ソーシャルメディアマーケティングは魔法の杖ではない
一方、フレームワーク作成に参加し、マーケティング支援事業を展開するトライバルメディアハウスはソーシャルメディアマーケティングの現状をどのように感じているのだろうか。トライバルメディアハウスの代表取締役社長である、池田紀行氏はソーシャルメディアマーケティングを「魔法の杖」だと思っている人が多すぎると警告する。
「広告・PRなどで行ってきたことをソーシャルメディアマーケティングで代替しようと思っても、それは困難です。例えば、認知を目的として行うのならまだまだテレビが強いです。つまり、今までのマーケティングの文脈でソーシャルメディアマーケティングを行っても意味はありません。『いつ・誰に・何を・どうやって伝えたいのか』という目的がまずあり、その選択肢の1つとしてソーシャルメディアマーケティングがあると考えないとおかしなことになります」(池田氏)
池田氏によると、ソーシャルメディアマーケティングに意欲的な会社と興味があるがなかなか踏み出せていない会社に2極化しているという。
「この傾向はますます進むと思います。正直に申し上げると、ソーシャルメディアマーケティングに取り組んでも売上は激増しないでしょう。ただ、マーケティング活動全般を見渡した時に、ソーシャルメディアのマーケティングへの影響力はますます増加していくことは間違いありません。1年後なら、ソーシャルメディアマーケティングに取り組んでいる会社、いない会社でそれほど売上に差はでないかもしれません。しかし3年後はどうでしょうか。ソーシャルメディアでマーケティングを行った場合、顧客との対話ログが残ります。3年間それを繰り返し築いた顧客との関係性は非常に強固なものになっているでしょう」とし、ソーシャルメディアマーケティングへの取り組みを考える場合、目先の「費用対効果(ROAC:Return On Acquisition Cost)」だけを見るのではなく「投資対効果(ROMI:Return On Marketing Investment)」の視点が大切だと語った。
今後ソーシャルメディアのパワーが衰えることは考えにくい。その前提で考えると、マーケティング施策を立案する際に外せないメディアの1つとなることは必至だ。過去の経験が通用しないメディアとどう向き合っていくのか、マーケターにとって試練の1年となるのではないだろうか。いち早く「ソーシャル メディア リード(ソーシャルメディアマーケティングの責任者)が誕生したマイクロソフトが、どのような取り組みを見せていくのか注目していきたい。