ソーシャルメディアマーケティングの5つの戦略とは
『Groundswell(グランズウェル)』で提唱されているフレームワークによると、ソーシャルメディアマーケティングは、5つの戦略に分けることができる【図表1】。
この5つの戦略を見たときに、Listeningとその他4つの戦略とでは性格が異なることが分かる。Listeningは「聴く」という受動的な戦略であるのに対して、その他4つの戦略は「働きかける」という能動的な戦略であると言える。
今回は、この5つの戦略の中でも、最も重要な戦略である「Listening」について、解説していきたい。
Listeningはマーケティング全般の戦略設計に活かすもの
Listeningについて考察を進めていくに当たり、まずはソーシャルメディアマーケティングが企業のマーケティング活動全体において、どのような立ち位置にあるのかを考えてみたい。
企業のマーケティング活動は「調査分析・戦略設計」「戦略の実行」「モニタリング」の3つのフェーズで捉えることができる。図表2では、各フェーズにおいて、ソーシャルメディアマーケティングの5つの戦略がどのように関与しているのかを示してみた。
従来のオンライン上の口コミ調査は、例えばTVCMによる口コミ波及効果を見るためにブログ記事の増減を測定するといった形態で行われてきた。これは主にモニタリングのフェーズにおいて、広告効果測定時のKPI(効果指標)を把握する手法の一部として捉えられていたためだと思う。このようなアプローチは、ListeningというよりもWatchingといった意味合いが強い。
一方でソーシャルメディアマーケティングにおけるListeningは、マーケティング全体の戦略設計のための調査分析として位置付けられる。なぜなら、オンライン上のオーガニックな口コミを分析して消費者の本音、すなわち「インサイト(行動原理の背景にある気持ちの構造)」を把握することで、それをベースに企業のマーケティング活動全般における戦略を設計することが可能となるからである。このような考え方が、Listening戦略の効果・効率を最大化させる上で重要となってくる。
解析ツールの登場により可能となった理想的なインサイト分析
インサイト分析の本質が顧客・消費者の本音をベースとしてニーズを捉えるところにあるとすると、オーガニックな口コミは自発性をベースとしており、基本的には顧客・消費者の本音を反映しているものであると言えるため、分析対象としての適性は非常に高い。しかし、インターネットが普及するまでは、口コミ分析における効率的な手法が存在していなかった。
例えば、リアルの空間のいたる所で行われている会話をイメージしてほしい。リアルでは、多くの本音をベースとした会話がなされている。しかし、その会話を1件1件聴いて回ることは、投入した人的・時間的リソースに対する費用対効果を考えると、現実的に難しい。
それに対してオンライン空間上での口コミは、「口コミというデジタルデータ」を収集・解析可能なツールの登場により、マーケティングに活かすための分析が効果的・効率的に行えるようになった。従って、いかにこの便利なツールを活用しながら、マーケティング戦略に活かすためのインサイトを導き出していくかが、マーケティング成功の鍵となる。
残りの4つの戦略(Talking・Energizing・Helping・Embracing)は、Listeningや消費者調査で得られた消費者のインサイトを捉えた上でSEOや自社メディア、そして広告メディアと連携する形で戦略設計され、実行に移される。
このように、Listeningはマーケティング活動全体の戦略設計につなげていくためのインサイト把握を目的としているのに対し、残り4つの戦略は、主にデジタルマーケティング戦略の中でのアクションに落とし込むための戦略である。従って、同じソーシャルメディアマーケティングにおいても、意味合いが異なるのである。