コミュニケーションの場をリアルに広げられるのが大きな価値
エアタグでホテル情報が分かり、予約もできる。楽天トラベルとのそんな取り組みは、目指している方向性が近かったために始まったものだという。

楽天トラベルの提供しているサービスは、旅行前にホテルの宿泊や飛行機の予約を済ませ、旅行後にレビューを書いてもらうというもの。けれども、旅行中はユーザーと関われないという課題を感じていた。旅行中もユーザーと関われるように機能・役割を拡大するにはどうすれば良いのか。出した答えがセカイカメラとのコラボレーションだった。
「旅行中もサービスを利用してもらうには、ユーザーとの接点がPCだけでは厳しい。そうなるとモバイルを使うことになる。また、『今、見知らぬ土地の交差点にいて、近くの美味しい物を食べたい』となった時には、何をキーワードに検索すれば良いのかも分からない。そうした情報を提供するには、拡張現実が最適なんじゃないかと。我々も楽天トラベルと同じ考えを持っていて、旅行者をサポートするのにエアタグを使おう。まずは位置データがあるホテルのコンテンツをエアタグで表示して、予約可能な状態にしようという話になったわけです」
現状はまだ第一歩を踏み出したばかり。ガイドブックで分かることが少し手軽に見れるようになったに過ぎない。より便利な旅行体験をサポートできるよう、両者でディスカッションを繰り返しているところだという。このように、企業と消費者のコミュニケーションの場所を、Webサイト上だけではなくて、リアルな空間にも拡張できるのが、セカイカメラというプラットフォームの大きな価値だと言える。
モバイルARにおけるマーケティング3つの可能性
モバイルARは、ゲームや商品広告、情報サービス、セカイカメラのようなコミュニケーションツールなど、まだ正解と言える形態が見つかっていないのが現状だが、さまざまな可能性があることは確かだ。こうしたモバイルARをマーケティングに活用するとすれば、どのような展開があり得るかと質問したところ、佐藤氏は次の3つの用途を提案した。
- イノベーティブなイメージを訴求するためのブランドコミュニケーション
- ライブ会場などの“施設”と紐付かせて楽曲購入などにつなげるイベント的な使い方
- コンビニなどのフランチャイズによるリアルな店舗空間を使った、消費者との継続的なコミュニケーション

「現実空間と紐付くコンテンツは親和性が高いと思っています。例えばセカイカメラの場合、楽天トラベルとやっている旅行以外にも、不動産、グルメなどとは非常に親和性が高い。逆に、コミックや着うたなどのデジタルコンテンツ系とは親和性が低いと考えています。セカイカメラとしては、企業コンテンツを提供する時に、それを提供することで『ユーザー体験がよりリッチになるかどうか』を一番の軸にします。
単純に「看板を50mごとに出す」といった拡張現実上の広告枠を提供することも技術的には可能ですが、ユーザー体験を損なうものであれば、あまり意味がありません。広告一つも、ユーザー視点で考えていきたいと思っています」
