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セカイカメラが垣間見せたARマーケティングの可能性
頓智・COOが語る2010年のモバイルAR

2010/01/21 11:00

 2009年、急速に現実的な技術となってきたのが拡張現実(AR)関連のサービスだ。iPhoneの普及により、モバイルにもARに関連する様々なサービスが登場した。その中でも群を抜いて注目を集めたのは、頓智・(とんちどっと)が提供するiPhoneアプリ「セカイカメラ」だろう。2009年9月のリリース後、4日間で10万ダウンロードを記録。今もダウンロード数は伸び続けるばかりというモンスターアプリに目を付け、ロエベや楽天トラベルなど、マーケティング活動に取り入れた企業も既に出始めている。モバイルARは企業のマーケティング活動にどんな可能性をもたらすのか、頓智・のCOO佐藤僚氏に話を聞いた。【総力特集!どうなる?2010年 モバイルマーケティングの未来】

厳選した有名企業などとプロモーション実績を残した2009年

 2009年9月24日のVer1.0リリースから4カ月。このわずかな期間に頓智・は、スペインの老舗ファッションブランドのロエベ、楽天トラベル、パリのシテ科学産業博物館、岐阜県高山市など、名立たる企業・組織を相手にプロモーションの実績を積み上げてきた。

 同社COOの佐藤僚氏は、ネットエイジ(現ngi group)でFreeMLやNetMileなどの立ち上げに携わってきた経験を持つが、「こんなに引き合いの多いサービスを扱ったことがない」と感想を漏らす。営業担当は同氏1名のみだが、「日々、世界各国から非常にたくさんの提案をいただいているが、申し訳なくもほとんどをお断りせざるを得ない」という状況。限られた同社のリソースを最大限に活用するために、共に事業を創造していこうという情熱が感じられ、同社のビジョンにも沿う提案をしてくれた相手と優先的に、取引を進めているという。セカイカメラというアプリケーションの登場により、モバイルARのマーケティング活用の可能性を現実的に考え始めた企業の多さが伺えるのではないだろうか。

 とはいえ、頓智・はARありきでセカイカメラを作ったわけではなかった。2008年8月に設立した同社はその翌月、イノベーティブなWebサービスの登竜門となるコンテスト「TechCrunch50」でファイナリストに進んだが、ARという言葉を初めて知ったのはその時だったという。

 セカイカメラのお目見えはTechCrunch50から約半年後の2009年2月。ファッションイベント「rooms」で、プライベートβテストとして初めて登場。そして9月にはVer1.0を国内でリリース。想定をはるかに上回るアクセスが集まり、サーバダウンなどのトラブルにも見舞われた。その後も、利用者数・エアタグの数は順調に増え、渋谷や秋葉原などの人が集まるスポットでは、セカイカメラのエアタグで周囲の景色が何も見えなくなってしまうほどの人気ぶりだ。2009年12月にはVer2.0を全世界に向けて公開し、冒頭に挙げたような企業・組織とのコラボレーションも進めてきた。

ラグジュアリーブランドのファン層拡大にも貢献

 モバイルARの市場規模は2014年までに7億3200万ドルになると報告するレポートなども出始め、セカイカメラ以外のARアプリケーションベンダーも世界各地に登場してきている。佐藤氏は、他社との違いを「ほかのアプリケーションは“ナビゲーションツールにARビューを加えたもの”がほとんど。我々の設計思想はまったく逆」と説明する。現実空間にフワッと1つのレイヤーを被せることで、楽しい体験を実現するソーシャルコミュニケーションツールがセカイカメラの目指すところ。ナビゲーションありきではなく、AR空間内でのインタラクションや体験性を重視するのが特徴となる。

 そうした設計思想や多機能性、ユーザーインターフェイスの使い勝手の良さなどから、セカイカメラへの評価は世界的に高い。その証拠に、セカイカメラを使ったマーケティングにいち早く乗り出した企業の名前の中には、ラグジュアリーブランド「ロエベ」の名前もある。歴史と伝統を誇るこのブランドが、なぜこんなにも早くからセカイカメラに、そしてモバイルARに目を付けたのだろうか。

「ロエベがセカイカメラを気に入った一番のポイントは、“お店に来てもらうためのツール”として使えること。コンピュータを使うのはインドア。どうしてもWebサイトのコンテンツだけでは、商品の良さを伝えるのに限界がある。ロエベが新しい顧客層に商品を体験してもらうには、実際に店舗に来てもらう必要があったんです」

 ロエベの売上の大半はリピーターだろうが、一方で若年層など新たなファンを作っていく必要があり、そのために最新端末であるiPhone上で若年層やアーリー・アダプターから圧倒的に支持されているセカイカメラに声が掛かったのではないかというのが佐藤氏の分析だ。セカイカメラでは、テキストだけではなく動画の再生も可能なため、よりリッチなメッセージを発信できる。五感を使ったコミュニケーションを重視するロエベには、そうした点が評価されたという。

「セカイカメラは体験性にこだわって作っています。iPhoneも非常にデザインとして優れている。ロエベのようなラグジュアリーブランドが採用しても違和感のないデバイスとアプリケーション。デザイン体験性が非常に大きな違いになったのではないかと思っています」

 今まで、ラグジュアリーブランド等はインターネット上では訴求が難しく、出稿先となるメディアもなかなか見つからないという点が度々問題になっていた。こうしたセカイカメラとロエベの取り組みは、モバイルARの可能性を示唆していると言える。

 実際に、このロエベとの取り組みは高く評価されたという。これまでの客層とは異なるバックパックを背負った客なども来店する光景も見られた。「セカイカメラの機能をロエベに行けば体験できるらしい」という情報が流れ、実際に店舗を訪れたユーザーが多く、また、新たなマーケティングを体感するために、地方など遠方からも広告・プロモーション関係者の来店もあったのだとか。その場で即購入にはつながらずとも、将来的なファン層の裾野を広げることができ、ロエベにとっては狙い通り。大きな成果を上げられたと認められている。

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