頃まで多かった携帯電話のみでインターネットにアクセスする人の数が、平成20年から減少しており、PCを利用する人が増加している。また、ニンテンドーDSやPSPといったゲーム機、あるいはテレビからのみインターネットにアクセスしている人が増えている点も注目すべきだろう。
ケータイの先にある、次の10年
「今後3年で、これまでに述べてきたような流れが定着し、端末の買い替えサイクルに合わせ、5年後には完全に世界が変わっているだろう」と、神尾氏は次のモバイルビジネスを予測する。そして従来のように、携帯に電話やメール以上の機能を詰め込むという世界から、携帯電話を軸にさまざまな端末が広がっていく10年になるという。
神尾氏は、これまでの内容をまとめ、ブロードバンド時代に重要になるポイントとして下記の3点挙げた。
- 端末の大容量化
- 携帯電話以外のデバイスによるインターネットへの接続
- 上り通信速度を利用したサービス
そして最後に、従来「PC」「テレビ」「携帯電話」の3つだったスクリーンという概念にも、「カーナビ」や「デジタルフォトフレーム」、街中にあるデジタルサイネージのような「環境スクリーン」も加わり、変化が訪れると提言する。これらのスクリーンをどのように有機的に結びつけるか、どのようにライフスタイルを提案していけるかが、新インフラが整い、スクリーンが変化する新しい10年での鍵になるだろう。
